【2】BtoBのFacebook広告でも動画広告は有効
2つ目は、ネットプロテクションズが提供するBtoB後払い決済サービス「NP掛け払い」での取り組み。Facebook広告で静止画に加えて動画広告で成果を最大化する目的で検証を開始した。
最初は、「訴求軸」のみを変数とした、複数パターンのクリエイティブを検証。次に、成果の高かった訴求軸を用いて、2パターンのデザインでクリエイティブを制作・検証と、訴求軸とビジュアルの両方でブラッシュアップを重ね、勝ちパターンを見つけていった。
「動画広告は、静止画の広告よりもたくさんの情報量を入れられるので、商材の特長をたくさんPRしようと情報を詰め込みすぎてしまう傾向があります。ですが、広告を見る方にとっては、たまたま目にした“広告”でしかありません。ですので、メッセージはシンプルにしながらも、お客様を呼び止めるために“ユーザーペイン”や“ターゲット”を捉えるアプローチが有効です」(田岡氏)
【3】デジタル広告・未経験の商船三井は、LinkedIn広告にトライ
3つ目は、デジタル広告の出稿をほとんど行ったことがなく、制作に関しても運用に関しても知見やノウハウがゼロの状態から取り組みを開始した商船三井マーケティング部隊の事例。前例がないため、「予算内でのCV最大化」を目指して、LinkedIn広告の運用・検証を行った。
広告の対象は「FSRU(浮体式LNG貯蔵再ガス化設備)」というBtoB商材。この事例でも、1回の検証で変える変数を1つに絞るというルールは同じだ。「顧客のペインをもとにした訴求軸」「冒頭シーンの素材」を変数に検証したほか、クリエイティブの一部が動く「動画バナー」も制作。
結果、「成果の高い訴求軸」を見つけることに成功。「動画バナー」は、CTAのみが動くクリエイティブのほうが良い」などの具体的な発見が。動画バナーに関しては、ユーザーが視線を動かさずに閲覧できるクリエイティブのほうが成果につながるのではないかと考察した。
「デジタル広告自体の経験がなかった商船三井様ですが、LinkedInの担当者も驚くほどのCPAが出ており、十分な広告効果を上げることができました。LinkedInのオーガニック投稿の施策と絡めていく動きも出てきており、デジタルマーケティングの取り組み自体広がっているようです」(田岡氏)
クリエイティブ運用の方法論の確立へ
このように多数の企業で検証を行っているリチカ。そのナレッジをもとにクライアント企業の支援にあたるのはもちろんだが、広告クリエイティブの制作・運用におけるフレームワークを開発するなど、運用型クリエイティブの確立および拡大浸透にも取り組んでいる。
「これまでクリエイティブは、どうしても経験や感性をベースに語られることが多く、ナレッジが言語化されてきませんでした。ただでさえ変数の多いデジタル広告の運用を前に、暗中模索しながら苦しまれているマーケターの皆さんは非常に多いと思います。プラットフォームとの共同研究やクライアント企業様の事例の研究を通して、マーケターの皆さんのためになる情報をこれからも発信していきたいと思っています」(田岡氏)
最後に、インタビューの中で「運用型クリエイティブは希望である」という言葉があった。これは、リチカが言ったものではなく、とある広告代理店のマーケターからもらった言葉だそうだ。多くの現場で手探りの状態が続いている中、これまでのデータから導き出されたフレームワークをもとに広告の本質であるクリエイティブを磨いていくという運用型クリエイティブは、中長期的な指針になりうるものであり、また確かに「希望」とも言えるだろう。