プロセス2:プロファイリングとペルソナ分析で、解像度を上げる
続いてプロセス2ではターゲットの精緻化を行う。ここでは、「ターゲットプロファイリング」をしてから「ペルソナを作成」するという流れになる。
ターゲットプロファイリング
まずターゲットプロファイリングとは何か。これは、ターゲットである顧客のデモグラフィック(年齢・性別・職業・年収などの属性)や価値観・行動の特徴などの傾向の解像度を上げることで、ターゲットに商品を買ってもらうためのアプローチ方法や適切なセールスポイントを見極める拠り所をつくる分析だ。
基本属性、価値観、行動の特徴といった項目を埋めることでターゲットのプロファイリングができる。これは「リサーチデータを活用して行うか、メンバーの経験や知見を基に埋めていってもよい」と阿佐見氏。アウトプットの例が図表5だ。

ここでやりがちなのが「20代女性が読みそうな雑誌を全部挙げてしまう」といった間違いだ。阿佐見氏は「この商品のターゲットはどんな人かを捉えて、本当に読んでいそうな雑誌を想起するのが適切な使い方」とした。
「その他に、『クラスター分析』や『ターゲットの価値観分析』といった手法もプロファイリングに使えるので、興味のある方は書籍を参考にしていただければ」と話した。
ペルソナ作成
ここまでのターゲットプロファイリングができたら、続いてターゲットの集団の中から一人のペルソナを作っていく。ペルソナとは、商品の理想の顧客像として設定した一人の人物。阿佐見氏はターゲットとペルソナの違いを「ターゲットが集団分析であるのに対し、ペルソナは、ターゲットの中から抽出した一人の生きた人間というイメージ」だと説明した。ここでは、「属性」よりも「その人がどう考えるのか」「どういう行動をとるのか」を、生きた人間のように想像することが重要だ。
特に、ペルソナ作成においては以下の4点を深掘りする必要がある。
ペルソナを使って深掘りしたいこと
- 「どんな悩み・欲求があるか」(インサイト)
- 「行動」(カスタマージャーニー)
- 「意識・感情の変化」(カスタマージャーニー)
- 「ターゲットとの接点」(カスタマージャーニー)
これらをもとに、ターゲットのインサイトをどう突いて動かすのか、顧客基点で施策に落とし込んでいくわけだ。
阿佐見氏は「実在の人物で作成するのが圧倒的に作りやすくおすすめ」と話す。電通には「Prototype for One」という人気のアイデア発想法があり、それがまさに自分の周りにいる家族や友人などを具体的に思い浮かべて、その大切な一人のためにアイデアを作っていく手法だという。身近な人に設定することで行動や習慣をすぐに思い浮かべることができ、潜在ニーズや課題も発見しやすいといったメリットがある。
「『これに困っているからこういうふうに助けられるはずだ』という形で導き出される解決は、自然とストーリーが内包されたものになります。また、身近な人だからこそモチベーションも上がって、その人に何度も見せてブラッシュアップすることもできるため、圧倒的にプランニングしやすいと思います」(阿佐見氏)
ペルソナを身近な人だけで作ることが難しい場合は、定性インタビューモニターの中から選ぶこともあるという。知人よりは考えにくいが、実際に顔を見たことのある人物のほうがイメージはふくらみやすいからだ。また、ペルソナは複数設定しても構わない。細かい参考情報を得たい場合はペルソナに近い人物をSNSで観察することも有効だ。
後編では、プロセス3の「セールスポイントの発見」について、インサイトの発見からカスタマージャーニーマップを描く流れまで解説された様子をレポートする(後編は次号82号に掲載予定です)。