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『MarkeZine』(雑誌)

第97号(2024年1月号)
特集「2024年の消費者インサイト」

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日本郵便「デジタル×アナログ」実証実験プロジェクト(AD)

共感を呼ぶDMでLTVが4割増 森永乳業とDM0に聞く「引き算のクリエイティブ」

 今回、森永乳業「森永ビヒダス 大腸のキホン」は、定期購入おまとめ配送のDMで「全日本DM大賞」の銀賞を受賞した。同社のビジョンにも掲げるSDGsを軸にした設計で、顧客の反応率は約70%と、通常のDM施策に対して約6倍の効果が出ている。本稿では、森永乳業のEC担当者と、本DM施策をともに進めたダイレクトマーケティングゼロへの取材を通し、ブランド価値の向上につなげるDM企画発想の裏側やポイントを探る。

ビフィズス菌素材で消費者の健康問題の解決を目指す

MarkeZine編集部(以下、MZ):まず、皆さまのご経歴と現在の業務領域についてお教えください。

北村:2003年に森永乳業に入社し、10年弱、赤ちゃん用ミルクや乳幼児食品の研究職に就いておりました。その後、介護食品や高齢者向けの食品の開発に携わり、現在はEC部門で、ビフィズス菌素材を使用したサプリメントの販売に関わり、CRM構築の部分で、チームリーダーを務めています。当社のビフィズス菌素材は、消費者の皆様の健康にお役に立てるとの思いから、その良さを伝えていくため、日々思案しています。

森永乳業株式会社 EC事業統括部 ECビジネス開発グループ アシスタントマネージャー 北村 有紀氏
森永乳業株式会社 EC事業統括部 ECビジネス開発グループ アシスタントマネージャー 北村 有紀氏

田村:ダイレクトマーケティングゼロ(以下、DM0)で代表取締役を務めております。私は、ベネッセコーポレーションで10年間マーケティングキャリアを積んだ後、通販化粧品会社で3年間BtoC事業の統括責任者を務めました。その後、2009年に「ダイレクトマーケティングゼロ」を設立。「世界をダイレクトマーケティングだらけにすること」をビジョンに掲げ、EC/通販におけるコンサルティングを主に、新規獲得からCRM構築まで一貫して担当しています。

山本:私は現在、DM0で、コンサルティング部のマネージャーを務めております。森永乳業さんには2021年にお問い合わせをいただき、初期のコンサルティングから担当しております。現在は、「森永ビヒダス 大腸のキホン」の商品を中心に、その事業改善についてメインで担当しています。

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(写真左)株式会社ダイレクトマーケティングゼロ 代表取締役 田村 雅樹氏
(写真右)同社 コンサルティング部 マネージャー 山本 太一氏

配送を3ヵ月分にまとめてお客様・環境・企業のすべてにお得なDM施策

MZ:森永乳業さんの「おまとめDM」について、まずは概要から教えてください。

北村:当社の主力商品「森永ビヒダス 大腸のキホン」を毎月1袋ずつ届けている定期顧客に対して、3ヵ月分まとめてのお届けへの変更をご案内するDM施策です。そこから、はがきや電話、そして専用の申し込みLPへ誘導する設計になっています。

 ポイントは、DMのコンセプトです。このおまとめ配送の案内自体には新規性はなく、定期配送事業では常套手法です。どういう切り口だと生活者に受け入られるか、DM0さんと検討を重ねて、当社が元々「SDGs消費」に力を入れていたことから配送コストや環境負荷低減を切り口にしました

実際にDMで使用した封筒、レター、ご案内リーフ、返信用はがき(左から)。ご案内リーフを使い、「おまとめ」への手続きがサステナブルな取り組みだと顧客に伝えた
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実際にDMで使用した封筒、レター、ご案内リーフ、返信用はがき(左から)。ご案内リーフを使い、「おまとめ」への手続きがサステナブルな取り組みだと顧客に伝えた

北村:使うダンボールの量も、配送に関わるCO2の量も削減でき、環境に非常に良いのはもちろん、お客様にとっても受け取りの頻度や支払いの手間も減ります。お客様にとっても環境にとっても当社にとっても、三方良しの施策になったと思っています。

新規獲得は順調、課題は継続率の向上

MZ:今回のDM企画はどのように生まれたのでしょうか。抱えていた課題感を含め、施策の背景をお教えください。

北村:当社では、EC事業部が2020年1月に発足し、新規の顧客獲得はかなり順調に改善できておりました。しかし、獲得が増えるほど継続率が課題として上がってきており、その改善を図りたいという思いが背景にありました。

 「森永ビヒダス 大腸のキホン」は、サプリメントという特性上、3ヵ月程度の長期間、毎日の継続使用をおすすめしている商品です。

 そういった点でも3ヵ月分が手元にあり、効果を感じにくい時期も飲み続けていただくことで、最終的に効果を感じていただけ、継続率向上に寄与すると考えました。また、配送頻度を減らすことで、物流費や梱包費などの配送費などを改善して、採算性を上げたいという考えもありました。

山本:私たちで「効果を実感するタイミング」についてアンケート(大腸のキホン 定期継続者へのアンケート/N=347人)をとりました。結果、1ヵ月未満では55%の方しか実感がないところ、3ヵ月から4か月未満で95%以上の方から実感があったという回答が得られました。継続率をあげる上では、今回の“3ヵ月”おまとめというのは重要なポイントでした。また、今回のDM施策でSDGs消費をコンセプトに据えたのは、森永乳業さんの中で既に取り組まれ、社会貢献への強い課題感が社内にあったことが大きかったですね。

田村:正直、おまとめ施策の中でエコを押し出すこと自体は、オーソドックスな流れではあります。それがここまで響いたのは、森永乳業さんが本気で取り組んでいる企業メッセージと今回のDM施策のコンセプトに一貫性があり、お客様の方でも共感する部分があったからこそだと思います。

田村:また、そもそもなぜ継続率が伸び悩んでいたかでいうと、新規獲得する際に「7日分ではなく、1ヵ月分でお試ししてみませんか」というご案内をしていたことで、軽い感覚の購入者を増やした点があります。というのも、試しに1ヵ月だけ使用して、効果を実感する前に購入をやめてしまう方が多数いらっしゃったためです。

 既存のおまとめのお客様は継続率が高かったため、まとめ率を上げることで継続率が上がることはわかっていました。しかし、商品が届いた後もおまとめの案内をオンライン上で行うとくどくなってしまうため、手を打てずにいました。

 そんな中で、DMであればお客様にダイレクトに届く一種の「確実性」をもった手段で、丁寧にメッセージを伝えることが問題解決につながるのではないかと考えました。

DMの反応率が驚異の7割、引き算を意識したクリエイティブ 

MZ:今回のDMのクリエイティブや設計の部分で工夫した点やポイントについて教えてください。

山本:おまとめ移行のDM施策で重要なことは2つあると思っています。1つ目は、手元に届いて見ていただくこと。次に、DMを見た後アクションを起こしていただくことです。

 1つ目の「見ていただく」という部分は、DM施策すべてにいえる最初の関門だと思います。一番見てもらえる外装ってなんだろうと考えた時に、官庁公的機関からの案内への回答率は高いらしいという話が発想の起点になり、デザインのヒントを得ました。

 実際、請求書や官公庁から届く通達などは、絶対見ないと駄目だ、と感じる方が多いのではないでしょうか。白封筒に企業ロゴと最低限の内容だけを記載し、あえてフォーマルな印象にすることで、開封率アップを狙いました。

実際に使用した封筒のデザイン
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実際に使用した封筒のデザイン

山本:2つ目の「アクションしていただく」部分は、同封した「レター」「ご案内リーフ」「返信用はがき」の3点のクリエイティブを使って促しました。特に「はがき」については、シンプルなつくりで申し込みアクションを起こしやすくしています。

 はがきによる回答の設計では結婚式の招待状から着想を得て、おまとめ配送をしますか/しませんかという2択にし、何かしらのアクションをとってもらえるようにしました。DMを受け取ったすべての人に開封していただき、半数以上の方からアクションしていただけることを目標にしていました。

実際に使用した返送用はがきのデザイン
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実際に使用した返信用はがきのデザイン

田村:クリエイティブでは、とにかく「伝える要素を引き算すること」を意識していました。どうしても開けて欲しいという思いが強すぎると引かれてしまいますし、情報量が多いと一番伝えたいことが伝わらないことになりかねません。極力無駄を落とした文章で、セールス色が出すぎない、かつSDGsに取り組む企業ビジョンが背景として明確に伝わるよう作成しています。さらに、ALL再生紙でSDGsを体現している一貫性も意識しました。

山本:また設計の面では、チャネルをミックスして使っていただいたのが一番のポイントです。はがき、QR、FAX、電話、Eメールと、オンライン/オフライン問わず、すべてのチャネルを全網羅的に用意しました。アナログなDMという手段から、デジタルを連動させ、DM到着5日目と最終日にステップメールを2通送付しました。このようになるべく手間が要らない手段を複数提供し、アクションを起こしやすくしました。

MZ:実際、どのような反響や成果が表れていますか。

山本:DMの反応率は、一般的には10~15%がデフォルトという中で、約70%(内承諾率85%)と、非常に高い反応を得られました。応答率としては、はがきが38%(全体の54%)、QRとメール経由が27%(全体の38%)となっており、デジタル連動もうまく機能したと感じています。

北村:期待していた配送費は顧客一人あたり3分の1まで減少しました。さらにDM前後で継続率は24%アップしており、数字としても明らかな効果が出ています。

 また、お客様の年間あたりの平均購入金額で見たLTVは、DM前後で約4割改善する結果になりました。さらに、「ダンボールが無駄だと感じていた」など、個別にお手紙やメール、SNSなどでエコの切り口に対してのお声も多数あり、当社のSDGsに対する思いも一緒に受け入れていただけたと実感しています。

クリエイティブ1つで大きく変わる 顧客からの共感を得るDM

MZ:「DM」ならではの良さ・強みを、どこに感じられましたか。

北村:正直、この施策を行うまでは、「DMはお金もかかるし、反応もあまりよくない」と思っていました。しかし、今回非常に高い反応率を得られたことで、クリエイティブ次第でDMの可能性は無限大と感じました。

北村:Eメールとの掛け合わせなど、チャネルミックスで可能性はさらに広がるのも魅力です。今回の「おまとめ案内」に限らず、しばらく飲んでいないお客様に戻っていただく施策など、幅広い場面でDMは有効に働くと思います。

 また、同梱物との掛け合わせでも、さらに効果を期待できることもわかりました。実は、商品に同梱している会報誌でサステナビリティ特集を1年計画で掲載していたところ、3ヵ月目ぐらいのタイミングでこのDM施策が立ち上がりました。SDGsの切り口とともに、企業のビジョンをブレることなく伝えられたことが、反応率にも大きく寄与したのではないかと思っています。

田村:定例会の場で、森永乳業さんから、今力を入れていることとしてSDGsの話をよくしていただいたのを覚えています。上辺だけのSDGsではなく、日頃から取り組んでいる森永乳業さんだからこそ、そこを伝えることができたことで、顧客側も共感し、自然に受け取れたのではないでしょうか。コストを減らしリターンを増やす、事業としての転換点になったと思っています。

届ける人を想像して思いを込めたDMを作っていく

MZ:DM施策の活用について、今後の展望を教えてください。

北村:DM施策の良さとしては、1つはインパクトが強いところです。今回、クリエイティブで反応率が上がることがわかったので、今後もそれを活かしていきたいと考えています。そしてもう一つは、今離れているお客さんにも、直接コンタクトが取れる点です。その二つの良さを活用して、様々なお客様に、それぞれに合わせたメッセージを伝えていければと考えています。

 今後、今回の施策をきっかけとして、他の商品や場面でもDMを展開していければ嬉しいです。

山本:デジタル化、ネットやSNSの普及のさらなる普及により、いつでもどこでも情報を取得できるようになり、可処分時間の奪い合いが起きている時代です。そんな中、DMは届いたその場所で見るものだからこそ非常に良く目に留まるものになっていると思います。 

 もちろん、ただ単に送り続けたり、消費者の視点を無視してセールスに特化したりしてしまうと、反応率は悪くなり、コストだけがかさんでしまいます。DMが届く人をしっかりイメージして設計・作成が重要で、そのコミュニケーションをコンスタントに行うことは、企業のブランディングにおいても非常に意味があることだと思います。まだチャレンジしたことのない方や一度実施して反応が悪く諦めてしまった方などは、一度検討頂きたいと思います。

スマートDM始めませんか?

 スマートDMは、デジタルと紙のDM(ダイレクトメール)を掛け合わせた手法のこと。デジタルとリアルのいいとこどりができるから、五感を揺さぶる1枚が、届けたい人のみにムダなく届く。これからの時代を想う、サステナブルを目指す新手法です。

画像:スマートDMはじめませんか?

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この記事の著者

釘﨑 彩子(クギサキ アヤコ)

 2019年からマーケティング・広告の専門出版社で編集者として勤務。広報・PR分野を中心に編集業務にあたる。2022年よりフリーランスのライターに。媒体問わず、マーケティング、広報、経営者インタビューなど、ビジネス領域を中心に幅広く執筆。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2023/03/30 11:00 https://markezine.jp/article/detail/41565