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【特集】2022年の急上昇ブランド~本質的なブランディングの核に迫る~

事業成長を通じて社会課題を解決する。味の素グループが全社で取り組んできた「ASV経営」の現在地

アクションをベースにパーパスを根付かせる

──ASV経営やパーパスブランディングを従業員に根付かせるために、どういった取り組みをされていらっしゃるのですか?

森島:ASVを社内へ浸透させる活動として「自分ごと化」するためのマネジメントサイクルを展開しています。先ほどのとおり、まず従業員が納得しないと、始まらないわけです。そこで、「理解」「共感」「実行」「改善」という4つのステップでサイクルを回しています。

 理解納得のためには、年初にCEOや本部長と部署ごとの対話を実施して、どんなことでも質問できる場を設けています。経営方針を自分で咀嚼して納得するステップです。その後に個人目標発表会という形で、部のメンバーの前で自分の年間の目標を表明します。同じ部でもどんな仕事をしているか知らないメンバーもいるので、この会をきっかけに連携やディスカッションが生まれるんです。

 こうして経営と自分の仕事に納得・共感したら、実行に移します。その結果は「ASVアワード」で評価、表彰されます。これがいわゆる業績表彰と異なるのは、売上の向上など経済的な成果だけではなく、社会課題への貢献とそのプロセスも評価する点です。役員と社外の審査員に加え、最近では従業員も投票します。あとは年1回のエンゲージメントサーベイでレ ビューをして、改善につなげていっています。この活動は、経営企画や人事、グローバルコミュニケーションなどから若いメンバーが集まって、ASVエンゲージメントチームとしてタスクフォース的に推進しています。

 それから、ASVの取り組みは、WorkplaceというFacebookの社内版のようなツールを使ってインターナルに発信されていて、これがすごく奏功しています。世界中の全社員約3万4,000人のうち、現在2万2,000人がアクセス可能であり、私も「この国ではこんなことをやっているんだ」と知る機会になります。気軽にいいねやコメントができるので盛り上がりますし、上司に報告書を上げるのとは違うコミュニケーションになっていると感じます。

──全社的な取り組みをここまで前進させる中で、難しかった点はありましたか?

森島:様々な事業をグローバルに展開しているからこそ、どうしたら従業員皆が同じ方向を向いて一つになれるかは、苦慮しました。CMの最後に必ず「Eat Well,  Live Well.」とありますが、食に関係ない事業もあるわけです。たとえば、大手化粧品会社にアミノ酸を提供していたり、医薬品の原材料としてアミノ酸を提供したりしています。この分野の従業員は「Eat  Well, Live Well.」だけじゃピンとこないかもしれませんが、「アミノ酸のはたらきで食と健康の課題解決企業になる」というパーパスの下では束ねられる。まだ進行中の部分もありますが、パーパスを共有することで一つの方向にまとまりつつあると思います。

 あとは、コーポレート軸のコミュニケーションは事業軸と比べて難しいですよね。「こんなことを考えている会社ですよ」と思想だけ言っても人々の心に届かない。生活者に本当に共感してもらうために、アクションをベースにしたコミュニケーションを心がけました

 たとえば、栄養の取り組みでは「おいしさ」「食へのアクセス(あらゆる人に栄養を届ける)」「地域や個人の食生活」の3つを妥協しない“Nutrition without Compromise”(妥協なき栄養)という考え方で推進していますが、企業メッセージ広告ではASEAN・北米・ブラジルそれぞれの従業員がこの考え方に沿って実際に行っている取り組みを紹介しました。従業員が広告に出演して自らの取り組みを紹介するのはとても効果的だったと思っています。

──最後に今後の展望をお聞かせください。

森島:「アミノ酸のはたらきで食と健康の課題解決企業になる」という大きなパーパスに対して一定の評価をいただいている一方で、まだまだ「味の素=調味料の会社」というイメージも強いです。健康や環境面でも世の中に貢献している会社だと認識されるために、先ほどのとおりアクションをベースにサステナビリティのメッセージを発信していく必要があると思っています。

 そして、10年20年後も会社が成長するためには、これからの世代を巻き込んでいくことも重要です。新しいコンテンツやコミュニケーションの手法を探りつつ、若い世代と価値を共創することも大きなテーマです。既に「味の素グループダイアログフォアザフューチャー(ADF)」という当社の若手従業員と社外の若手起業家との挙手性の研修プログラムをスタートしています。

 サステナビリティは「やらなきゃいけないこと」というイメージがありましたが、ADFを通じて「ワクワクできるもの」だと、サステナビリティに対する捉え方が変わりつつあります。次の世代がどんな形で会社を引っ張っていくのか、楽しみにしています。

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この記事の著者

岡田 果子(オカダ カコ)

IT系編集者、ライター。趣味・実用書の編集を経てWebメディアへ。その後キャリアインタビューなどのライティング業務を開始。執筆可能ジャンルは、開発手法・組織、プロダクト作り、教育ICT、その他ビジネス。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/12/20 09:30 https://markezine.jp/article/detail/40753

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