社内パイプラインの正常化で案件創出率100%超を達成
グローバルへの報告方法も改める必要がありました。それまで日本は独自のレポートを行っていたようですが、グローバル共通のレポートでなければ本社は見向きもしてくれません。逆の立場で考えれば当然です。彼らは限られた時間の中で世界全体の現状を把握し、意思決定をしなければなりません。そこへ日本だけが定義の異なるレポートを持ち込んでは、迅速な意思決定を阻害するばかりか、最悪の場合日本の報告が無視され、蚊帳の外に置かれてしまいます。

そこで、グローバルテンプレートのレポートへ移行したのですが、最初はデータのクレンジングが全く追いつかず、日本のビジネスの現状を正確に表しているとは思えない状況でした。しかし、改善を加えながら報告を重ねるにつれ、このテンプレートが「共通言語」として機能し、これまで以上に日本への理解を得られるようになっていったのです。また同時に、私自身もこのレポートを利用することで日本の現状を迅速に把握し、次の一手に向けた意思決定を素早く行えるようになりました。
2年目に取り組んだのがパイプラインの正常化です。コロナ禍の影響もあり、インサイドセールス(アドビでは「BDR(Business Development Representative)」と呼ぶ)による案件創出は目標の未達が続いていました。その状況を改善するため、エンタープライズ領域におけるBDRとセールスの連携強化を図りました。
営業がどのアカウントにどうアプローチしたいのか。そのためにどんな支援が必要なのか。BDRには営業のバディとして、彼らの戦略・戦術を週次のミーティングから汲み取ってもらいました。営業から汲み取った内容を自身の活動に反映するだけでなく、マーケティングチームにもリクエストを投げるよう促したところ、BDRは毎四半期100%以上の案件創出を達成するようになり、グローバルでもトップレベルの生産性を示すようになりました。
営業とマーケティングの橋渡し役を配置し施策の精度を高める
2年間の取り組みを通じて、グローバルから課された「成果の可視化」に一定の成果を示すことができ、3年目にようやくグローバルからの追加投資を引き出すことに成功。予算が戻り、最初に実施したのがセールスチームごとに「フィールドマーケティングマネージャー」を配置することでした。彼らの役割は、担当するセールスチームの状況や営業戦略、アカウントプランを踏まえた上で、やるべき仕事をマーケティングにフィードバックすることです。フィードバックの内容を私が一緒に吟味し、優先順位を付けてマーケティング施策を実行していきます。
セールスチームの戦略はそれぞれ違います。あるチームがMA(マーケティングオートメーション)の販売にフォーカスしようとしている一方、別のチームは既にアドビの製品を利用しているお客様に別の製品を提案しようとしている、といった具合です。この状況ではお客様が求める情報や提供するべき情報がセールスチームによって異なるため、マーケティングへの期待も変わってきます。そこで各チームにフィールドマーケティングマネージャーを置けば、セールスチームの向こうにいるお客様を細かく理解することができ、マーケティング施策の精度を高めることができるようになるのです。