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LINEマーケティング活用最前線(AD)

認知拡大から新規獲得までを担う ネスレ日本に聞く「Talk Head View Custom」活用

 国内の月間利用者数9,300万人(2022年9月末時点)を擁するLINE。LINEのアプリ内でも高いアクティブ率を誇るトークリストに動画広告や静止画広告を配信できる運用型広告が「Talk Head View Custom」だ。プレミアムキャットフードブランド「ピュリナ ワン」を展開するネスレ日本は、電通デジタル協力のもと、2021年12月からTalk Head View Customを活用している。Talk Head View CustomやLINE公式アカウントを併用することにより、認知拡大から新規獲得まで成果をあげていると話す同社の取り組みについて、各社の担当者に詳しい話を聞いた。

猫の健康を気遣うプレミアムキャットフードブランド「ピュリナ ワン」

MarkeZine編集部(以下、MZ):まず簡単なご経歴と現在の業務、ミッションなどについてお教えください。

インタビュイー写真
(左から)LINE株式会社 パートナー営業本部 パートナー営業第1部 パートナー営業第1チーム チーフ 成田繁泰氏
ネスレ日本株式会社 ネスレピュリナペットケア マーケティング部 シニアブランドマネジャー 森嶋剛広氏
株式会社電通デジタル ダイレクトアカウントプランニング部門  プランニング第1事業部 第4グループ アカウントプランナー 山田経太氏

森嶋:ネスレ日本のペットフード部門で「ピュリナ ワン」というブランドのシニアブランドマネジャーをしています。売上・利益の成果とブランドの価値向上の両立によって、長期的にビジネスを成長させることがミッションです。製品開発から消費者コミュニケーションまで、ブランドに関するすべての業務に携わっています。

 「ピュリナ ワン」は、猫の健康のためのプレミアムキャットフードブランドで、主なターゲット層は猫の健康に気を遣うキャットオーナー様です。具体的には、猫の成長に必要な栄養素などをご自身で調べた上で商品を選択するような、購入前に検討のプロセスをしっかり踏む方をターゲット層として想定しています。

山田:電通デジタルには、2018年4月に入社しました。ネスレ日本様のデジタルアカウントプランナーとして、デジタルマーケティングを日々ご支援しています。

 直近では、「ピュリナ ワン」の中長期的な目標であるブランディング施策と、短期的なダイレクト施策を両立させた上で双方のKPI達成を目指す、コミュニケーション設計やメディアプランニングが主なミッションです。

成田:2021年より現在のチームに所属し、電通グループ様を担当しています。ミッションは多岐にわたりますが、電通グループ様がLINE社の法人向けサービスを販売・提案しやすいような事例紹介や販促資料の提供、各プロダクトに関する要望ヒアリングからの機能改善などの業務に従事しています。

認知拡大と新規獲得の両軸を狙う戦略

MZ: ネスレ日本様では、広告運用やSNS、LINEの活用において、現状どのような戦略を取っているか、概要をお教えください。

森嶋: デジタルマーケティングにおいては、認知拡大とブランドイメージ形成のためのブランディング広告、新規獲得のためのダイレクトレスポンス広告の両軸で展開しています。

 ブランディング広告は、猫の健康のためのプレミアムキャットフードとしての第一想起の獲得が目的です。ペットに対する健康志向とともにペットフードへの支出額が高まる中、健康に良いキャットフードとして最初に想起されるブランドには、圧倒的なアドバンテージがあると考えています。

 一方ダイレクトレスポンス広告は、お試しサンプルの申し込み獲得が目的です。ペットフードは、購入する飼い主と消費するペットが違うという点で他の商材と性質が大きく異なります。「猫が商品を好んで食べてくれるかわからない」ことが購入のハードルになるため、これを越えるためのサンプル応募をコンバージョンとして設定しています。

 SNSに関しては、認知獲得からロイヤルティ向上までのフルファネル施策を設計しやすく、デジタルマーケティング戦略の中でも最重要視しています。当社の場合、LINE公式アカウント上でのサンプル申し込みの受付や、製品を使い続けることで健康への効果を実感できるようなネイティブアプリを用意して、認知拡大からロイヤルティ向上までのコミュニケーションを設計しています。

 他社SNSと比較した際、LINEは9,300万人に情報を届けられる圧倒的なリーチ力が大きな魅力です。また、そうしたリーチ力がありながら、トーク画面という閉じた空間でお客様とOne to Oneのコミュニケーションが取れることにもメリットを感じています。

LINE上の“一等地”に動画広告を配信できる魅力

MZ:ネスレ日本様は電通デジタル様協力のもと、2021年12月からLINEが提供する「Talk Head View Custom(以下、THVC)」を活用したと伺いました。THVCの概要や既存サービスである「LINE広告」や「Talk Head View(以下、THV)」との違いについてお教えください。

成田:LINE広告は、LINEアプリ内のトークリストやLINE NEWS、 LINE VOOMの他、LINEの各種ファミリーサービスに広告が配信できるサービスです。9,300万人にリーチができることが大きな強みで、運用型広告のため予算に合わせて少額から運用することができます。

配信面
LINE広告の配信面の一部
※LINE広告の配信面は選択できません

成田:また、THVCのリリース前から販売していたTHVはトークリスト一覧の最上部に位置するトークリスト面に動画広告や静止画広告が配信できる予約型広告です。LINE広告では静止画のみトークリストに配信ができますが、THVは静止画をタップすると、配信枠が拡張して動画を再生することができます。

 トークリストは、1日あたり6,500万人(2022年4月実績を参考)にリーチできる、いわばLINE上で最もアクティブ率の高い“一等地”と言うべき配信面です。トークリストに動画広告を配信できるTHVはブランディングなどの観点から大きなメリットである反面、価格帯がグロス価格1,000万円から実施可能であったり、配信期間設定が1日であったりと、出稿ハードルの高いメニューでもありました。

 一方、THVCは運用型広告のため、配信期間、細かなターゲティング、フリークエンシー上限の回数などを自由に設定することができます。ネット価格50万円からと比較的、出稿を検討いただきやすい価格帯であり、LINE広告とTHVの良い部分を掛け合わせたサービスです。

THVCとTHVの比較
【クリックすると拡大します】
THVCとTHVの比較

MZ:THVCを活用した背景についてお教えください。

森嶋:ブランディングに有効な動画広告を運用し、認知拡大はもちろん、その先の新規獲得に結び付けたいと考えていました。しかし、成田さんに説明いただいたようにTHVは予約型かつ予算規模が大きい、という点が当社にとっても活用のハードルとなっていました。

 また、当社商材の場合、キャットオーナー様へのターゲティングができないと、その時点でROIが合わなくなってしまいます。THVCの導入を決めた2021年12月時点ではLINE広告でもまだキャットオーナー様に特化したターゲティング機能がなく、獲得効率の観点からハードルを感じていました。

山田:そうしたご要望をネスレ日本様にいただき、提案したのがTHVCでした。細かなターゲティング設定、すなわち配信の上で考慮すべきキャットオーナー様と思しきユーザーへのターゲティングを実現しつつ、トークリストに動画広告を配信したいという要望に同時に応えられるという点で、THVCが最適な広告メニューだと考えました

LINEのサービスを横断したデータ活用による柔軟なターゲティング

MZ:ネスレ日本様ではTHVCを活用してどのような取り組みを行っていますか?

森嶋:THVCで認知拡大を目的とした動画を配信し、動画をタップすると「ピュリナ ワン」のLINE公式アカウントの友だち追加画面へ遷移するようにしました。その後トーク画面内のメッセージあるいはリッチメニューからサンプルの申し込みができるようにしています。

ネスレ日本の取り組み
【クリックすると拡大します】
THVCを起点にLINE公式アカウントを活用して、 認知拡大から新規獲得までを目指したネスレ日本の取り組み

森嶋:また、THVCの動画を視聴したユーザーやLINE公式アカウントの友だちに類似した属性のユーザーにも再度THVCで静止画広告を配信(リターゲティング)し、LINE公式アカウントの友だち追加を促しました。静止画広告を配信する際のターゲティングは細かくセグメントを分けて設定し、その後の友だち追加やサンプル申し込みなどのコンバージョン数を検証しています。

MZ:動画からサンプル申し込みページへ直接遷移させるのではなく、LINE公式アカウントを経由するステップにしたのはなぜですか?

森嶋:LINE公式アカウントの友だち追加がお客様のロイヤルティの向上につながるからです。当社の場合、LINE公式アカウントのリッチメニューにおいて製品診断コンテンツやネイティブアプリをご用意しています。また、LINE公式アカウントの友だち属性や、配信したメッセージの開封・クリックデータをTHVCの配信に活用でき、友だちとなったお客様と継続的にコミュニケーションを取ることで、長期的に良い関係を築くことができます。

MZ:今回の施策にあたってどのようなKPIを設定しましたか?

森嶋:ブランディング広告においてはブランドのリフト値とリーチ効率ですね。リフト値では、広告接触者と非接触者を比較した場合の、名称認知、特徴認知、好意度、購入意向の4項目を見ています。ダイレクトレスポンス広告においては、サンプルの申し込み数とCPA(顧客獲得単価)を設定しています。

MZ:配信効果を高めるためにどのような工夫をしましたか?

山田:キャットオーナー様に広告を届けつつリーチを最大化することが最重要課題であるため、ターゲティングの内容を重視して広告配信の対象をしっかりと定義付け、セグメント配信ごとの効果効率の検証を行いました。

 THVCではまず、「LINE公式アカウントの友だちに類似した属性の方」に動画広告を配信しました。配信内容に関しては、動画を視聴するユーザーは商品認知や理解が浅い潜在層であることを想定し、いきなりサンプルの申し込みを促す広告は難しいと考えました。

 そのため、キャットオーナー様の興味関心に寄り添う内容、たとえば「猫の健康に必要な水分は意外に多い」といった気づきを与えてアテンションを取り、「ピュリナ ワン」が啓発するドライフードとウェットフードを組み合わせた食事スタイル「ミックスフィーディング」による自然な水分摂取が、愛猫の健康を維持する、というストーリー展開の動画を配信しました。

実際の配信に使用した動画

山田:また、それらの動画を視聴したユーザーを対象に、THVCで再度静止画広告を配信(リターゲティング)し、サンプル申し込みを促す直接的な訴求を行いました。配信セグメントとしては、「動画を3秒以上視聴した方」「動画を視聴完了した方」のほか、「過去に“ピュリナ ワン”のLPを訪問した方」、「サンプル申し込み者を種とした似た属性の方(類似配信)」などにも配信し、効果に違いがあるか検証しました。

 こうした設計でも「サンプル申し込み者を種とした似た属性の方(類似配信)」への配信にLINE公式アカウントの併用が生きています。過去に無料サンプルを申し込んだ方は直接の配信対象から除外しつつ、その申し込み者のデータを基に類似配信をして獲得を拡げる、といった柔軟なターゲティングができました

 今回実施した施策を通じて、ユーザーのコミュニケーション深度に合わせて広告を届けられる点、ブランディング施策に触れた=将来の顧客になり得るユーザーに対して、ダイレクト施策につなげられる点など、フルファネルのマーケティング支援でTHVCの有用性を実感しました。

THVC活用で特長認知は1.4倍、リーチ効率は3倍に

MZ:具体的にどのような成果が得られましたか?

森嶋:まず、THVCの活用について、名称認知、特徴認知、好意度、購入意向の各軸でリフト値を測った結果、すべての項目で着実に向上していることが確認できました。

 「ピュリナ ワン」の第一想起を目指す上で特に重視していた、特徴認知の増加度は最も高く、広告の非接触ユーザーと比較して接触ユーザーは1.4倍となりました。この結果から、今回の施策は想起率の向上につながったと考えています。また、リーチ効率においては、同じターゲットを設定した他SNS媒体と比較して、3倍程度という結果が得られました。

広告配信結果
【クリックすると拡大します】
特徴認知は態度変容調査、リーチ効率は広告配信結果よりそれぞれ計測

森嶋:さらにTHVCの動画広告に接触したユーザーに対して再度配信しているTHVCの静止画広告(リターゲティング)においても、THVCが持つターゲティングの柔軟性を活かし、予算規模内かつ想定CPA以下での運用ができています。

MZ:先ほど、動画視聴を起点とした静止画広告のセグメントについてお話がありましたが、その成果についてもお教えください。

山田:「LINE Ads Data Hub(以下、LDH)」という分析ソリューションを活用することで、ターゲティングごとのコンバージョン率や友だち追加率を詳細に検証することができます。今回は、動画と静止画広告の重複効果を検証しました。 

 結果として、THVCで配信した動画と静止画、両方の広告に接触したユーザーの友だち追加率やサンプル応募率は、静止画広告のみに接触したユーザーよりも約3倍高いという成果が出ました。

 さらに、静止画広告の配信(リターゲティング)で採用したセグメント別の効果については、「動画を視聴完了した方」が最も数値が良く、友だち追加率は「動画を3秒以上視聴した方」や「過去に“ピュリナ ワン”のLPを訪問した方」と比較して2倍程度高い、という結果が得られています。サンプル応募率についても、「動画を視聴完了した方」は「動画を3秒以上視聴した方」と比較して約1.6倍、「過去に“ピュリナ ワン”のLPを訪問した方」と比較して約3倍高いといった、如実な成果が現れています。

 上記の成果を踏まえて、THVCはターゲティングの柔軟性、圧倒的なリーチ力を備えた上でのブランディング施策、ダイレクト施策双方の展開が可能で、確かなマーケティング効果も実感する事ができました。

マーケティング戦略の柔軟性が向上

MZ:THVCを活用した所感や、新たな気づきがあればお教えください。

森嶋:取り組み後の所感としては、事前の期待値が十分に満たされたと感じています。

 LINE公式アカウントの運用データやTHVCの動画広告配信データを、その後の静止画広告へのターゲティングに活用し、その結果をLDHで分析するという流れを設計することで、マーケティング戦略の柔軟性が格段に向上しました。今まで活かしきれていなかったLINEのポテンシャルを引き出すことができたと思います。

 当社では「ピュリナ ワン」以外にもキャットフードブランドを展開していますが、その多くはターゲットが明確なブランドです。今回の事例を社内で共有したところ、「是非活用してみたい」と声が上がっています

MZ:最後に一言ずつお願いいたします。

成田:今回のTHVCの配信で、従来のサービスでは実現するのが難しかったリーチやターゲティングにおける課題をクリアし、ネスレ日本様の事業成長に少しでも貢献できたのなら嬉しく思います。LINEがリーチできるユーザー数の多さとTHVCのスペック、LDHによる検証分析を合わせて活用することで、今後も電通デジタル様とともに、ネスレ日本様に対して総合的なバリューを提供してまいります。

山田:今後、リターケティングを強化していく上で、より画期的なターゲティング方法を模索していきたいと考えています。たとえば、コンバージョンした方の興味・関心を複合的に掛け合わせることで、ターゲットの解像度を上げ、リーチを拡げつつ確度も高められるなど、より効果的なターゲティング方法によってクライアント企業の支援を続けていきたいと考えています。

森嶋:今回はマーケティング施策の上流にあたる認知獲得から、下流の新規獲得まで一貫した取り組みを行うことが目的でした。今後はリピート購買の促進やロイヤルティアップについても深掘りしていけたらと思います。

「Talk Head View Custom」については下記より詳細がご覧いただけます。

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この記事の著者

坂本 陽平(サカモト ヨウヘイ)

理系ライター、インタビュアー。分析機器メーカー、国際物流、商社勤務を経てフリーランスに。ビジネス領域での実務経験を活かし、サイエンス、ODA、人事、転職、海外文化などのジャンルを中心に執筆活動中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2022/12/16 10:29 https://markezine.jp/article/detail/40543