コミュニティーの立ち上げプロセス
1)自社のコミュニティーは何を実現する場所かを定義する
「コミュニティー」という言葉は広義であり、各企業によってその捉え方は異なります。あらゆる可能性を秘めたコミュニティーを始めるにあたり、何をやり何をやらないかを決めるのは重要です。
HubSpotではまず、コミュニティーを「ユーザーやエキスパート同士が繋がり、共に学び、アイデアを共有しあうことができるプラットフォーム」と定義しました。この定義を決める際にも「インバウンド」の基本に立ち返りました。企業によってはコミュニティーのゴールとして「サービスや製品を売る」ことや「カスタマーサポートの工数を減らす」などに繋げるケースもあるかもしれませんが、当社では「相手に価値を提供する」というインバウンドの思想のもと、企業目線ではなく「コミュニティーメンバー」が主語の定義を設定しています。
2)コミュニティーメンバー像を「段階」ごとに明確にする
他のあらゆる施策と同様に、コミュニティーの運営においても、「Attract」「Engage」「Delight」の循環の中で参加メンバーの方々に満足度の高い体験を提供していくには、誰に向けてどんなメッセージを発信するのか、誰と誰がつながれる場にするのかなど、コミュニティーのゴールとそれを計測する指標(いわゆるKPI)を準備段階でしっかり設計することが重要です。
たとえば連載第二回でご紹介したオンライン広告の場合、特定のコンテンツに触れる人が広告配信の段階である程度セグメントされています。そのため各施策単体でのゴールは、受け手に情報の価値を感じてもらった上で「e-bookをダウンロードしてもらう」「イベントに参加してもらう」など企業が設計した一定のアクションをとってもらうことです。一方コミュニティーの場合、参加者が心地よいと感じるコミュニティーの使い方・関わり方は多岐にわたるため、それぞれのニーズに応じて価値を感じてもらえる情報や、その先でとって欲しいアクションの設定が一層多様になります。
多様なニーズを持つ参加者に対してコミュニケーションを設計する際には、当社が作成している「コミュニティーメンバージャーニーマップ」が非常に役に立ちました。このマップでは、コミュニティーメンバーを「非メンバー」から、「チャンピオンメンバー」までの5段階に分けています。

関わりの度合いで5段階に分類したコミュニティーメンバー像
1)「非メンバー」:コミュニティーアカウントを持っていないメンバー
2)「新規メンバー」:コミュニティーに参加したばかりのメンバー
3)「受動メンバー」:積極的な発言はしないがコンテンツを定期的に目的を持って閲覧する
4)「能動メンバー」:自分から積極的に質問をしたり、他のメンバーの発言に返信をしたりする
5)「チャンピオンメンバー」:積極的に新しいトピックの会話を立ち上げたり、新メンバーのフォローをするなど、参加だけではなくコミュニティーの運営にも協力する
縦軸で設定した質問を埋めていく形で、それぞれの段階のコミュニティーメンバーがコミュニティーにどんな価値を求めているのか、どのようにコミュニティーと関わりたいと思っているのかを明確にし、次の段階に進むにはどんなきっかけが必要なのかを言語化します。ここで明文化したジャーニーは、コミュニティーを立ち上げた後にコンテンツを企画する際の重要な「よりどころ」となります。