「広告」以外の事業比率を早期に50%まで引き上げる
有園:そのために「この領域をまず進めなければならない」というものはありますか。株式会社電通を中核企業とするdentsu Japanでは事業領域として、AX(Advertising Transformation/広告コミュニケーションの高度化)、BX(Business Transformation/事業全体の変革)、CX(Customer Experience Transformation/顧客体験の変革)、DX(Digital Transformation/マーケティング基盤の変革)の4つを掲げています。提供するソリューションの優先順位などはありますか。
榑谷:クライアントのカスタマージャーニー全体をカバーするためには、デジタル施策のみならず、リアルでの接点も含めて、AXとCXの統合が求められます。認知・理解、興味・関心、比較・検討から購入に至り、継続利用や推奨につながるデュアルファネルの基盤として、マーケティング領域を中心とするDXを提案する機会も増えています。たとえば、CDP(Customer Data Platform)やCMS(Contents Management System) です。
そして今、デジタルによる環境変化で「企業がどのように世の中に貢献していくか」という存在意義が再確認・再定義の対象になっています。AXやCX、その基盤となるDXは、そもそも「その企業がどのように世の中に貢献しようとしているのか」を土台として成り立つのです。それをBXと呼んでいます。
これらの施策はどこを起点としても良いと思います。ただ、構造的には、まず企業の在り方を定義するBXがあり、それに基づく顧客体験を具体的に提供するCX、その一環としてのAXがあり、更にそれを支える基盤としてDXがある、ということになります。
有園:dentsu Japanとしての最優先事項は何ですか。
榑谷:BX、CX、DXの領域にあたる「CT&T(カスタマートランスフォーメーション&テクノロジー)」領域の連結売上総利益に占める割合を、早期に50%に引き上げることです。グループとして2022年12月期は32.3%でした。2023年度は1~3月期の時点で34.6%と、徐々に高まっています。
クリエイティビティこそが電通のユニークネス
有園:電通デジタルが立ち上がった2016年ぐらいから、その領域を強化されてきました。その取り組みが実を結び、成長できている要因をどう考えますか。
榑谷:最大の要因は、クライアントがそのようなソリューションを望んでいるということです。そのニーズに最大限応えられるようにしてきました。当社は30~40年前から、狭い意味での広告コミュニケーションだけでは、複雑化する課題の解決が図れないと判断し、サービスを拡張してきました。
有園:AIによってクリエイターの仕事のやり方が変わるという話がありました。クリエイターに限らず、電通の仕事はどう変わっていくのでしょうか。
榑谷:より「クリエイティビティ」に力点を置くことになります。クリエイティビティこそが電通のユニークネスであり、もちろん今までも重視してきましたが、より重要性が高まることでしょう。
有園:その価値が高まっていくようにAIを使いこなさなければいけませんね。クリエイティブというと広告制作を想起しますが、クリエイティビティはまた異なる考え方ですね。
榑谷:はい、もっと広い意味ですね。dentsu Japanでは、広告制作を担当する組織だけではなく、グループの全員がクリエイティビティをベースに仕事をしています。それは事業戦略系のコンサルティングを提供する場合も同じです。
有園:他の戦略コンサルファームとの大きな違いがクリエイティビティということですね。
榑谷:その通りです。勿論、大きな投資判断の礎として、クリエイティビティは「人に対する理解や共感」に裏打ちされていなければなりません。ビッグデータや行動観察のディープダイブを通じたインサイトが前提となります。それとともに、重要なのは「コンサルテーションを提供して終わることはない」ということです。
当社は実現まで、責任をもって伴走します。「これをやってみてはどうですか」という提言だけを納品するやり方ではありません。最初に提示する提言は、誤解を恐れずに言えば、必ずしも実施に移されるかどうかはわかりませんし、確実に成功するかどうかもわかりません。しかし、そのような現実と向き合いながら、クライアントと一緒に解決していくのです。エグゼキューションの責任を伴わないアイデアからは、本当の価値は生まれません。
