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「インバウンドの思想」をマーケティングに~実践事例とその思考プロセス~

参加者は「リード」ではなく「人」である。HubSpotに学ぶ、成果に繋がるインバウンドなイベント作り

 インバウンドの思想と、その施策を実践する方法を具体的にご紹介する本連載も5回目となります。第5回のテーマは、「マーケティングイベント」についてです。今回はHubSpotでマーケティングイベントを担当するシニアマーケティングマネージャー長島茜が、これからの時代に求められる、イベント企画および実行のポイントについてお伝えします。

「フライホイール」を起点に考えるマーケティングイベント

 コロナ禍を経て、マーケティングイベントの形は大きく変化しました。オンラインを活用したウェビナーや、リアルとオンラインを併用するハイブリットな形でのイベント開催は、もはや当たり前のイベント形式として多くの企業が取り入れています。

 私たちHubSpotも、年間を通して様々なイベントを開催しています。毎月平均4回実施している、業務の課題解決にヒントを提供するウェビナー(オンラインセミナー)の他、1つのテーマを掘り下げて思考する場所を提供するイベント(例:「企業のオペレーション業務」というテーマに特化して開催した「Ops Day」)、米国ボストンで開催している年次イベント「INBOUND」、コミュニティーのミートアップなど、目的に合わせて様々な規模・形式でイベントを展開しています。

 この記事では、私が担当するイベント施策のうち「ウェビナー」を中心に、「参加者を惹きつけ、満足してもらうインバウンドな自社イベント」を実施する際に大切にしている考え方と企画プロセスについてご紹介します。

 本連載の第4回、「インバウンドなコミュニティー」の記事でもコミュニティー運営の鍵として「フライホイールモデル」をご紹介しました。フライホイールは、HubSpotがインバウンドを実践する際に基本としている考え方で、このフライホイールに沿ったコミュニケーションを重要視しているのは、イベントの企画・実施においても同様です。

HubSpotの「フライホイールモデル」

 一般的にはAttract(惹きつける)がマーケティングの役割であり、Engage(信頼関係を築く)が営業の役割だと捉えられることも多いのですが、HubSpotでは、「マーケティングの部署がやるのはAttractのみ」という考え方はしていません

 一つひとつのイベントやウェビナーにおいて、相手を惹きつけるだけではなく、時間を投資して没頭するに足るコンテンツを提供し、満足してもらうことが大切だと考えているのです。

「リード」創出だけを軸にすると、次のアクションにはつながらない

 ここから、この考え方に基づいたイベントの企画と運営のポイントをご説明します。フライホイールのフレームに沿ったイベント企画には、次の4つのプロセスがあります。

  1. ゴールの設定:インバウンドの基本「徹底的な顧客視点」
  2. コンテンツの設計:「Attract(アトラクト=惹きつける)」のステージ
  3. 当日運営の設計:「Engage(エンゲージ=信頼関係を築く)」のステージ
  4. 事後フォローのコミュニケーション設計:「Delight(ディライト=満足させる)のステージ

1.ゴールの設定:インバウンドの基本「徹底的な顧客視点」

 皆さんはどのような目的でマーケティングイベントを企画しているでしょうか。「リード(見込み客)」や商談の創出をイベントのゴールとして設定されるケースが多いのではないでしょうか。マーケティング施策である以上、イベントには投資に見合う効果が求められるのは当然のこと。しかし、「リード数の創出だけを目的として企画されたイベント」と、「参加者に価値のあるコンテンツが提供され、結果としてリードが多く創出されたイベント」は、似ているようでいて、参加した人の体験が大きく異なります

 たとえば、集客数を伸ばすためだけに、キャッチーなイベントタイトルをつけたり、必要以上に広い領域でのテーマ設定をしてしまうと、結果的にイベントの内容が参加者の期待に追いつけず、イベントの内容も主催の会社のことも参加者の心には残りません。

 その状態で「リード」として営業担当に引き継がれ、イベントの内容や属性を無視した営業電話がかかってくる。参加者にとっては迷惑な営業電話となってしまい、企業側にとっても、せっかく生まれた顧客との接点をその後につなげることができません。このように、リード創出だけを軸にしてイベントのコンテンツを作ると、参加者に満足してもらうのは難しく、結果として「自社との関わりを一歩進めてもらう」という次のアクションに結びつきにくいのは想像に難くありません。

 たとえばHubSpotでもMQL(Marketing Qualified Lead)の数をイベントの一つの成果指標としていますが、「参加者にとって価値があったか」を測るため、単に参加者数を「MQL」とするのではなく、イベント終了後に「営業と詳しく話したい」「デモに申し込みたい」とご自身から意思表示した参加者のみを「MQL」と設定することにより、イベント主催企業としてイベント集客という「点」のみを追うことがないよう工夫しています。

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この記事の著者

長島 茜(ナガシマ アカネ)

HubSpot Japan シニアマーケティングマネージャー。富士通株式会社にて自動車会社をはじめとした製造業向けシステム運用のSEやプロジェクトマネージャーに従事。その後2015年より米国シリコンバレーのスタートアップであるHouzzの日本法人立ち上げメンバーとして参画し、インサイドセールス、セールスオペレーショ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/12/08 08:00 https://markezine.jp/article/detail/40754

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