テレビCMの効果最大化に欠かせない2つの要素
──統合マーケティングにおけるテレビCMの効果最大化に向けて、テレビCMという手段をどのように捉えるとよいでしょうか?
布瀬川:前提として、テレビには「広く伝える」という大きな役割があります。若年層のテレビ離れが言われていますが、一度に何千万人の視聴者に情報やコンテンツを届けることができるという、メディア機能としてのテレビの特性は変わっていません。
濱:見られていないからテレビCMをやめるべき、若年層がターゲットだからテレビCMではなくYouTubeやTVerに出稿すべきといった話をよく聞くのですが、「テレビが(以前より)見られていない」という背景論が最前に来てしまっていて、コンテンツとターゲット理解の部分が飛ばされてしまっていることを課題視しています。このターゲットにはこんなファクトを伝えれば動くはず、そのファクトを伝えるためにはこんなクリエイティブコンテンツが必要、じゃあYouTubeやTVer、どのメディアで届けるべきか――本来はこういった順番で議論すべきです。テレビ×マーケティングにおける昨今の課題の原点をたどると、「テレビが見られていない」という一点からの悪循環になっていると感じます。
とはいえ、メディア環境の変化を経て、メディアプランニングをするときのテレビの位置づけは変わっています。テレビCMよりも「ローリスク」で最適化を目指せるYouTube、TVerの存在が出てきたことから、今日では、相対的に「テレビCM=ハイリスク・ハイリターン」という見方になってきています。テレビCMの位置づけはプランナーによって意見が分かれるところではありますが、私はこの見方は間違っていないと思っています。

2015年に新卒で電通に入社。メディアプランニングの業務に従事する 傍ら、その現場で出てくる様々な課題やニーズに対応するソリューション の開発も担当。テレビCM、CTVの効果を可視化する「レスポンスコ ネクター・ダッシュボードPro」を開発するなど、メディアプランニングの 個別最適だけでなく、テレビ×マーケティングの効率化、効果の最大化 から事業全体の成長まで広く実現していくことにも注力している。
布瀬川:こうした前提の上で、テレビCMの価値を最大化させるためには、「高度化×爆発力(=拡散)」の掛け合わせが重要だとお話ししています。“高度化”はデータとテクノロジーをもって行うもので、突き詰めれば、確率論的な最適解にたどり着くことができます。もう一方の“爆発力”は、コンテンツ×クリエイティブを追求することで成せるもので、ここには絶対的な正解はありません。
たとえば、高度化を目指すためのアプローチとして、電通では「トリガー広告」という仕組みを開発しています。トリガーとは、広告を見た人が行動を起こすきっかけとなるもので、トリガーに連動した広告を実施していくためには、世の中のモーメントを押さえる必要があります。わかりやすい例として、仮にビールは暑い日のほうがよく売れるとすると、寒い日ではなく暑く晴れた日にプロモーションをしたほうがいい。逆に、天気アプリやタクシーの配車アプリは、晴れの日よりも雨の日にプロモーションを打ったほうが効果は高くなります。
これまでテレビCMは打つタイミングを変更できませんでしたが、ある条件下で広告枠を選択したり入れ替えたりできるようになれば、多くの広告主の間でテレビCMの効果効率化が進みます。このトリガー広告を、様々なクライアント様にご提供中で、日々、機能や精度の更新も進めています。