「市場シェアの拡大」には、CEPのリンクを増やすことが重要
具体的な調査例を交えながら、CEPの解説を進めます。まずは、「市場シェアの拡大」を目指す場合のCEPの捉え方からです。
下のグラフは、マーケティング研究機関のアレンバーク・バス研究所による調査結果「中国のワイン市場におけるCEP」です。この調査は、オーストラリアワイン協会が、中国市場でオーストラリアワインを売り出したいという動機から、輸入ワインと国産ワインで異なるCEPを導出しています。

議論を単純化するために、CEPを「プレゼントが欲しい時」と「リラックスしたい時」に絞ってみます。すると、「プレゼントが欲しい時」は輸入ワインが、「リラックスしたい時」は国産ワインがよく購入されていることがグラフからわかります。

つまり、輸入ワインの市場シェアを拡大させたい場合、「リラックスしたい時」に輸入ワインが選ばれるようにすれば、オーストラリアワインの中国での市場シェアを拡大できる可能性があります。このように、市場シェアを拡大させるには、CEPとのリンクの増加がカギとなるのです。あくまで仮の話ですが、「オーストラリア産のブドウには、リラックス効果のある成分が豊富」といったファクトを訴求すれば、「リラックスしたい時」というCEPとオーストラリアワインのリンクを創造・強化できるかもしれません。
加えて、自社の市場シェアが小さいCEPを捉えることも重要です。輸入ワインがどういったシーンやタイミングで競合である国産ワインに対してチャレンジャーの位置にいるのか、それを具体的に把握することができれば、打ち手も具体的に検討することができます。
「カテゴリーの成長」では、カテゴリーシェアが小さいCEPを捉える
次に、「カテゴリーの成長」を目指す場合のCEPの捉え方を解説します。カテゴリーの成長を目指す場合も、市場シェアの拡大を目指す場合と同様、CEPのリンクを増やすのが基本です。
ここでは、先ほどの清涼飲料水のCEPの例を用いて、「紅茶」のカテゴリー成長を目指す場合で考えてみましょう。この例の場合は、「朝食時にパンと一緒に」よく飲まれている紅茶を、緑茶がよく飲まれている「昼食時におにぎりと一緒に」というCEPでも飲まれるようにするのが1つの得策です。ちなみに、「紅茶が昼食のおにぎりと一緒に飲まれるようにする」という打ち手は、キリンが「午後の紅茶 おいしい無糖」のキャンペーンとして実際に展開していました。

このように「市場シェアの拡大」を目指す場合も、「カテゴリーの成長」を目指す場合も、基本的な考え方は変わりません。
ただ、一点だけ、「市場シェアの拡大」を目指す場合、自社商品の市場シェアが小さいCEPを捉えることが肝要であったのに対して、「カテゴリーの成長」を目指す場合は、カテゴリーシェアが小さいCEPを捉えることが肝要となります。捉えるスケールの違いだけが、異なります。