推進チームが発足し、ブランド横断でCX改善に取り組む
──今回は、TSIホールディングスさんのブランドを横断して行っているCX改善のお取り組みについてお聞きしていきます。まず自己紹介をお願いできますか。
菊池:私は2014年に、統合前のTSI EC ストラテジーに入社しました。当時はエンジニアとしてアパレルモールサイト「MIX.Tokyo」を立ち上げました。現在はTSIでWeb接客やマーケティングオートメーション領域を担当しています。
片岡:TSIの片岡です。2012年にTSIブランドの一つであるナノ・ユニバースに入社し、Web戦略部に異動後はCRM担当としてマーケティングに携わりました。TSI統合後はブランド横断でMAを推進しています。
高杉:プレイドの高杉です。カスタマーサクセスとしてKARTEの導入をサポートしています。KARTEの使い方のご支援はもちろん、事業インパクトが出せる体験設計を一緒に考えています。
岩田:私は2020年にプレイドに入社し、カスタマーサクセスとしてTSIさんを支援してきました。2022年からはマーケティングチームに異動し、KARTEが企業の皆様に貢献できる方法を模索しています。
──KARTEを知ったきっかけを教えてください。
菊池:「Web接客」という言葉が広がってきた2015~6年頃に、トライアルでKARTEを導入したのがきっかけでした。最初は「Web接客のポップアップを出すツール」という認識しかなく、セールの告知をポップアップで出すような使い方しかできていなかったと記憶しています。その後KARTEにさまざまな機能が追加され、社内で活用が進んできました。
2020年には、ブランド横断での推進チームが発足。KARTEを活用した成功事例を他のブランドにも横展開し、全社的なプロジェクトになっていきました。
ブランドを横断し、成果が出やすい体制に
──すでにKARTEを導入・活用されていながら、2020年にプロジェクトチームを立ち上げられたのですね。当時、どういった課題があったのでしょうか。
菊池:TSIホールディングスでは「ナノ・ユニバース」「JILL STUART」など、50 以上のアパレルブランドを展開しています。当時は、一部のブランドでKARTEを活用したCX改善の成果が出始めていましたが、全社横断での活用ができていない課題感がありました。2020年は、TSIホールディングスのグループ再編・統合が発表された年です。
各ブランドで担当者のスキルやリソース状況も異なるなか、KARTE導入の8サイトを中心にどのように同じ方向を向いて成果を拡大していくか。KARTEを軸にTSI全体を考える横串の専門チームで考えることになりました。
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ナノ・ユニバースを中心に、CXの高速PDCAを回す
──具体的な取り組みについてうかがえますか。
菊池:プレイドさんから提供いただいたアパレルの鉄板シナリオの実装から始めました。その後は、アンケートやルーレットなど施策の幅を広げ、A/Bテストを繰り返しながら成果を改善していきました。
──プレイドさんはどんなサポートをされたのでしょうか。
岩田:TSIさんが実施する施策や結果、関連する疑問点などを一覧にまとめてくださっています。一覧を見ながらKARTEでできることを提案して、次のアクションを定めていくといった支援を行っています。A/Bテストは数え切れないほど実施しましたよね。
菊池:そうですね。おかげで開始から1年半ほどの現在で、15例もの成功事例を作ることができました。
──印象に残っている事例を教えてください。
片岡:カートページに閲覧履歴を表示するよう変更した事例の印象が強いです。ナノ・ユニバースのサイトは、カートの保持期間が短く、1時間ほどでカートの中身がリセットされてしまいます。そのためユーザーが商品をカートに追加して一度離脱し、戻ってきた時にはカートは空になってしまいます。もう一度探し直すことが煩わしく、そのまま離脱してしまうという課題がありました。
そこで、カートページに閲覧履歴を表示するという施策を展開したところ、購入率が500%以上改善しました。KARTEのシナリオストアからインストールするだけで簡単に実装できたので、これは絶対にどのブランドでも実施した方が良いということで、成功事例の一つとして横展開を見据えています。
岩田:TSIさんは複合的に仮説を立てていらっしゃいます。カート落ちの対策という「点」ではなく、「離脱した後に悩んで戻って来る人もいる」などと顧客の行動を「線」で捉えているからこそ、成果が出るのだと思います。
n=1の課題から、CXを改善
──他の成功事例も教えていただけますか。
片岡:MIX.Tokyoでは、毎週チームでテーマを決めて、顧客体験の改善点を洗い出しています。
KARTE Liveという、ユーザーのサイトでの行動を録画・視聴する機能を活用し「ページを見たが購入に至らなかった」ユーザーに焦点を当てて分析していたところ、「商品の品番で検索をしているお客様」を見つけました。
片岡:MIX.Tokyoはコーディネート検索とアイテム検索で検索窓が分かれているのですが、お客様は、商品の品番をコーディネートの検索欄に入力していたんですね。そのまま離脱される様子を見た時に「正しいところで検索すればアイテムが表示されたのに」と、もどかしい気持ちになりまして。
そこで、コーディネート検索の窓に品番を入れて結果が0件だった場合に「アイテム欄に入力してください」と、ご案内を出すようにしました。結果、約50%も購入率が高くなるという結果となりました。
こういった仮説検証が直感的に行えるだけでなく、スピーディーに施策の実行まで行えるのがKARTEのいいところです。
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組織横断でCXを改善、土壌となる文化作りとは
──ブランドを横断したCX推進では、どのような取り組みをされたのでしょうか。
菊池:最初は勉強会を開催しました。プレイドさんをお招きし、各ブランド担当者を集め、正しいWeb接客や失敗パターンなどを複数回にわたって解説いただきました。我々が提供したい顧客体験について認識を統一することに注力しました。
また、プロジェクトチームと各ブランド担当者の距離を縮めるべく、社内チャットのグループを作りました。そこで成功事例の資料や実際のスクリーンショットなど、具体的なKARTEの設定方法なども共有。担当者が設定に困った場合は、私が間に入ってプレイドさんへ質問し、答えが出るまでサポートをしました。
その積み重ねが信頼感を生み、各ブランド担当者が気軽に質問をくれるようになりました。上司からの「ポップアップ出しすぎ」といった指摘もなくなりましたね。加えて、「KARTEでこのキャンペーンを実現できるか」といった相談が活発に来るようになり、大きな成果だと思います。
──他にプレイドさんはどういったサポートをされているのでしょうか?
高杉:最近ではブランド横断の定例会をスタートしたのですが、KARTEを活用する中での不明点を解消したり、CXに関する課題に対してアイデアを提案したりと、壁打ちが中心になっています。
菊池:ブランド横断の定例会をやろうと思ったのは、今まではどうしてもMIX.Tokyoとナノ・ユニバースの成功事例を発信するだけの一方通行になっていたからです。そこで、ブランドを横断して課題を解決し、成功事例を共有し問題を解決する場を作ろうと、定例会を始めました。
──どんな変化がありましたか。
高杉:始めたばかりの取り組みなのですが、各ブランド担当者の方々の積極性に驚きました。相談や意見がたくさん出て、時間が足りないほどです。TSIさんの中で、勉強会や成功事例のアウトプット、各ブランドへのフォローなどを通して、CXに対する意識や「色んなトライができるツールなんだ」という期待値の醸成があったからこそだと感じています。
片岡:今までも各ブランド担当者は、KARTEについてきちんと理解したいという思いがあると感じていました。勉強会を通じ、オンラインのCXにより積極的に仮説検証を行っていただいています。
各ブランドへの成功事例を展開し、独自のCXを醸成
──今後の展望や展開を教えてください。
菊池:まずは、各ブランドへの成功事例の横展開を加速していきたいです。そして実装までのスピードも上げていきたいと考えています。現在、インパクトの大きい2事例を、4~5ブランドに横展開してA/Bテストを開始した状況です。
また、TSIではオンラインとオフラインを融合させ、顧客体験の向上を目指す「OMO戦略」をとっています。今後は、商品マスターや顧客情報をKARTEに連携してより細やかな施策設計したいです。今は先行してMIX.Tokyoとナノ・ユニバースで取り組みが始まっていますが、成功事例も増やしていき、各ブランドへと広げていきたいです。
高杉:今後は他のブランドさんからも成功事例が出てくると思うので、さらなる顧客体験を議論しあえる環境にしていきたいですね。
また、いずれは各ブランドのアイデンティティを際立たせたCX設計ができるように、各ブランドに沿った独自のブランド体験作りを支援したいと思います。
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