「マーケター」という職業について
――マーケターという職業のおもしろさを感じる瞬間はありますか?
ありきたりかもしれませんが、ユーザーさんがSNSに投稿してくださったコメントを社内で共有して、みんなで喜び合う。そんな瞬間は、純粋に「いいな」と思います。また、資金調達やユーザー数が10万人突破、などの節目のタイミングで「ここまでみんなでやって来られた」と一呼吸ついて安心できる瞬間もあります。
たとえば、2021年にテレビCMを放映しましたが、実は、放映後に資金調達を計画していました。よって、事業KPIを落とすことは許されず、現場はかなりハイプレッシャーの状態。ですが、市場環境やiOSのトラッキング規制の問題など外的要因の影響もあり、CPCやCPAがどうしても上がってしまう状況だったんです。あの時期をチームのみんなで乗り越えられたのは、とても良い経験でした。

――ユーザー数が数千人の頃から「bloomee」のマーケティングに携わられてきて、昨年のテレビCM放映は感慨深かったのでは?
そうですね。ただ、大修羅場でした(笑)。このテレビCMの放映も西口さんと運用型テレビCMサービス「ノバセル」の田部正樹さんにサポートいただいたのですが、お二人がいなければ切り抜けられませんでした。
先に関西で放映し、その後に関東へ放映を拡大したのですが、関西での数値を見たときに震えたんです。これを関東で放映したら、絶対に投資対効果が合わない……と。そこで、急遽クリエイティブを制作し直し、なんとか切り抜けられたのですが、もしかしたら今、生き残れていない可能性もあったかもしれません。
そんなときでも、お二人はとても冷静で。僕は「どうしよう」とひよっていたんですが、「こういう原因だと思うから、そんなに騒ぐことでもない」と。僕には見えていない世界が見えていたんでしょうね。潜り抜けてきた修羅場の数と重さが違うのだろうと、存在の大きさを実感しました。
――マーケターには、常に時代の一歩先にいることが求められます。スピードの速い世の中の流れに食らいついていくために、情報収集で意識されていることはありますか?
それに関しても、以前西口さんに教えていただいたことを実践しています。キャッチアップの仕方について尋ねたとき、見ているメディアや情報管理の仕方など具体的なアドバイスをたくさんいただいたのですが、中でも大切だなと思ったのが「常に複数のテーマを持ち歩く」ということです。今の事業課題、広告施策のアイデア、人材の課題など、そのときどきでテーマの内容は変わりますが、24時間365日、常に複数のテーマを自分の中に入れておくようにしています。
すると、街を歩いているときや食事をしているときなど、日常生活のふとした瞬間に「こうすれば解決できるかも?」「これ、あのコミュニケーションにいいかも」と、一見関係ないような事柄からヒントを得られるようになります。「アンテナを張る」と言いますが、それをより具体的にするイメージです。友人と話しながら食事をしている最中に突然メモを取り出す、なんてこともよくありますね(笑)。
ビジョンを現実にするために、力をつけていきたい
――新人・若手マーケターへのメッセージの意味も込めてお聞きしますが、これまでのキャリアを振り返って、当時の自分に伝えたいことはありますか?
事前にこの質問をいただいて、考えてみたのですが、「実はすごく幸せだったな」ということを思いました。必死になれる環境で、必死にやれる仲間と仕事をできる。結局、これ以上のキャリア形成はないのではないかと思います。なので、新卒で配属されたばかりで、あるいは現場がとにかく多忙でめちゃくちゃ大変……という方がいたら、それは実はとても幸せなことなんだよ、と伝えたいです。そして、僕自身も今そういう言葉が欲しいです(笑)。
――最後に今後のキャリアの展望をお聞かせください。
花の市場は、この30年間ずっと縮小を続けています。そのような中、我々は花産業全体を活性化させたいというビジョンを描き、ここまでやってきました。まだまだ道半ばではありますが、今、ようやくその目標に手がかかり始めた実感があります。たとえば、最近では、規格外の花を買い取り、自社工場で加工してそのまま流通させるといった取り組みも始めました。こうした新たな取り組みができるのも、やはり事業の成長があってこそ。その意味で、マーケティングには“事業を勝たせる”役割があり、また“産業を活性化させる”パワーもあると思っています。これらを実現させるために、僕自身、マーケターとしてもっと力をつけていきたいです。
西口さんや田部さんのお話を見聞きしていて、「実績で語れる人」はやっぱりかっこいいし、マーケターとして本物だなと感じています。僕は今まだ何も語れないので、「先はまだまだ遠いな」と。大先輩方がいるからこそ、「まだまだだな」と思えることが、本当に素直に嬉しいですね。