マーケティング経験を公共事業でどう活かす?
——長田さんは前職時代、レッドブル・ジャパンのCMOとして常に消費者と向き合ってこられましたが、そのご経験は今のような公共事業でどのように活かされていますか?
消費財が消費者で成り立っているように、まちは生活者で成り立っています。ただ、商品は買いたい人が購入しますが、まちに住んでいる人は必ずしもそうではありません。代々住んでいるから何となく住んでいる人もいます。それに、商品の場合は買いたくなければやめればいいけれど、まちに関してはすぐ引っ越すわけにもいかず、やめられないという特徴があります。
私の現在の活動は、元々住んでいた方、たまたま渋谷に住んでいる方、そんな住民の方々や、渋谷にちょっと興味を持っている方まで渋谷というまちに愛着をもっていただくことです。平たく言えば、渋谷というブランドを愛し、誇りをもっていただくことですね。これは、ブランド作りとつながっているんです。
行政にはマーケティングという考えは基本的にはありません。だからこそ、私たちのような外部の団体がその機能をもって、企業や人々とつながり、渋谷の価値を上げていくという活動は重要です。マーケティングを「社会に貢献した価値作りをしていくプロセス」と考えると、もはや1社だけでは不可能で、様々な企業や外部の人とつながっていく必要があると思います。
渋谷未来デザインの「未来」をどうデザインするのか
——今年の4月、長田さんは新事務局長に就任されましたが、今後の目標についてお聞かせください。
これまでは渋谷区出身の方が2代続けて事務局長でしたが、今回からその職務を引き継ぎ、地元の方々や商店街、町内会など様々な方とも向き合っていきます。その意味ではプレッシャーもありますが、やりがいもあります。
目指していることは3つあります。1つは、参加企業が横でつながる仕組みを作り、新しいものが次々に生まれる場を整備すること。2つめは、渋谷で生まれた事業を他の地域に展開していくこと。そして最後はグローバル化です。
私が外資系出身だからかもしれませんが、多様性の1つの面として、国際性を加えたいとは常々考えていました。それがパートナーなのか、それとも海外都市とつながるのかはまだ構想中ですが、実は今年からパブリックパートナーという制度を設け、ブラジル大使館がパートナーになってくれたんです。
ブラジルはストリートカルチャーがあり、起業も盛んで特に女性のユニコーン企業が多いのが特徴です。スタートアップのまちである渋谷にもきっといい刺激になると思います。
——最後に多様性を源泉にイノベーションの創出を目指したい企業へのアドバイスをお願いします。
まずはアンテナを張り、企業の外などいろいろな場所に出てみること。そうすると発見もありますし、興味を持つ対象が増えていきます。次に、小さくても何かやってみることです。イノベーションはPoC(Proof of Concept:概念実証)なので、たとえ失敗しても成功するまで続けてみることが大切です。
また、FDSに興味がある方、何か一緒にやりたいという方がいたら、いま私たちはパートナー出向者、プロジェクトや人材を常時募集しているので、ぜひお声がけください。