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EC売上が半年で10倍に 博報堂DYグループと梅乃宿酒造に学ぶ「D2C×共創型マーケティング」の実践

梅乃宿酒造のチャレンジに見る「5つの優れたポイント」

 セッションの最後には、桑嶋氏が自身も関わった梅乃宿酒造のチャレンジから優れたポイントとして五つを挙げた。

1.元々のパーパス・ミッションからECビジネスのコンセプトを考えたこと

 ECビジネスを新たに始める際、今までのビジネスと切り離してしまう会社があると桑嶋氏は指摘する。とはいえ、ユーザーから見れば同じ会社であることに違いはない。だからこそ、そうした『接合点』がとても重要になってくるのだという。

 今回の件でいえば、新たに設定された「#ワクワクの蔵」というコアビジョンが、元々のパーパスやミッションとしっかり連携していたことはとても大きい。そこがユーザーに受け入れられたポイントだと思うと述べた。

コアビジョン

2.D2Cチャネルだからこそできる、生活者との関わりを考えたこと

  「D2Cを『やりたいからやる』『販売量を増やしたいからチャネルを作る』といった理由では、今の時代の生活者からは受け入れてもらえない」と桑嶋氏。梅乃宿の場合は、商品開発も含めて「なぜ自分たちがD2Cチャネルを始めるのか?」「ここでやることの意味は何か?」といったことを常に考えてきたことが成功の要因だったと指摘する。

 「たとえば『大人の果肉の沼』は、鮮度が凄く重要なため、通常の販売手法では届けることができません。でも、D2Cチャネルなら商品を新鮮なまま直送できる。これが立派な価値になっていると思います」(桑嶋氏)

3.安易なPR手法ではなく、エヴァンジェリストの育成を重要視したこと

  桑嶋氏は、梅乃宿酒造がファンである声優をアンバサダーに起用した話に触れ、元々梅乃宿酒造が好き、ないしは好きになってくれた人をアンバサダーにするという点が重要だったという。ユーザーに「この商品は本当に良いんだな」「愛されているブランドなんだな」ということが伝わり、広がりの輪が生まれたのだと思うと述べた。

コアビジョン

4.従来の「モノ発想」から脱却し、SNSで拡散したくなる商品設計を“0→1”で行ったこと

 ものづくりで大きくなった会社であればあるほど、先に「良いモノ」を作ることに力を入れ、その後にプロモーションについて考えがちだという。

 「梅乃宿の場合はまず『どうやったら生活者自身がワクワクできるのか?』を考え、次にそのワクワクを『どうすればSNSなどで拡散したくなるか?』と考えながらプロダクト開発につなげていきました。その結果、ユーザー自身が楽しみながら拡散してくれる商品になったのだと思います。私も開発に携わらせてもらった者として、生活者に愛されることになったことをとても喜んでいます」(桑嶋氏)

5.生活者がワクワクする施策を矢継ぎ早に実施していくこと

 チャレンジが一過性のもので終わってしまうと、生活者からは「一瞬のプロモーションだった」と思われてしまうことを桑嶋氏は指摘。その意味においても、梅乃宿が手掛けるキャンペーンや新商品は、いずれも「ワクワク」を提供し続ける“蔵”であると想起させることを高く評価した。また、そうした「つながっていく姿勢」を生活者に届けていることにチャレンジとしての価値があると強調した。

 コロナ禍を経て、今後も競争のさらなる激化が予想されるECビジネス。本セッションからは、共創型マーケティングの有用性とともに、それを持続する重要性が示された。HAKUHODO EC+と梅乃宿酒造のチャレンジは今後も続いていく。

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この記事の著者

三ツ石 健太郎(ミツイシ ケンタロウ)

早稲田大学政治経済学部を2000年に卒業。印刷会社の営業、世界一周の放浪、編集プロダクション勤務などを経て、2015年よりフリーランスのライターに。マーケティング・広告・宣伝・販促の専門誌を中心に数多くの執筆をおこなう。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:株式会社博報堂DYホールディングス

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2023/05/26 10:00 https://markezine.jp/article/detail/41985

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