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イベントレポート(AD)

AIの発達でマーケターは進化が求められる時代に Adobe User Group Dayレポート

 約4年ぶりのリアル開催となった「Adobe Summit 2023(2023年3月、米・ラスベガス)」に続き、2023年4月20日(木)には日本でも「Adobe User Group Day – Insights from Adobe Summit(以下、Adobe User Group Day)」が開かれた。本稿では、Adobe User Group Dayにおいて発表された新たなアドビユーザー会の詳細や、日本からのAdobe Summit 2023参加者によるパネルディスカッションの一部始終をレポートする。

製品を横断したユーザーグループが発足

 東京・六本木のビルボードライブ東京で開催された「Adobe User Group Day – Insights from Adobe Summit(以下、Adobe User Group Day)」。ジャズバンドの生演奏が幕間に流れ、場の雰囲気とも相まって会を一層盛り上げる。

 イベントの冒頭、アドビ DXインターナショナルマーケティング本部の祖谷氏が進行役として登壇。「本イベントでは、2023年3月に米・ラスベガスのAdobe Summit 2023で発表されたマーケティングソリューションに関する最新情報を、臨場感をもってお伝えする」と話す。

アドビ DXインターナショナルマーケティング本部 執行役員 本部長 祖谷考克氏

 また、Adobe Summit 2023に関する情報以外に、もう一つ重要な発表がなされた。それが「Adobe User Group」の発足だ。アドビ デジタルエクスペリエンス事業本部の松山氏が登壇し、詳細を語る。

アドビ デジタルエクスペリエンス事業本部 専務執行役員 事業本部長 松山敏夫氏

 松山氏によると、アドビはこれまでもユーザー同士がマーケティングに関する知見やノウハウを共有できる場をグローバルで運営してきた。具体的には「Adobe Experience Cloud」の製品群であるエンゲージメントソリューション「Adobe Marketo Engage」や、分析ソリューション「Adobe Analytics」、コンテンツ管理ソリューション「Adobe Experience Manager」など、製品ごとにコミュニティを設けていたのだ。

「これまでは、『Marketo Engage User Group』『Analytics ユーザー会』そして『Experience ユーザー会』を主に運営してきましたが、これからは既存のコミュニティに加えて、製品の枠組みを横断して交流していただけるよう、Adobe User Groupを発足します」(松山氏)

約1万人が参加したAdobe Summit 2023

 Adobe User Groupでは、CXM(Customer Experience Management)全体に関するイベントや活動を実施する予定だという。BtoB、BtoCなどの業界を超えたワークショップや各業界でのベストプラクティスの共有、事例研究、国内外の先進ユーザーによる講演会などを行っていく。

 将来的には、Adobe Experience Cloudに加えてクリエイティブツール「Adobe Creative Cloud」や、文書管理ソリューション「Adobe Document Cloud」のユーザーもAdobe User Groupの対象としていくそうだ。松山氏は「本イベントのような交流の場を今後も定期的に設けていくので、ぜひ期待してほしい」と意気込む。

 続いて、祖谷氏がAdobe Summit 2023に話を戻す。Adobe Summitは、アドビが「世界最大級のDigital Experience Conference」として主催している恒例イベント。コロナ禍ではオンライン開催だったため、2023年は約4年ぶりのハイブリッド開催となった。約500人のスピーカーによる250超のセッションが用意され、世界中から約1万人のExperience Maker(※)が集まったという。

※Adobeが提供するソリューションを活用して、顧客中心主義志向を貫き、これまでの常識にとらわれることなく、創意工夫と大胆な行動力で素顧客体験を顧客に届け、企業と顧客との関係性というものを変革し、企業の事業成長を牽引する人々のことを指す

マーケターに求められる「マーケティングアーキテクト」とは

 そんなAdobe Summit 2023には、日本からも複数のマーケターが参加した。Adobe Experience ユーザー会のリーダーを務める東京海上日動火災保険の吉村氏は、ビデオメッセージで現地の様子を紹介する。

東京海上日動火災保険 デジタルイノベーション部 マネージャー 吉村歩美氏

 吉村氏は「Adobe Summitには様々なセッションが用意されており、深いインプットにつながった。また他の参加者との意見交換の場でも、アウトプットを通じて有益な気づきが得られた」と話す。

 その気づきというのが、マーケターの今後のスキルセットについてだ。吉村氏は「『Adobe Firefly(※)』など、AIでテキストのみならずクリエイティブも制作できる昨今。マーケターは今後、マーケティング業務を単にこなすのみでは継続的なバリューを発揮できない」と感じたという。

※アドビの画像生成機能およびテキストエフェクトを中心としたジェネレーティブAIモデル。Adobe Summit 2023で発表された

 吉村氏は今後のマーケターの提供価値について他のSummit参加者と話をした結果「マーケティングアーキテクト」というロールを果たすことが今後のマーケターには求められるとの結論に至ったそうだ。マーケティングアーキテクトとは吉村氏の造語で、自社ビジネスのメカニズムを深く理解した上で、マーケティングをドライバーにした価値創造プロセスを設計する役割のことを指す。

「マーケティングアーキテクトという発想は、一人でオンラインのセッションを聞いているだけでは気づかなかったでしょう。業界や会社は異なれど、似たような課題感を抱えたマーケター仲間と対面で意見交換することで、初めて生まれるケミストリー(化学反応)があるのだと感じました」(吉村氏)

短期的なROIが求められる時代に

 吉村氏のビデオメッセージに続いて、Adobe Summit 2023の別の参加者三人によるパネルディスカッションがスタート。登壇するのはカシオ計算機の村岡氏、日商エレクトロニクスの近藤氏、マクニカの堀野氏だ。モデレーターとしてアドビのプラブネ氏が場を仕切る。

(左)カシオ計算機 デジタル統轄部 D2C戦略部 村岡美和氏
(中)日商エレクトロニクス エンタープライズ事業本部 ビジネス推進部 部長 近藤智基氏
(右)マクニカ マーケティング統括部 統括部長 堀野史郎氏

 三人はまず、Adobe Summit 2023の感想を語る。堀野氏は「世界一のマーケティングテクノロジー事例が集まる場だった」と評価。近藤氏は「Chat GPTなど、AIのマーケティング活用に注目していた中、SummitでAdobe Fireflyが発表されたことが印象的だった」と語り、村岡氏は「参加者が皆学ぶ意欲にあふれていて、非常に楽しかった」と振り返る。

 続いてプラブネ氏が、アドビが2023年2月に日本を含む計14ヵ国に対して行った調査の結果を紹介。各国の消費者に「景気がより悪化した場合、顧客体験への期待値はどう変化するか」と聞いたところ、約半数が「高くなる」と回答したのだという。

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 この調査結果からプラブネ氏は「多くの企業が今後『体験価値を上げないとマーケットから排除されてしまう』と懸念し、短期的なROIを重視し始めるのではないか」と推測。この仮説を踏まえ、各社における実態をパネラーの三人に聞く。

 堀野氏によると、これまでマクニカでは半導体のディストリビューション事業が主な事業だったため、特定の製造業の顧客との取引が中心でマーケティングがそれほど重要視されていなかった。しかし、半導体やソフトウェアを活用したソリューションビジネスを展開し始めたことで潮目が変わったそうだ。積極的なマーケティング活動が求められる上、ROIもしっかりとトラッキングする流れになってきているという。

 近藤氏は「日商エレクトロニクスでも短期的にリターンを求める風潮は高まっている」と指摘。「マーケティング組織は、他部署からややもするとコストセンターと見られかねない。それゆえ、我々の取り組みを数字で営業組織や役員にしっかりと示し、納得してもらう環境になってきている」と続ける。

顧客獲得件数増の鍵はコンテンツの量より届けるタイミング

 次にプラブネ氏は、過去2年間のコンテンツ需要の伸び率が2倍だったのに対し、今後2年間ではコンテンツ需要が5倍になるとの試算結果(2023年実施のアドビ調査に基づく)を示しつつ、自社のコンテンツ供給力について三人にコメントを求める。

アドビ デジタルエクスペリエンス事業本部 シニアマネージャー マニッシュプラブネ氏

 村岡氏は「当社のコンテンツ供給力は低くない」と前置きしつつ、グローバル展開ならではの課題を語る。

「カシオ計算機のWebサイトは多言語展開しているため、各コンテンツは内容の翻訳のみならず、画像の差し替えなどの工夫が必要です。そのため、供給力がより伸びるようにAI利用も含めてチャレンジしていければと思っています」(村岡氏)

 近藤氏は「BtoBビジネスにおいては、コンテンツ量と顧客の獲得件数は必ずしも正比例になるとは限らない。件数を増やしたいのであれば、コンテンツの量を増やすよりもむしろ『顧客にとっていかに最適なタイミングでコンテンツを届けられるか』に注力したほうが良いのではないか」と指摘する。

 プラブネ氏はコンテンツ供給力に続き、コンテンツの制作体制についてもパネラーに質問。近藤氏によると、日商エレクトロニクスではSEO対策記事といった量が求められるコンテンツの制作は外注しているとのこと。一方で、リードの獲得につなげるような質が求められるコンテンツは内製していると説明する。

 堀野氏は自社の制作体制について、次のように語る。

「かつてはコンテンツ制作のインハウス化が潮流としてありましたが、今では内製・外注を使い分けている企業が多いのではないでしょうか。そうした中で、課題となるのがコンテンツのトンマナの一貫性です。一貫性を持たせるための仕掛けづくりが重要だと考えています」(堀野氏)

AIに任せられる業務と任せにくい業務の違い

 プラブネ氏は、話題をコンテンツから昨今注目が集まっている生成AIにチェンジ。現状、AIを現場の業務にどこまで活用しているかを三人に質問する。

 堀野氏によると、マクニカでは3~4年前にデータ整理に着手。AIソリューションのベンダー企業でもあるため、社内でのAI活用も段階的に進んでいるという。

 日商エレクトロニクスでもChat GPTを活用したコンテンツチェックなどは現場で既に行われているという。「AIをマーケティング業務に活用する過程で“AIに任せられるもの”と“まだ任せづらいもの”があることに気づいた」と近藤氏。たとえば、データに基づいたセグメンテーションや最適なタイミングでの配信業務はAIに任せても良いとのこと。なぜなら、マーケターに業務の知見があり、AIの提案に対し明快に判断が下せるからだ。

 一方で、これまでにない斬新な施策など“0から1”を生む作業では、マーケター自身が施策のイメージを明確に描けていて、かつ顧客のインサイトも正確に把握しておくことが求められる。つまりマーケターに知見がないため、AIに任せるのはまだ不向きだと感じるそうだ。「業務へのAI活用を進めるには、マーケター自身も進化する必要がある」と近藤氏は続ける。

「マーケティングは最終的には人と人とのコミュニケーションで成り立つもの。アドビさんも提唱されている通り、AIはあくまで“co-pilot(副操縦士)”として活用するつもりです」(近藤氏)

 Adobe Summit 2023の現場の様子を、参加者の生の声で聞くことができた本イベント。また「マーケターが今後、AIとどう付き合っていけば良いのか」「どうバリューを発揮すれば良いのか」といった不安の共有もAdobe User Group Dayの成果の一部といえる。Adobe User Groupが新たに発足した今、マーケター同士の連帯は今後一層強まるに違いない。

「Adobe User Group Day – Insights from Adobe Summit」のアーカイブ視聴はこちらから

本イベントの内容は一部に限りオンライン視聴が可能です。下記のリンクからご覧ください。

アーカイブ動画の視聴ページ

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MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

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MarkeZine(マーケジン)
2023/06/02 10:00 https://markezine.jp/article/detail/42182