MMM実行を支える無料のツール「Robyn」
では、MMMはどのように行われるのか。事業会社のMMM実行をサポートしている小川氏は、自身も業務で活用しているMMMツール「Robyn(ロビン)」を紹介した。
RobynはMetaが開発し、オープンソース(無料)として公開しているもの。チャネルごとの予算配分最適化による効果の最大化や、効果を維持しながらコストを最小化するための分析を、誰もが安価かつスピーディーに行うことができる。Robynではリッジ回帰が使われているため「相関が強い説明変数(結果に影響を与えている要因)を複数入れると、推定結果の信頼度が下がる」という回帰分析の問題点を回避することが可能。残存効果や効果低減を探索する計算も行うことができる。

MetaがRobynをオープンソースで提供する理由は、MMM分析者のコミュニティを構築し、多数の人からインプットをもらうことでより良いオープンソースコードを作るため、と明確。さらに、次の4つの観点を重視して提供しているそうだ。

1.プライバシーファーストへの対応:利用者のプライバシーを重視する今日の世界において、それを守りながら全体計測を可能にするにはMMMが重要な役割を果たす。
2.MMMの民主化:高価だったMMMツールをより多くの広告主が利用できるようにすることで、マーケティングはよりデータドリブンになっていく。
3.既存MMMとの補完関係:次世代MMMとして、既存のMMMアプローチの補完になるように設計。
4.ベストプラクティスのサポート:Metaのクライアント企業のマーケティングを成功に導くため、MMMで最大限の価値を引き出せるよう支援する。
RobynによるMMMは、何が進化しているのか?
加えて中村氏は、旧来のMMMと「Robyn」との違いについても言及する。Robynは、伝統的なMMMとアトリビューションモデルの利点を合わせたものとなっており、その意味で「次世代のMMM」とされている。

MMM歴20年の中村氏によれば、伝統的なMMMはオフライン・オンラインデータをエクセルで集計しマニュアル作業で分析を行う上に、データがそこまで細かくないため、単発的なアウトプットになってしまう。加えて、多くの時間とリソースが必要だった。
もう1つのアトリビューションモデルは、戦術的なアウトプットは出せても、クロスチャネルやメディアでの戦略的な部分は出せず、データもオンラインに限定されているという欠点があった。
「オフライン・オンラインのきめ細かいデータも入っており、機械学習を使って回しているため、比較的自動化できているのがプロダクトの特徴です。いずれにせよ、昔のMMMとは違うものになっているはず」と中村氏は話す。