心理的所有感と決済手段の関係
5つ目の論文は、関西学院大学の西本章宏教授と大阪大学の勝又壮太郎教授による「消費者のメンタルアカウンティングにおける心理的所有感の価値拡大効果―決済手段が選択可能な状況下でのWTPとWTAの測定と分析―(PDF)」です。
我が国においてもキャッシュレス決済が普及しつつあります。本研究では決済手段に着目し、決済手段に対する消費者の心理的所有感が、決済手段の選択・支払意思額(WTP、消費者が支払っても良いと考える最大の額)・受取意思額(WTA消費者が受け取っても良いと考える最小の額)に及ぼす影響を明らかにしています。
図1に物質型(有形)の現金と経験型(無形)の電子マネーが登場しますが、「お金」もまたデジタル技術の進化で新たな形態が生まれた事例の一つに数えられます。決済手段が消費者の支払い行動に及ぼす影響については「支払いの痛み」および「支払いの利便性」が媒介変数として議論されてきましたが、本研究では新たに「決済手段に対する心理的所有感」という視点を導入しています。
以上、紹介してきた通り、本特集号は5つの優れた研究論文によって構成されています。本特集号が読者の知的好奇心を大いに刺激し、心理的所有感を対象とした新たな研究が生まれることを願っています。
