具体的な体験アイデアを発想するステップ
目的が決まった後は、STEP4〜7で具体的な体験アイデアを考えます。なお、4〜6のSTEPでは順番にこだわることなく、発想が膨らむ順番で進めて構いません。
まず、STEP4では体験の方向性や形を考えます。
一言で体験と言っても、商品・サービス、顧客、ブランド、など体験によって目的とする体験は異なるため、具体的にイメージしながら軸となる体験を選びます。大体の分類は第2回で説明した以下の通りです。
- 仕組み体験:商品・サービス体験
- 対話体験:顧客体験全般(事前事後のサービス他)
- 世界観体験:ブランド体験(店舗、空間、広告コミュニケーション他)
今回は試着サービスの体験を作りたいので、まずは仕組み体験を重視し、「行動メタファー」を活用して発想を膨らませていきます。

デジタル上での試着ということで、まず3Dスキャナーを活用したアバター生成技術を活用した「3Dアバター試着」を思いつきました。仕組み領域の体験を思考する上では、第4回で説明をしたように行動メタファーを使用した行動デザインの考え方を使う必要があり、「動詞で考えること」や、「今までにない言葉の組み合わせ」の言葉を考えていきます。(この部分は円滑に進むものではなく、「従来はリアルの人で試着していたから、アバターにしたら新しいだろう」と考えたとしても、調べてみると、既に存在しているといったことも往々にしてあります。この場合も検索すると既に存在しているものがいくつかありました。)
そこで、我々は、さらに各体験発想のキーワード(動詞活用・ギャップ・数字化・主人公など)を参考に深堀して考えてみました。
今回、ピンときたキーワードは主人公でした。試着して主人公になるということは、ファッションモデルのようなもの。そこから自分のアバターがファッションショー的にウォーキングしてくる「アバターファッションショー」という体験を考えました。
しかし、これだと主役感が出ないので、自分のアバター=「じぶんファッションショー」という体験に置き換えました。
他の体験領域に広げて体験をより明確に
仕組み体験の一言ができた後は、STEP6として、他の体験領域でも考えてみると良いです。ファッションショーについて舞台メタファーを使った物語デザインで考えてみると「ランウェイ」という言葉が浮かんできました。これと先ほど考えた一言を組み合わせることで「じぶんランウェイ」という一言ができました。
こちらのほうが、ウォーキングする花道と自分だけをイメージができるのでスッキリしています。加えて、アイコニックにしやすく、ランウェイがキーになっていることから世界観も作りやすいといったメリットもあります。
また、今回はデジタル上でのサービスなので、デジタル・バーチャルならではの特徴を設計として考えました。デジタル上のランウェイならではの特徴は、バーチャル上では物理的な制約がないからずっとウォーキングができる点です。ここから「無限ランウェイ」という設計を考え付きました。
そこからは、「無限ランウェイ」をキーワードにして、肝心の試着した服やフィッティングした感じが派手な演出でわからなくならないように白ホリ(白いスタジオ空間)のような無垢でシンプルなランウェイの世界観を作ることにしました。
