勘所を押さえたプロの手でソーシャルリスニングの切り口を定める
MZ:IMJでは、どのようにしてSNS上のペルソナ設定を支援されているのでしょうか。
IMJ:弊社が得意としているのはソーシャルリスニングです。まずはツールを使い、その業界や製品に関するユーザーの声をラフに検索します。次に、検索した声の中からボリュームゾーンを探り、さらに細かく分析。ツール上でもネガティブ/ポジティブな声を大まかに捉え、簡単なワードマップを自動生成することはできますが、重要なのはどの検索ワードや切り口でソーシャルリスニングを行うかという点です。この点は自動化が難しく、勘所を押さえたプランナーが複数在籍する弊社の得意領域だと考えています。
IMJ:SNSの投稿に対してどのような人がリアクションしているのかをウォッチしながら、都度ペルソナやインサイトを改善していく方法もあります。どんどん変わっていくユーザーのインサイトを捉えてペルソナを精緻化していくためには、こうしたアジャイル的なアプローチが大切です。
PDCAの高速化に有効なプロトタイピング
MZ:アジャイル的なアプローチといえば、プロトタイピングにも通ずる要素だと思います。SNSマーケティングにおいて、プロトタイピングはどのような価値を発揮するのでしょうか。
三冨:プロトタイピングのコンセプトである「早く・安く・何度も・並行して」の中でも、とりわけ「早く」「並行して」という部分がSNSマーケティングには効果的だと考えています。「早く」だけでは漠然としてしまうので、プロトタイピングにおいてはアウトプットのタイミングを決めておくことが重要です。たとえば「2日に1回投稿してみましょう」と決めて実行し、その結果をすぐに振り返って検証する。2日に1回では少ないと判断したら、1日1回に調整してユーザーの反応を見て、またすぐに振り返って検証。そのプロセスをひたすら繰り返します。
SNS上で特定のペルソナに向けた施策を実行する際も、複数の仮説を並行して検証していくと高い効果が出るのではないかと考えています。参考資料として、カリフォルニア大学サンディエゴ校准教授のSteven Dow博士らが行った実験の結果をご紹介しましょう。その実験では、複数種類のバナーを並行してユーザーに表示し、効果の高いクリエイティブを絞るパターンと、1つのバナーをユーザーに表示してクリエイティブの改善を重ねるパターンを比較しました。その結果、バナーのCTRが向上したのは前者のパターンでした。つまり、並行して試すことでユーザーのインサイトをより精緻に捉えられるというわけです。
ポイントは、これがABテストではないことです。どちらが良いのかを量的に検証することが目的ではなく、並行して試すことにより「どれがなぜよかったのか」という学習を得ることが重要なのです。その結果、まったく新しいコンセプトが生まれることもあり得ます。