完全には戻らない都心の人流
図表1に、東京の主要4駅(新宿、渋谷、東京、池袋)における人流を2020年1月を100%として示しました。データからは、東京都心の人流は感染拡大前の8割程度に達してから伸びが鈍化していることがわかります。コロナ禍におけるリモートワークの普及や職場での飲み会の減少といった“密”を避けるための変化が、アフターコロナの生活様式としてある程度定着したことがうかがえるでしょう。
コロナ禍に大きな影響を受けた公共交通
人々が利用する交通手段にも変化とその定着が見られます。図表2に、国土交通省が発表する2020年から2022年にかけての鉄道、バス、自家用車による移動距離のデータを2020年1月を100%として示しました。
コロナ禍の影響を大きく受けたのは鉄道とバスです。2020年4~5月で鉄道は45%、バスは30%程度まで落ち込みました。特に鉄道は2022年後半でもコロナ前の8割程度にとどまっています。リモートワークの普及によって郊外から都心への電車通勤が減少したとすれば、コロナ前の8割程度という水準が今度も継続する可能性があります。
鉄道やバスといった公共交通が大きな影響を受けたのに対して、自家用車での移動は2020年4~5月でも8割程度にしか落ち込んでいません。コロナ禍において、多くの人が一緒に乗り込む公共交通機関の利用が避けられたのに対し、パーソナルな移動手段である自家用車への影響は比較的小さかったことがわかります。
コロナ禍のパーソナルな移動手段として普及が加速したシェアモビリティ
コロナ禍を通じて、パーソナルな移動手段として重宝された自家用車ですが、すべての人が利用できたわけではありません。自動車検査登録情報協会によれば、1世帯当たりの自動車の所有台数は都市部で低く、東京では0.42台、大阪では0.63台です。公共交通機関の利用が難しいコロナ禍において、自家用車を持たない人にもパーソナルな移動を可能にしたのが、乗り物を“所有”ではなく、“共有”することが特徴のシェアモビリティです。
図表3に、2021年2月から2年間のシェアモビリティの推計利用人数(15~69歳)の推移を示しました。スマートフォンアプリの利用ログから、カーシェアは6つ、シェアサイクルは4つ、シェアキックボードは2つのスマートフォンアプリのうちいずれかを各月に1回以上利用した人の割合を算出し、人口と掛け合わせて利用人数を推計しました。性年代別、地域別といった詳細な粒度で複数のアプリの利用状況を分析できるのは、スマートフォンアプリの利用ログが持つ特徴の1つです。
データからは、シェアサイクルとシェアキックボードの利用人数がどちらも約2年間で2.7倍に増加していたことがわかりました。対してカーシェアの利用人数は1.6倍の増加です。シェアモビリティ全体の中でも、自転車やキックボードといった小型のシェアモビリティの普及が特に著しかったと言えるでしょう。公共交通機関の利用が控えられたコロナ禍において、小型のシェアモビリティがそれに代わるパーソナルな移動として急速に広がったことがうかがえるデータです。