58の事業を展開するDMM、課題は「全体最適化」
MarkeZine編集部(以下、MZ)本日は合同会社DMM.com(以下、DMM)の武井さん、ラクスルの楠さんにお話をうかがいます。はじめにこれまでのキャリア、現在のご担当業務をお話しください。
武井:DMMには2016年に入社し、デジタルマーケティングのプレーヤーから始めて、現在はマーケティング部門の部門長をしています。弊社は現在58個の事業を展開しており、マーケティング部門はそれぞれの事業部を横串で支援するという体制です。そのほか、マーケティング部門の組織マネジメントも行っています。
楠:ラクスルの楠です。私は2020年に新卒で入社し、広告領域の「ノバセル」に配属されました。入社後はストラテジックプランナーとしてテレビCMを通じた約40社のマーケティング戦略を支援し、メディア業務、効果分析なども行ってきました。現在はテレビCM効果測定ツール「ノバセルアナリティクス」のグループマネージャーをしています。
MZ:DMMさんのマーケティング組織で現在注力されている課題を教えてください。
武井:現在の課題は全体最適化です。これまでは個々の事業部が独立的に垂直成長を実現させてきましたが、これまで蓄積してきた各事業のノウハウを共有しあい、無駄をなくしながら成長を創る体制を整えています。そのためには各施策の効果可視化がとても重要で、より粒度の細かい数字を見ていきたい、そしてより事業のKGIに近い数字を見て判断できるようにしたいという思いを持っています。
テレビCMの体制を改善すべく、ノバセルアナリティクスを導入
MZ:今回ノバセルアナリティクスを導入し、テレビCMの領域を改善されているのも、今お話しいただいたような課題が関係しているのでしょうか。
武井:はい。これまでは効果の可視化が十分できておらず、テレビCMを実施するかどうかの判断基準も曖昧でした。事業部間で実績やノウハウの共有もできておらず、まさに全体最適化に課題がありました。
テレビCMの効果計測ツールはここ数年で急速に発展しており、定量的な分析は確実にしやすくなりました。そのような手段がない頃は、認知や理解度についてのブランドリフト調査は行われていましたが、来客数やそこからの売上、利益など実数に基づく定量指標を見ることは難しかったため、この数年の変化はテレビCM出稿主にとっては非常に大きな進歩だと思います。
MZ:これまでノバセルは初めてテレビCMを実施する企業を中心に、クリエイティブ制作・メディアプラン・効果測定までをパッケージで提供してきました。DMMさんのように、すでにテレビCM出稿経験が豊富で分析体制が整っているケースでも、活用できるのでしょうか。
楠:はい。おっしゃる通りノバセルはこれまで、主に初めてテレビCMを行うお客様向けにテレビCMの企画、制作、放映、分析までワンストップで提供してきました。
その中で使われているノバセルアナリティクスは、テレビCMの放映効果を分析するために使われています。具体的には、テレビ番組1本ずつの単位でCM効果を相対比較し、分析ができます。ご利用いただいたお客様からの評価も高く、改善実績も蓄積されていることから、ノバセルアナリティクスをSaaSとして単体でも提供し、既存の代理店から切り替えずにご利用いただけるようにしたことで、幅広いお客様に取り入れていただけるようになりました。
事業会社目線で“かゆいところに手が届く”支援を実現
MZ:武井さんはテレビCM運用体制の改善に取り組まれていたとのことですが、ノバセルアナリティクスを導入しようと思ったきっかけ、決定の理由を教えてください。
武井:弊社は2020年の7月からノバセルアナリティクスを導入していますが、数社の測定ツールを比較検討した際に、ノバセルさんに決めた理由は大きく2つあります。1つ目は、CM制作含めたパッケージとして効果測定ツールに関しても、多くの企業ですでに導入実績があったことです。
2つ目は、ラクスルさんご自身が広告主としての成功体験をお持ちだということで、これは大きなポイントでした。私たちが課題を抱えた時に、機能の提供だけではなく、実績に基づいた知見やアドバイスをいただけると思ったからです。実際のところ、やはり広告主としての実績やマインドがあるからか、担当の方からかけていただくアドバイスやダッシュボードの見やすさなど、かゆいところに手が届いていると感じています。
楠:ラクスルは事業会社として、2015年頃から今まで累計60億円ほどテレビCMに投資しています。1年目には2億円だった投資を、翌年以降毎年10億円の投資に切り替えたのですが、それは1年目で“勝ち筋”を見いだせたからです。実施の過程では、広告代理店さんにすべてをお任せするのではなく、制作、企画、効果検証などを内製してきました。そのラクスルが得たテレビCMに向き合った知見やノウハウが詰まっているのが、ノバセルアナリティクスなのです。
独自データ・リアルタイム性を活かして“理想の運用”へ
MZ:実際にどのように活用されているのでしょうか。
武井:弊社にとって、ノバセルアナリティクスが貢献してくれたのは、(1)データ提供(2)リアルタイムでの効果可視化の実現の2点です。
(1)について、テレビCMをネット広告と同じような指標と粒度で測定・分析ができるようにするために必要なデータは、主に2種類あります。1つはテレビCMの放映に関わるデータ。もう1つはテレビCMに接触したユーザーの流入以降のデータです。ノバセルさんには、テレビCMから流入してファーストアクションをとるところまでの、私たちでは取得できないデータを提供いただいています。
(2)について、ノバセルアナリティクスはリアルタイムにデータが更新されます。これによって、意思決定のコミュニケーションスピードが速くなりました。あるケースでは、最初は4本のクリエイティブを放映して、放映開始から3~4日後に効果を分析し、その後の放映分は一番効果の良いクリエイティブに絞り込む、という動きをすることができました。これは画期的だと思います。
MZ:まさにネット広告のように“運用”することができているのですね。
武井:はい。テレビCM放映後のレポーティングスピードも上がりました。以前はレポートに必要なデータを複数のベンダーから収集し、まとめるという作業があり、完成までに3ヵ月程度かかっていました。しかしノバセルアナリティクスは初速のデータを自動的に収集・分析し、アウトプットしてくれるので、レポーティング期間が大幅に削減でき、次に活かすスピードも上げられています。
そして、レポートのクオリティが標準化できたのも大きな変化です。今までは事業の担当者によってレポートの内容が異なったり項目が不足していたりしましたが、基準が統一されたことで、誰がレポートしても同じクオリティのものが出せる状態になっています。テレビCMを検討している事業が別事業の数値を見て判断できるようになりました。
MZ:DMMさんの活用をご覧になって、他社が参考にできる点、そのポイントはどこで すか。
楠:効果を可視化した上で次のアクションにつなげられていることが、ポイントだと思います。可視化はあくまで中間時点で、武井さんたちはそれによって組織体制や社内文化を変えられています。ノバセルアナリティクスを最大限にご活用いただけていることが伝わってきて、とても嬉しいです。
自社のデータと統合し、流入以降のLTV計測にも挑戦
楠:武井さんには、ノバセルアナリティクスのデータと自社のユーザーデータと掛け合わせる先進的なお取り組みも進めていただいています。
武井:よりビジネスへの貢献度に近い数字を見られるようにしたい、という考えから、テレビCMに接触したユーザーの流入以降のデータを使って、LTVを追っていく運用をしています。自社データベースを他のデータと統合して分析する手法は初めてで、きちんと突合できるのか、実践したい分析ができるのかは手探りでした。データエンジニアさんたちは相当大変だったと思いますが、希望するアウトプットが出せて、ほっとしています。
楠:弊社としてもこのような活用を増やしていきたいので、連携をより簡単にできるよう、準備をしているところです。ほかにもテレビCMにより新規だけでなくリピーターの動きが見たいなど、効果をより広く・長く測定されたいお客様のニーズにもお応えしています。
「テレビCM接触者」というユーザー群をより精緻に分析したい
MZ:現在、非常に進んだマーケティング組織を構築されているDMMさんですが、今後についてはどのようにお考えでしょうか。また、これからラクスルさんに期待されるのはどんなことでしょうか。
武井:ノバセルアナリティクスを導入して1年余りが経ちました。体制も安定的に整い、成果も見えてきた段階です。引き続きテレビCMをもっと科学して運用していくことを突き詰めたいですね。
実は、ネット広告や他の集客チャネルからの流入と、テレビCMからのお客様は動きがかなり違います。私たちは現在「テレビCM接触者」というユーザー群を切り出すことにもチャレンジしています。流入、課金状況などの動きを見て、ユーザー群に合わせたアプローチ施策を個別に実施する予定です。テレビCMもメリハリをつけて行っていきます。
また、アナリティクス部分に特化してノバセルさんに期待しているのは、テレビCM領域の「ザ・統合型ダッシュボード」にまで拡張していただくことです。具体的には、競合の出稿状況がわかったり予測してくれたりなどの機能を追加いただければ嬉しいですね。さらには取得してきた定性データをインポートして、定量定性の掛け合わせで、トータルの状態を評価してレポートに出してくれるサービスもあると嬉しいです。
楠:とても大事な要素ですね。弊社は事業会社という立場で成果創出のご支援をしているので、この先もそのスタンスで、事業会社に寄り添った運用ツールであるよう進化していきたいですね。
ノバセルアナリティクスは、テレビCM効果の可視化を起点として、ネット広告と同じようにテレビCMを簡単に運用することを目的としています。武井さんをはじめとするDMMの皆様はそれを体現してくださっていて、とても嬉しく思っています。
最後に、ここまでのお取り組みを聞くと難しそうに思う方もいるかもれませんが、ツールは日々進化し、効果の可視化のハードルはかなり下がっています。「うちには難しいかも」とお考えの企業様にこそ、お気軽にご連絡をいただきたく思います。
\無料オンラインセミナー開催/
【徹底的に可視化】ノバセルアナリティクス導入で実現!DMM.comのテレビCMデータ解析術とは
本記事で登場した武井氏、楠氏が取り組みの様子を詳しくお話しします!
開催日時:2022年1月14日(金) 14:30-15:30