クロスメディア分析でKPIやKGIを可視化
個人情報との向き合い方について、ドコモでは具体的に2つのことを試みている。1つ目は、PIA会議(プライバシー影響評価)と呼ばれる会議体の設置だ。データをマーケティングで活用する際、企業はより多くのデータをより多くの方法で活用しようとする。PIA会議は、それがユーザーのプライバシーに配慮したものになっているかを、マーケティング部門ではないメンバーが入り客観的、俯瞰的に評価している。
2つ目は、顧客に向けてどのようにデータの活用をするのか、何に対するデータの許諾をしているのかを可視化した「パーソナルダッシュボード」を提供している。こうすることで顧客に対し、どのようなデータを利用しているのかを説明している。
これらの取り組みを通し、企業にはマーケティングの課題解決において安全な基盤を、顧客に対しより良い顧客体験を提供する取り組みを行っている。

企業におけるマーケティングの課題解決として、ドコモはデータ基盤「docomo data square」を提供している。同データ基盤では、テレビ×デジタル×DOOH(デジタルの屋外広告)のトリプルメディア分析を実現。決済情報、位置情報、アプリダウンロードや起動の情報を使って、顧客ニーズに合わせてKPI・KGIを可視化することも可能だ。
最適なフリークエンシーと最適なメディアの組み合わせの可視化に成功
セッション後半では、Paraviの行った施策とその結果について、PORTOの吉田氏とParaviのデジタル広告担当である舩曵氏の対談形式で紹介。まず舩曵氏は、Paraviにおける実施の背景を説明した。
「Paraviとして最初に統合プランニングを実施したのは2021年1月です。実施の理由は、ブランドキャンペーンの効果を最大限に活かしたいと考えたからです。その際はテレビ、デジタル、DOOHをかけ合わせて配信し、統合的にプランニングすることで、態度変容に大きく寄与してブランドリフトに貢献しました。その結果を踏まえ、2022年1月に実施した今回は態度変容だけではなく、行動変容まで追ってみたいという思いがありました」(船曳氏)

ブランドリフト調査では、一般的に態度変容を確認するところまでになりがちだ。今回のParaviの取り組みについて吉田氏は「行動変容との相関を見るというのはなかなかチャレンジング」だと話す。
そこでParaviが制作したクリエイティブをもとに「最適なメディアを組み合わせ」と、「態度変容(KPI)と行動変容(KGI)の可視化」という2つの軸で検証を行った。
具体的に、認知ファネルにおいて別々に実施されていた施策を統合的に配信・検証・分析して、効果を検証。加えて、認知ファネルから下のファネルへの転換にどう寄与をするのかを見ていった。配信部分はPORTO、分析部分は「docomo data square」を活用したという。

1つ目の検証では、トリプルメディアでの施策を実施し、ブランドリフト調査を行った。この結果について、吉田氏は次のように語った。
「接触メディア数が増えるほど、認知や特徴理解のフェーズで大きくリフトしていました。また同じ接触回数の場合と比べると、単体メディアで3回接触するよりも、1メディア1回ずつ、合計3回接触する方が、態度変容や行動変容が高まっていました。これにより最適なフリークエンシーとメディアの配分が見出せたと思います」(吉田氏)

これの結果に対し舩曵氏は、「同じフリークエンシーでも接点を変えることで、明らかに態度変容にいい影響が出たことは、弊社としても発見でした」と続けた。同じ予算で、より高い効果を得るという意味では、大きな示唆を生む結果となった。
