思いがけない離脱を防ぐ ガイドのポップアップで購入改善率が125%に
深田氏は、こうした5万回以上のA/Bテストを実践していく中で、サイト改善における三つの気づきを得たという。
一つ目は、「ユーザーは思いがけないところで離脱している」ということだ。運営側の思う当たり前とユーザー側の認識の間には実は多くのギャップが生まれている。たとえば、三本線のアイコン(ハンバーガーメニュー)。商品一覧を見られるにもかかわらず、このクリック率は、実はかなり低いことがわかったという。
「分析していくと、そもそもアイコンの意味を知らない、というユーザーの本音が見えてきました」(深田氏)
そこで、「クリックすると商品一覧が現れます」といったガイドをポップアップさせるA/Bテストを実施したところ、購入完了改善率は125%となった。
さらに目立つのが、購入や申し込みまで進んだ際の離脱だ。この部分は初めてのユーザーにとっては、送料、支払い、配送日など、単純な疑問が生まれやすいタイミングになる。運営側からすると「FAQに用意してあるから問題ない」と考えがちだが、購入ページから戻って探すとなるとかなり手間がかかってしまう。対策は、疑問が起こりそうなタイミングの前に声をかけ不安点を払拭することだ。知り得る情報はFAQと同様でも、購入完了改善率は向上した。
「このように、コンテンツの存在に気づかない、コンテンツを見ようと思わない、コンテンツに到達できない、コンテンツの内容が理解できないといった、見落としがちなユーザーの4つのつまずき(フリクション)に気づけるかが重要です」(深田氏)
ユーザーの変化で「セルフサービスは通用しない」時代に
サイト改善における気づきの二つ目は、「『セルフサービス』の前提は通用しない」という点だ。
「ヘルプコンテンツを用意さえすれば、ユーザーの問題を解消できると思いがちですが、実はそうでもありません。コロナ禍でネットに不慣れなユーザーが増えており、一方でデジタルネイティブと言われるZ世代は使い勝手の悪さに敏感で、時間効率を求めるといった傾向があります。自己解決にゆだねた設計では、離脱されてしまうのです」(深田氏)
サービスや商品の紹介動画は、普通ならなかなか見てもらいにくいものだが、手早く概要を知ってもらう手段には有効だ。実際、A/Bテストによりポップアップで見られるように誘導したところ、申し込み率は124%に改善したという。