カスタマー・ジャーニー・マップとの違いは?
読者の中には「カスタマー・ジャーニー・マップでも消費者の変化を描けるのでは?」「カスタマー・ジャーニー・マップと比較したとき、どっちが良いのだろう?」と思った方もいるのではないだろうか。音部氏は、両モデルの3つの違いを紹介した。
まず、カスタマー・ジャーニー・マップとは「注目している点」が違う。先述のようにパーセプションフロー・モデルは「消費者の認識の変化」が中心となっているのに対し、カスタマー・ジャーニー・マップは「消費者の行動と接点」が中心になっていることが多い。

クー・マーケティング・カンパニーのブログより引用
そのため、カスタマー・ジャーニー・マップは4Pのプロモーションやプレイスの整理には向いているが、一般的にはプロダクトやプライスまで含めるのは難しい。
また、見ている「時制」も違う。カスタマー・ジャーニー・マップは過去から現在までを記述する傾向があるのに対し、パーセプションフロー・モデルは現在から未来の記述になっている。
最後の違いは、カテゴリーとの関係だ。カスタマー・ジャーニー・マップは製品・サービスカテゴリーごとに似通る特徴がある。それに対し、パーセプションフロー・モデルはブランドによって人々の認識が異なるので、ブランド固有のものとなる。音部氏は「最後の違いが、使用用途の違いにつながってくる」と語った。
「組織や領域によって例外はありつつ、カスタマー・ジャーニー・マップはどの情報に触れて購入に至ったかを示すものであることが多く、同じカテゴリーで差を生むことは難しいです。そのため、カテゴリー単位の効率改善に役立ちます。一方、パーセプションフロー・モデルは競合ブランドとベネフィットの中身もベネフィットを作り上げるまでの経緯も違います。そのため、ブランドの差別化や市場創造について考えるのに適しています。どちらか片方だけでも良いですが、両方扱えると強力なマーケティング活動ができると思います」
戦略・消費者・マーケターの構造で整理する
ここから音部氏は、パーセプションフロー・モデルの詳細について解説した。パーセプションフロー・モデルは大きく戦略・消費者・マーケターの3つの要素を表現できる。

(クー・マーケティング・カンパニーのWebサイトからダウンロード可能)
まず、戦略部分にはブランド名やキャンペーン名、目的やラーニング目的(どのような学びを得たいか)、そして戦略を記載する。音部氏によれば、この「戦略」部分が固まっているかがとても重要だという。ここでつまずくと、実行部分では挽回できないのだ。
続いて、消費者に関する項目も紹介。ここで特に気になるのが、<状態>の段階だ。これまで提唱されてきたAIDMAやAISASなどの購買行動プロセスではAttention(注意)が最初で、そこでどう認知を取るかが重視されてきた。しかし、Interest(関心)を感じていないものにAttention(注意)を喚起するのは簡単ではない。そこでパーセプションフロー・モデルでは「現状→認知→興味→購入→試用→満足→再購入→発信」という段階を踏んでいる。「現状」に、消費者の関心が示されているという考え方だ。
そして音部氏は<状態>の段階の中でも「満足がとても重要」だと解説した。
「満足というのはブランドを長期的に成長させるためにはとても重要です。1回買ってもらったからそれで良しではなく、1回買ってもらって満足してもらい、再購入につなげる。これは再購入の頻度が少ない耐久消費財でも一緒で、満足してずっと使ってもらいたいと思ってもらえることが、ブランドへの愛着につながります」
これらの<状態>の段階ごとに行動とパーセプションの変化の経路をまとめることで、消費者の理解を進めることができる。そして、最後にマーケターがどう働きかけるかを、知覚刺激(パーセプションを次の段階に移すための刺激)、KPI、メディア/媒体で整理していく。