SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2025 Retail

リゾームマーケティングの時代

データビジネスの本質とGAFAの狙い――Google銀行と情報銀行の不可能性、そしてBaaSの破壊力

GAFAが目論む「BaaS」事業者との連携

 2019年6月に、Facebookが新たなデジタル通貨「リブラ(Libra)」の発行計画を発表した。だが、紆余曲折を経て、頓挫したのを覚えている人は多いだろう。今は、名称も「Diem(ディエム)」に変えて見直しを進めているようだ。

 デジタル通貨「リブラ(Libra)」の発行は、中央銀行の存在意義を揺るがすものだ。そのため、各国政府・中央銀行が反発した。これと同じように、GAFAが銀行サービスに参入するのは、仮に便利だとしても、様々な反発がある。

 たとえば、日本の金融庁やアメリカの金融当局が、GoogleやGAFAに銀行ライセンスを与えるだろうか? 認可事業である銀行業は、当局から認可を得ないとサービスを提供できない。

 私は、今の状況では、Google銀行は不可能だと考えている。当局は、認可しないだろう。これだけ大きな存在になり、独占禁止法関連の訴訟も抱えている。GAFA解体論もくすぶっている。つまり、そこには、「Google銀行の不可能性」がある。

 そうなると、GoogleやGAFAは、どうするのか? おそらく、「BaaS(Banking as a Service)事業者と手を組むことになる」と私は考えている。

 「国内の主なBaaS提供企業」という図表が、『エンベデッド・ファイナンスの衝撃―すべての企業は金融サービス企業になる』に掲載されている。

 住信SBIネット銀行やGMOあおぞらネット銀行、アプラス(新生銀行グループ)、みんなの銀行(ふくおかフィナンシャルグループ)などだ。

 「Banking as a Service」とは、「サービスとしてのバンキング」という意味だ。「SaaS(Software as a Service)」のように、銀行が提供する機能やサービスを「クラウドサービス」としてAPIを介して提供する。BaaSを活用することで、銀行以外の事業者も様々な機能やサービスを提供できるようになる(参照:BaaSとは何か? 銀行の役割を変える金融サービスの「事例」と「市場」を解説 Banking as a Service(BaaS)とは?|FinTech Journal)。

 わかりやすいのは、住信SBIネット銀行の「T NEOBANK」「JAL NEOBANK」「YAMADA NEOBANK」などだ。それぞれの事業者がBaaS機能を使って銀行サービスを提供しているようだ。

 ここに、楽天銀行やPayPay銀行、LINE銀行、メガバンクなども参入してくる可能性もある。GoogleやGAFAが直接、銀行業の認可を取得しなくても、これらの事業者とのアライアンスによって銀行サービスに参入してくる可能性は高い。

BaaSがゲームのルールを変える

 おそらく、近い将来には、GAFAなど海外勢、そして、楽天銀行・PayPay銀行・LINE銀行などの国内勢も巻き込んで、競争が激化するのではないか。

 そこで生き残るために必要なことは何か? それは、データビジネスの成功の秘訣を応用することだろう。

 「データの地球の回し方」(潜在需要創出)の方法を発見し、その基盤の上に、「データ・情報のパッケージ化」(商品化)を実践できるかどうか。エジソンが光をパッケージに仕立てたように、「実用に耐えうる品」(サービス)を開発できるか。Googleの初期のように、データビジネスの成功の秘訣を知る人材が多い会社は、有利だと思う。データビジネスに強い会社は、国内にも増えてきているはずだ。

 エンベデッド・ファイナンス(embedded finance)、つまり、「組み込み型金融」は新たなゲーム・チェンジャーになる可能性がある。一般の事業者が銀行や金融サービスに参入し、他のデジタルサービスと連携する意味は大きい。

 デジタルバンキング機能をGoogleやGAFAが取り込んで、さらなるブレイクスルーを起こすのか。BaaS事業者が、今後、どのようなアライアンスを展開していくのか。ユーザーの許諾次第で、デジタルマーケティングやアドテクノロジーにも影響するだけに、今後の行く末が気になるところだ。

 BaaSは、ゲームのルールを変えてしまう。その破壊力を秘めていると思うのだ。

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
リゾームマーケティングの時代連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

有園 雄一(アリゾノ ユウイチ)

Regional Vice President, Microsoft Advertising Japan

早稲田大学政治経済学部卒。1995年、学部生時代に執筆した「貨幣の複数性」(卒業論文)が「現代思想」(青土社 1995年9月 貨幣とナショナリズム<特集>)で出版される。2004年、日本初のマス連動施策を考案。オーバーチュア株式会...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2022/01/19 08:00 https://markezine.jp/article/detail/38129

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング