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日本コカ・コーラとインフキュリオンが推進するオリジナルPay「Coke ON Wallet」とは

 日本コカ・コーラは、公式アプリ「Coke ON(コークオン)」の新機能として、自販機で使える電子マネー「Coke ON Wallet(コークオン ウォレット)」をリリース。そして、システム開発から運用にかけて、パートナーとして参画しているのがインフキュリオンだ。本稿では、両社担当者に自社で決済システムを開発することで広がるUXの可能性などについて語ってもらった。

DL数4,000万回を突破したアプリ「Coke ON」

MarkeZine編集部(以下、MZ):はじめに、お二人のご経歴と現在の業務領域についてお教えください。

永井(日本コカ・コーラ):2014年に日本コカ・コーラに入社し、ロイヤリティプログラムやペイメント周りのプロダクト開発を担当しています。2016年には、自動販売機と連動したスマートフォンアプリ「Coke ON」を立ち上げました。なお、Coke ON は2022年9月時点でダウンロード数4,000万回を記録しています。

日本コカ・コーラ ベンディング事業部 シニアマネジャー 永井宏明氏

永井:Coke ONでは、スタンプ機能などアプリ独自の様々なサービスを展開していますが、そんなCoke ONに今回導入したのがオリジナルPay「Coke ON Wallet」です。お客様はCoke ON Walletの残高を消費して、ほかのキャッシュレス決済サービスと同じように当社商品をお買い上げいただけます。また、登録された銀行口座からチャージすることも可能です。

末澤(インフキュリオン):私は、2006年創業のフィンテック企業・インフキュリオンで執行役員 CPO(Chief Product Officer)を務めています。今回、日本コカ・コーラ様にCoke ON Wallet開発の際にご利用いただいたスマホ決済プラットフォーム「Wallet Station」の責任者でもあります。

インフキュリオン 執行役員 CPO 末澤慶海氏

キャッシュレス派は61% 政府「将来は80%を目指す」

MZ:昨今、企業や店舗が独自で電子マネーを開発する「オリジナルPay」に注目が集まっていると伺いました。そこで、まずは現在のキャッシュレス市場の潮流について教えてください。

末澤:2018年に政府が「キャッシュレスビジョン」として、2025年までにキャッシュレス比率を40%、将来的には80%を目指すと発表しました。直近の2021年の調査では、キャッシュレス比率が32.5%ということで、順調なペースで伸びてきていると感じています。

国内のキャッシュレス決済の利用率は2021年に30%超に

末澤:当社で独自に実施した2万人へのインターネット調査(2022年4月実施)の結果によると、現金派とキャッシュレス派の分類でも現金派が39%、キャッシュレス派が61%と既にキャッシュレス派の方が上回っています。

 しかし、キャッシュレスが普及するにつれて、企業の課題となってくるのが手数料の問題です。他社のキャッシュレス決済サービスを利用している場合、手数料は必ず発生します。さらに、売上規模が大きければ大きいほど、手数料負担もより深刻に。その解決策として、今、小売事業者を中心に注目されているのが、Coke ON Walletのような企業オリジナルの決済サービスなのです。

Coke ON Walletで“ファイナンシャルサービスを提供したい”

MZ:日本コカ・コーラでは、2022年11月にオリジナルPay「Coke ON Wallet」を導入されました。導入に至った背景を教えてください。

永井:Coke ON Wallet構想の背景にあったのは「マーケティング手段としてのCoke ONアプリのフレキシビリティをより高めていきたい」という考えでした。

 2016年にローンチしたCoke ONは、スマートフォン自販機(Coke ON対応自販機)と接続して、ドリンクを購入するとスタンプが貯まる仕組みです。要はスタンプカードで、スタンプ15個で当社製品を1本プレゼントする。値引きをモチーフにした設計になっています。

 今回、Coke ON Walletを導入することで、そうした“値引き”のみならず、幅広いバリュー提供ができるマーケティング手段にCoke ONを進化させていきたいと考えたのです。

 さらに、その先に見据えていたのは、自販機ビジネスには切っても切り離せない「小銭のデジタル化」です。これは、私が日本コカ・コーラに入社して、自販機関連のデジタルサービスの企画に携わるようになってからの長年の課題でした。

 “デジタル化”というのは「電子マネーでのやり取り」以上の意味を持ちます。たとえば、自販機で商品を購入されたお客様にお釣りを支払う際、現金ではなく、Coke ON Walletの残高としてお渡ししたり、お客様が今お持ちの小銭をCoke ON マネーとしてチャージし好きなタイミングで使っていただく──こうした“ファイナンシャルサービスを提供する”ということです。

 そうした価値提供も見据えた場合、既存の決済システムでは限界があると感じました。また、セキュリティ面や細かな課題にフレキシブルに対応するためには、オリジナルPayが最適だと判断しました。

末澤:オリジナルPayには、先程説明した「手数料負担の軽減」というメリット以外にも、永井さんがおっしゃったようにUXの向上というマーケティングのメリットもあります。

 たとえば、オフライン購買においてアプリと決済機能が分断されていると、ユーザーはクーポンやポイント利用でアプリを操作し、決済の段階で別のアプリもしくはカードや現金などを出す必要があります。それでは、一貫した顧客体験を提供できているとはいえないでしょう。しかし、オリジナルPayを導入することで、アプリで情報発信から販促、決済、ポイント付与まで分断されることなく、シームレスな顧客体験を実現できます。

 また、アプリと決済データが連携することで、データドリブン施策やCRMの観点でも活用が期待できる点もメリットでしょう。

プロダクトから運用まで一気通貫で支援

MZ:オリジナルPayの導入を進める中で、パートナー選定の決め手はどこにありましたか?

永井:インフキュリオンさんのこれまでの実績や安心感はもちろんのこと、最大の要因は、提供してくださるサービスが純粋なSaaSに留まらない点にありました。

 今回、Coke ON Walletで扱っているバリューは大きく分けて2つあります。「ポイント」と「マネー」です。「Coke ON ポイント」では、今までのスタンプ機能に加え、キャンペーンの参加などでポイントが付与され、Coke ON対応自販機にて1ポイント1円で使うことが可能です。

 「Coke ON マネー」は登録した銀行口座からCoke ON Walletにチャージできる機能で、チャージによってCoke ON ポイントも貯まる仕組みです。いずれのバリューも、ポイントの発行や運用管理などを一貫してインフキュリオンさんに担っていただいています。

Coke ON Walletの運用に関し、Wallet Stationが提供している機能の一部

末澤:当社の強みは、システムを提供するのみならず、事業の立ち上げから運用まで一貫した支援にあります。具体的には、⾃社オリジナルPayの構築‧運営に必要な機能を提供するのはもちろんのこと、資金決済法に準拠した運用など、専門知識の必要な準備や体制整備についても、総合的な支援が可能です。

 今回、日本コカ・コーラさんの場合のように、自社で既にお持ちのアプリに組み込み、トンマナを合わせてカスタマイズすることもできます。

Wallet Stationが生み出すマーケティングの幅の広がり

MZ:Coke ON Walletをローンチしてから3ヵ月が経ちましたが、どのような成果を得られていますか?

永井:今回、Coke ON Walletを導入したことで、Coke ONを基点としたプロモーション施策の幅が格段に広がったと感じています。2023年2月13日からは「コカ・コーラ社製品を買って春の新生活クッズその場で当たる!」キャンペーンを開始しています。期間中、自販機での購入に加えて自販機以外でお買い求めいただいた当社商品でも、アプリで商品のバーコードを読み込んでいただくと新生活グッズの抽選に参加でき、さらにCoke ON ポイントが必ずもらえるキャンペーンです。

アプリ上でバーコードを読み込むとCoke ON ポイントがもらえる。
自販機のみならず、コンビニやスーパー・ドラッグストアなどで購入したすべてのコカ・コーラ社製品が対象だ

永井:こういった施策も、Coke ON上でシームレスなUIが構築できていたからこそ、実現できたものです。施策を通じて、お客様に「こんなにも手軽にポイントが貯められるんだ」と実感していただく。その結果、今までキャッシュレス決済をしてこなかった方や、あまり自販機で飲料を購入されてこなかった方にもCoke ONに興味を持っていただける──そうした未来を期待しています。

末澤:企業におけるオリジナルPay導入のメリットは複数あるのですが、どちらかといえば「手数料負担の軽減」に偏っていた印象を受けます。しかし、今回のCoke ON Walletの事例から、「自社でオリジナルPayを導入することで、マーケティング施策の幅を広げることができる」そう実感していただけたら幸いです。

自社サービス×フィンテックで新たな体験提供へ

MZ:今後のお二人の展望をお聞かせください。

永井:まずは、自販機で扱っている小銭をデジタル化するプラットフォームとして、Coke ON Walletを活用していきたいと思います。「初めてのキャッシュレス体験がCoke ON Wallet」というお客様も今後、現れるでしょう。そんなお客様にCoke ON上で特別な体験を提供することで、次世代のファン育成につなげていきたいと思います。

末澤:当社の事業コンセプトとして「エンベデッド ファイナンス(組み込み型金融)」を掲げています。ビジネスやサービスを運用する以上、お金のやり取りは必ず発生します。当社では、そこにフィンテックを組み込むことで、これまで不可能だったユーザー体験を実現していきたいと思います

 今回ご紹介したWallet Station以外にも、自社サービスにVISAやJCBなどの国際ブランドカード機能を組み込むことができるXard(エクサード)というプロダクトも提供しています。「自社サービスにフィンテックを融合すると、どういった価値を提供できるのか」そういったディスカッションからでも大丈夫ですので、興味のある方はぜひ一緒に考えていければと思います。

Coke ON ポイントが必ずもらえるキャンペーンが開催中!

4月9日(日)まで開催中の「コカ・コーラ社製品を買って春の新生活クッズその場で当たる!」キャンペーンを開催中。Coke ON ポイントは必ずもらえますのでぜひご参加ください。

キャンペーンサイト

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この記事の著者

釘﨑 彩子(クギサキ アヤコ)

 2019年からマーケティング・広告の専門出版社で編集者として勤務。広報・PR分野を中心に編集業務にあたる。2022年よりフリーランスのライターに。媒体問わず、マーケティング、広報、経営者インタビューなど、ビジネス領域を中心に幅広く執筆。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2023/03/23 11:00 https://markezine.jp/article/detail/41516