GAFAが目論む「BaaS」事業者との連携
2019年6月に、Facebookが新たなデジタル通貨「リブラ(Libra)」の発行計画を発表した。だが、紆余曲折を経て、頓挫したのを覚えている人は多いだろう。今は、名称も「Diem(ディエム)」に変えて見直しを進めているようだ。
デジタル通貨「リブラ(Libra)」の発行は、中央銀行の存在意義を揺るがすものだ。そのため、各国政府・中央銀行が反発した。これと同じように、GAFAが銀行サービスに参入するのは、仮に便利だとしても、様々な反発がある。
たとえば、日本の金融庁やアメリカの金融当局が、GoogleやGAFAに銀行ライセンスを与えるだろうか? 認可事業である銀行業は、当局から認可を得ないとサービスを提供できない。
私は、今の状況では、Google銀行は不可能だと考えている。当局は、認可しないだろう。これだけ大きな存在になり、独占禁止法関連の訴訟も抱えている。GAFA解体論もくすぶっている。つまり、そこには、「Google銀行の不可能性」がある。
そうなると、GoogleやGAFAは、どうするのか? おそらく、「BaaS(Banking as a Service)事業者と手を組むことになる」と私は考えている。
「国内の主なBaaS提供企業」という図表が、『エンベデッド・ファイナンスの衝撃―すべての企業は金融サービス企業になる』に掲載されている。
住信SBIネット銀行やGMOあおぞらネット銀行、アプラス(新生銀行グループ)、みんなの銀行(ふくおかフィナンシャルグループ)などだ。
「Banking as a Service」とは、「サービスとしてのバンキング」という意味だ。「SaaS(Software as a Service)」のように、銀行が提供する機能やサービスを「クラウドサービス」としてAPIを介して提供する。BaaSを活用することで、銀行以外の事業者も様々な機能やサービスを提供できるようになる(参照:BaaSとは何か? 銀行の役割を変える金融サービスの「事例」と「市場」を解説 Banking as a Service(BaaS)とは?|FinTech Journal)。
わかりやすいのは、住信SBIネット銀行の「T NEOBANK」、「JAL NEOBANK」、「YAMADA NEOBANK」などだ。それぞれの事業者がBaaS機能を使って銀行サービスを提供しているようだ。
ここに、楽天銀行やPayPay銀行、LINE銀行、メガバンクなども参入してくる可能性もある。GoogleやGAFAが直接、銀行業の認可を取得しなくても、これらの事業者とのアライアンスによって銀行サービスに参入してくる可能性は高い。
BaaSがゲームのルールを変える
おそらく、近い将来には、GAFAなど海外勢、そして、楽天銀行・PayPay銀行・LINE銀行などの国内勢も巻き込んで、競争が激化するのではないか。
そこで生き残るために必要なことは何か? それは、データビジネスの成功の秘訣を応用することだろう。
「データの地球の回し方」(潜在需要創出)の方法を発見し、その基盤の上に、「データ・情報のパッケージ化」(商品化)を実践できるかどうか。エジソンが光をパッケージに仕立てたように、「実用に耐えうる品」(サービス)を開発できるか。Googleの初期のように、データビジネスの成功の秘訣を知る人材が多い会社は、有利だと思う。データビジネスに強い会社は、国内にも増えてきているはずだ。
エンベデッド・ファイナンス(embedded finance)、つまり、「組み込み型金融」は新たなゲーム・チェンジャーになる可能性がある。一般の事業者が銀行や金融サービスに参入し、他のデジタルサービスと連携する意味は大きい。
デジタルバンキング機能をGoogleやGAFAが取り込んで、さらなるブレイクスルーを起こすのか。BaaS事業者が、今後、どのようなアライアンスを展開していくのか。ユーザーの許諾次第で、デジタルマーケティングやアドテクノロジーにも影響するだけに、今後の行く末が気になるところだ。
BaaSは、ゲームのルールを変えてしまう。その破壊力を秘めていると思うのだ。