セグメンテーションの落とし穴
セグメンテーションを行う際には、ユーザーを性別や年齢、商品の使用頻度で区切り、ポテンシャルの大きい市場を見つけるだけでは不十分です。
ユーザーをセグメント化するための切り方が適切ではないと、狙うべき市場を見つけ出すことができないからです。
たとえば、カレールーを販売するメーカーのマーケティング担当者だとします。
カレーを月1回食べるユーザーを想定ターゲットとしたときに、レトルトカレーユーザーや外食のカレーチェーンユーザーといった形でセグメント分けしてもなかなかうまくいきません。
これは、調理をすることなく気軽に食べることができるレトルトカレーのユーザーや、外食カレーチェーンのユーザーは、カレールーを使って調理するユーザーとは異なるセグメントに属しているためです。
スーパーにおけるカレールーの売上を伸ばす場合、自宅での調理を想定しなければならないため、実際にセグメント分けをするときは、近くの棚に並んでいるシチューの素や、マーボー豆腐の素を普段から買っている層を考慮する必要があります。
該当の商品のセグメント分けをするときに、実際にどういう人が買っているかを考慮することが大切ということです。
そのためには、実店舗で販売している商品は、実際に店に足を運んでセグメンテーションを行わないと失敗してしまいます。
優秀なマーケターほど、店舗に足を運び、生の情報を仕入れています。カレールーを購入しにいこうとしたときに、レトルトカレーとカレールーは実際には近くに並んでいないことに気づきます。カレールーはシチューの素と並び、レトルトカレーはカップラーメンと並んでいることが多いです。
自分の知識だけでセグメンテーションを行うと危険ですので、できる限り一次情報を取りに行くことを心がけましょう。
実店舗で販売していない、たとえばEC限定の商品であっても、優秀なマーケターは競合商品を含めて徹底的にリサーチを行い、1ユーザーとして購入体験をしてみて、自分自身がセグメンテーションに入っています。
実際に購入してみると、メールや商品と一緒に送られてくる同梱物にマーケティングのヒントが隠されていることも多く、ネット上の検索だけでは分からない発見があります。
実際に自分自身の手や足を使って、自分の目で確認したものを信じてセグメンテーションを行いましょう。
セグメンテーションの段階では、ペルソナに入り込まない
セグメンテーションを行ったときに、「ペルソナも一緒に作り込んだほうがいいでしょうか?」という質問をいただくことがあります。
ペルソナは、想定した顧客の具体的な人物像を描く作業です。
たとえば、少し安価なスポーツカーを販売する際に、「ペルソナとしては30歳前後の独身男性、職業は経営者もしくは外資系金融機関勤務、年収3,000万円以上もしくは資産1億円以上、東京都港区もしくは渋谷区在住、タワーマンション(賃貸)に在住し、近所の月極駐車場を借りることが可能、過去に500万円以上の値段の車の購入経験はない、年に2回は野外音楽フェスに通う、お酒は近所のバーに週2回通っている」といった、見込み顧客の属性や生活習慣を想定します。
セグメンテーションの段階でペルソナを作り込むことは意味がないわけではありませんが、セグメンテーションは市場の規模感を把握するために行うもの。マーケティング施策を考えるために必要なペルソナ設計は、この段階では必要ありません。
セグメンテーションの段階で行うべきは、ペルソナを作り込むよりも先に、ターゲットとして適切かどうかを確認することです。セグメンテーションは公的な統計データや、信頼がおける調査結果をもとに分類するため、ある程度客観的な数値を算出することができます。
たとえば、コンビニで売る商品のペルソナを考えるときに、日本に1万人しか存在しないようなペルソナを考えてしまっては、ペルソナを作る以前に、そもそもそのターゲティングが正しいか考える必要があります。
他にも、子供向けのプロダクトを考えるときに、「夫が年収1,200万円、妻が年収800万円で世帯年収2,000万円をターゲットにします」といっても、果たしてそのような世帯がどれだけの数あるでしょうか。
その意味で、現実感のあるペルソナを作ることは、実は非常に難しいのです。
