データグラビティという現実にどう立ち向かうか
有園:BXの領域で、企業の在り方が見直されているという話がありました。日本企業はモノづくりが得意な領域ですが、デジタル化でその在り方も変わらないといけない局面に来ています。先日、東芝の島田太郎社長との対談で「これからはUXが大事」という話があり、とても意外でした。dentsu Japanの方向性は、そんな時代の変化を見据えているように思います。
榑谷:私たち電通グループはパーパスとして「an invitation to the never before.」を掲げています。多様な視点を持つ人々とつながりながら、かつてないソリューションを生み出し、社会や企業の持続的な発展の実現に貢献するために存在しているという意味です。そして、それをより具体的なビジョンにしたものが「People-centered Transformation(人起点の変革)」です。どこまでいっても人が大切、人に対する理解や共感が重要ということです。そのためにも、データテクノロジーが不可欠なのです。
有園:今、GAFAMがデータビジネスを独占していると言われますが、実はチャンスは他にもあって、POSなど、スマートフォンやPC由来ではないデータもあります。日本企業にもまだできることがあると思いますが、重視する領域はありますか。
榑谷:まず、データグラビティという現実はありますよね。良質なデータを大量に持っている企業が顧客理解の解像度を高め、より良いサービスを提供しやすくなるということです。その一方で、データを巡るプライバシーやエシックス(倫理)の問題も非常に重要です。データ取得や利用にあたって、同意の透明性と厳格性を高める必要があります。
生活者にとって重要なのは、データ提供に同意することでより良い顧客体験が得られることです。そのため、顧客が積極的に提供するゼロパーティデータへの関心も高くなっています。このような流れの中で、単独のプレーヤーが、より良い顧客体験に向けたデータマネジメントを網羅的にカバーすることを不可能にします。つまり、プライバシー要件を満たした上でのデータ連携の必要性が増しているということです。
生成AI時代に高まるデータ連携の重要性
榑谷:それを解決するために私たちが活用しているのがデータクリーンルームです。早期にユースケースを積み上げることによって、新たな課題やチャンスの発見が可能になると捉えています。
有園:データクリーンルームは、個人を特定できない形で、様々なデータをつないで連携していくサービスですね。
榑谷:サードパーティのデータを勝手につなぎ合わせるのではなく、ユーザーの同意を得た上で、プラットフォーム側のデータとクライアント側のファーストパーティデータや購買情報などをセキュアにつなげることができます。2022年には、複数のデータクリーンルーム環境での分析を一元管理するシステム基盤「TOBIRAS(トビラス)」も開発しました。プラットフォームの壁を乗り越えて最適化できる仕組みです。
データクリーンルームの大規模なIDベースでクライアントの有望な顧客群を精度高く判定し、インサイトに根差した購買行動喚起を効果的に実施することでROIを向上させた実践ケースは優に数百件を超えています。たとえば保険業界のクライアントケースでは、ファーストパーティデータでは捉えられないLTVの高い潜在利用者層をデータクリーンルームの数千万IDに機械学習ベースでスコアリングしながらマーケティングを高度化することで、ROIを30%以上改善するなど、マーケティング基盤としてご活用いただいています。
有園:最後に、あらためて今後の展望を聞かせてください。
榑谷:私たちは、アイデアの力で世の中の持続的な発展に貢献していきたい。アイデアの実現までクライアントの皆さんと一緒に取り組むことで、新しい価値を社会にお届けすることに貢献していきたいと考えています。生活者の幸せが向上するよう、引き続き尽力したいと思います。
