同業他社と差別化するための「小さな勝ち筋」とは
ブルーオーシャンの領域を獲得する施策の1つが、「事例」の紹介だ。社会や業界が抱える普遍的な課題を事例につなげ、さらに情報を付け加えていく。こうした施策を積極的に行った結果、PVが増加していったという。
しかし「PV数が堅調に伸びたが故に、大きな壁にぶつかってしまいました」と野島氏は振り返る。それは“勝ち筋”が見えないまま急速にチームが拡大し、MROI(マーケティングの投資対効果)が低下してしまったことだ。
また、PV数を上げるためにオーガニック流入に集中した施策ばかりに注力し、広告も活用しなかった。さらに市場の共感を優先したコンテンツの内容となっていたため、メディアとしての特徴を明確化できず「主張のないメディア」に陥ってしまったと野島氏。そこで、課題を解決するために実施したのが「大きな勝ち筋」と「小さな勝ち筋」を見つけることだった。

「コンテンツマーケティング、そしてオウンドメディアの強みは、ロングテールでいろいろな接点作りができることです。社内でも聞いたことがないキーワードがあれば、それは同業他社も見つけていない可能性があります。メインストリームになるような大きな勝ち筋は、他のメディアでも扱います。一方で見えづらい小さな勝ち筋を扱うことは、オウンドメディアの差別化ポイントにもなります」(野島氏)
顧客との接点作りをしやすい大きな勝ち筋と、同業他社や自社のメインストリームのマーケティング施策で手薄になりやすい小さな勝ち筋、その両方を見極めたうえで施策を積み重ねていくことが重要だと野島氏は示した。
データを活用し、効率的にサイクルを回していく
データのじかんでは、小さな勝ち筋を見つけるために取材を通じたインタビューやWebサイトのジャーニー分析やn=1で捉えるデジタルエスノグラフィー、市場動向や調査レポート、Googleトレンドといったオープンデータなどを活用。これによりコンテンツを発信してデータを収集し、それを掛け合わせて新たなコンテンツを作成・発信するという、コンテンツマーケティングのサイクルを効率的に回すことができる。

たとえば潜在キーワードから着想したコンテンツを作成し、その反応をデータで確認しながら検証するといったことが可能だ。中でも読者の反響が大きく成果につながっているのは、「一次情報を扱ったコンテンツ」「データのじかんオリジナルのコンテンツ」だという。
現在、野島氏はデータのじかんを起点に、読者が次のビジネス機会を創出できるような施策に取り組んでいる。その一例が、全国47都道府県の各地域のロールモデルや越境者の取り組みを取材・発信する「Local DX Lab」だ。
野島氏は、「こうした取り組みは、取材に応じてくれた方や読者にも評価いただいています。オウンドメディアという立ち位置ですが、イベントではメディアスポンサーをしたり、複数の他メディアに記事配信をしたりしています」と語った。