日本ハムブランドをより消費者に届けたい
──まず、日本ハムがD2Cプラットフォーム「Meatful」を立ち上げるに至った背景を教えてください。
高崎:消費者の方に日本ハムについてより深く理解いただきたいことが、大きな背景にありました。
日本ハムの主力事業の1つである食肉事業は、グループ売上高の57.2%(2021年3月期決算)を占め、国内の食肉販売量のシェア約20%を誇ります。そのためスーパーの精肉売場やレストランの肉料理など、多くの場所で日本ハムの食肉が扱われています。
しかし、実際消費者の皆さんからすると「○○産のお肉」くらいしか情報がなく、日本ハムの食肉ブランドがあっても表に露出しているケースが少ないのです。これでは、消費者の皆さんに日本ハムのブランドが伝わらないので、直接つながることのできるチャネルが必要だと考えました。
加えて、消費者の声を直接聞いて商品開発・マーケティングに取り組みたいという思いもありました。これまでは卸・流通を通した販売がメインで、そこで得られるデータをもとに売場の提案をするくらいしか打ち手がありませんでした。
しかし、D2Cのチャネルを新たに作ることで、消費者の声を直接反映した商品開発、マーケティングを行い、最終的に日本ハムのロイヤリティを高めたいと考えました。
コンサルティング×マーケティング×クリエイティブのプロが集結
──今回はアクセンチュア ソングの早川さんとDroga5 Tokyoの杉山さんが事業の立ち上げをサポートしたと聞いています。それはなぜでしょうか。
早川:元々、2021年4月から始まる日本ハムグループの新たな中期経営計画の開始に向け策定したマイルストーン「Vision2030」を日本ハムの方々と杉山さんと一緒に作ったのが最初のきっかけになりますね。
新しい事業であるMeatfulは、文字通りゼロから一緒に創り上げています。検討の初期段階からコンサルティング、マーケティング、クリエイティブなどのメンバーが日本ハムと共創できたからこそ、細部まで魂が宿った事業として形にすることができたと強く感じています。
杉山:「Vision2030」では「たんぱく質を、もっと自由に。」というビジョンを掲げています。このビジョンは、中期経営計画をもとに社長や役員の皆さんと対話を重ねながら、日本ハムの存在意義やあるべき姿を言語化して作成したものです。
これまで「事業計画はコンサルティングやマーケティング、商品ができてからのコミュニケーションはクリエイティブ」といった分業体制が一般的でした。しかし今回は、事業を理解している日本ハムと、コンサルティングやマーケティングのプロであるアクセンチュア ソング、そしてクリエイティブのプロであるDroga5 Tokyoが、ビジョンの策定から共創することで、同じ目線で事業計画から商品開発・プロモーション、クリエイティブ制作まで一貫して行うことができました。
このように、クリエイティブが新規事業立ち上げの初期段階から入り込むというのは新しい試みだと思います。
早川:このビジョンは、Meatfulのブランド開発や商品はもちろんのこと、サービスやコンテンツ、そしてコミュニケーションに至るまですべての要素を考える上で大事な拠り所になっています。ビジョンを常に念頭に置きながら、特に検討の初期段階では、シーズ(企業の持つ価値や強み)とニーズ(顧客の欲求)、そして社会課題を洗い出していきました。
すると、日本ハムの取り扱っているお肉のバリエーションの多さや安全/安心といったブランドなどのシーズ、コロナ禍による食卓での会話/愉しみの変化やヘルシーな間食へのニーズ、そして様々な社会課題の変化も見えてきました。