メタバースなのに行列?リアルに溶け込む将来に向けて
河田氏はさらに、ECサイトとメタバースの棲み分けについて深掘りした。
「ユーザーとの関係を構築するための最初のタッチポイントとなり得るのがECサイトであり、メタバースはその先にある、企業とユーザーとの関係性をより強める段階に活用できるのではないかと考えています」(河田氏)
この棲み分けが可能なのは、メタバースが商品検索や購買といった機能優位ではなく、体験の提供に強みを持つからこそだといえるだろう。
メタバースだからこそ提供できる体験価値について、河田氏はREV WORLDSで実施した事例を複数紹介した。ユニークな事例として紹介されたのは、吉本興業所属のお笑いコンビEXITがプロデュースするアパレルブランド「EXIEEE」のブースだ。
実際にリアルでアパレルグッズを販売している「EXIEEE」のREV WORLDS内のブースでは、リアルで売られている商品をデジタルウェアに転換したものや、EXITのアバター、REV WORLDSオリジナルアイテムなどを配布している。

ブース内で一番人気だったのは、予想外にREV WORLDSオリジナルアイテムだった。そこから、ユーザーが実際に好むデザインの傾向が見えてきたという。
「個人的におもしろいと思ったのは、ブースに立っているEXITのアバターと同じ格好をして写真を撮るファンが多数いらっしゃったこと。そのアイテムが人気になった理由がうかがえました。
同時に印象的だったのは、運営から特に働きかけていないのに、写真待ちのためにファンの方が自然と列を作って並んでいたことです。バーチャル空間なのに行列ができているのは不思議だなと思いましたし、やはりリアル空間に近い環境なんだと感じました」(河田氏)
最後に紹介したのが、三鷹小学校と協業して実施した「バーチャルファッションショー」(2022年3月22日~4月19日開催)だ。

三鷹小学校に在籍する小学生が考えたデザインをデジタルウェアとして構築し、ファッションショーを開催。先述したとおり、デジタルウェアはリアルのアパレルと違ってコストがかからず自由度も高いため、小学生が考える未来のファッションを提示できた。
「5年後にはメタバースは一般的に利用されるプラットフォームになっていると思います。今の子供たちが成人した頃には、当たり前に生活に溶け込んでいる存在になっているだろうなと。この数年間での技術の進歩は目覚ましいし、より加速していくはずです。これはリテール業界にとってチャンスです。メタバースをどのように活用すればユーザーにより良い体験を提供できるのか、私たちも考え続けていきたいですね」(河田氏)