売上にコミットするマーケターは営業の仲間になれる
BtoCとBtoB、両方の実務を経験したことでわかった違いはたくさんあります。中でも重要な違いは、BtoBマーケティングでは購買の意思決定に至るプロセスが複雑で、ステークホルダーが多い点です。やや乱暴に言ってしまうと、BtoCではお客様に「この商品って、いいな」と思ってもらうことが基本です。ところがBtoBビジネスは全く違います。現場の意向とは関係なく、社長の鶴の一声で購入が決まることもあれば、役員会での賛同がないと購入が決まらないこともあり、BtoBマーケターは様々なケースに対応しなくてはなりません。

とりわけIT投資においては大きな額が動きます。それだけの金額を出す意思決定が複雑なプロセスになるのは当然です。提案する側は、お客様固有の状況を理解した上で、安心して取引ができるサポートをしなければなりません。そのためにはマーケティングだけで頑張るのではなく、インサイドセールス、セールス、カスタマーサクセスがスクラムを組み、お客様の全体像を共有するチームプレーが求められるのです。
これからBtoBマーケティングに取り組もうとしている方々へ1つだけアドバイスをするとしたら「マーケティングは欠かせない存在だ」と営業に思ってもらえるよう意識することを勧めます。信頼関係ができていないマーケティングとセールスでは、何を話しても上滑りするだけでうまくいきません。セールスに仲間と認めてもらうためには、ビジネスの数字に寄り添うこと。つまり、売上目標の達成にコミットすることです。
BtoBマーケティングはチームプレーでもっと面白くなる
BtoBマーケティングの面白さは、アメフトのようなチームプレーにあると思います。ただし、ゴールは点を取って相手に勝つことではありません。お客様とともにビジネスの成功を達成することです。アメフトでは試合前にプレーブックを作り、プレーヤーはそれを読み込んでから試合に臨みます。同じように、企業もゴールを達成するためのプレーブックを作るべきではないでしょうか。
企業のプレーブックにあたるものがアカウントプランです。セールスはアカウントに対して「こんな価値を実現してほしい」というプランを持っています。このプランの実行をセールス、マーケティング、場合によってはカスタマーサクセスにも参加してもらい、共同で進めていくのが理想です。些末な言葉の違いかもしれませんが「ABM(Account Based Marketing)」よりもむしろ「APBM(Account Plan Based Marketing)」を私は目指しています。
アドビでは獲得したリードの数だけでなく、そこから生まれたパイプラインの数やブッキングへの貢献度を毎週チェックしています。目標に到達していなければ、グローバルのマーケティングやセールスと状況を共有し、何をすれば全体のゴールを達成できるかを考え実践する。そのプロセスを繰り返し、信頼関係を社内にも社外にも作ることが重要なのです。