※本記事は、2023年8月25日刊行の『MarkeZine』(雑誌)92号に掲載したものです。
【特集】社会価値創造と事業成長を考える
─ 目指すのは社会的価値創造と経済的価値向上の橋渡し、サイバーエージェントが取り組むGX事業
─ 事業成長と社会的価値の創出は、両輪。パナソニック コネクトが取り組むカルチャー改革の現在地
─ DE&I推進はビジネスにどう貢献するか 「P&Gアライ育成研修」が拓く可能性
─ 事業だけでは測れない統合的な企業価値が問われる時代に。電通の「統合諸表」が導くのは企業の未来設計図
─ 生理用品も会社の備品に。花王が社会巻き込み型で展開する「職場のロリエ」とは
─ 環境と生活者双方の利益を追求する「い・ろ・は・す」のブランド戦略(本記事)
─ チューリッヒが挑み続ける「地球環境への取り組みと社会への働きかけ」
─ デジタル広告の価値向上と社会貢献活動を実現するドネーションアドとは?
─ 誰も取り残さないブランド体験がイノベーションを生む。博報堂が掲げる「ブランド・アクセシビリティ」とは
サスティナビリティーに対応すべくブランドを刷新
──「い・ろ・は・す」は、14年前にしぼれるペットボトルが話題となり、世の中のエコに対する常識を変えたブランドの一つだと思います。元々どのような経緯でブランドの立ち上げに至ったのでしょうか。
「い・ろ・は・す」が発売された2009年当時から地球温暖化は社会問題の一つとして取り上げられており、社会全体で環境問題にアプローチする動きが加速していました。あわせて、環境に配慮した商品に対するニーズが高まっていたことから、「い・ろ・は・す」を発売し、当時まだ堅苦しいイメージのあった「エコ」に対して、しぼれるボトルを用いた簡単に楽しく参加できるエコアクションを提案してきました。
──「い・ろ・は・す」は2023年5月に14年ぶりとなるブランドテーマのリニューアルを行い、新たなブランドテーマ「ごくごく自然に未来を変える水」を掲げました。その背景を教えてください。
昨今、環境配慮やエコに対する概念が変化しています。特にSDGsの登場によりサスティナビリティー(持続可能性)という言葉に対する注目が集まるようになりました。ただ環境に配慮するのではなく、それを継続して良い未来を作っていくことが求められています。
「い・ろ・は・す」も環境に配慮してきたブランドとして、今後サスティナブルな環境配慮にどう貢献できるかを考えました。そして、調査をしてみると「無理なく、簡単に、自然体に」取り組めることが持続するためには必要であるとわかったのです。この調査結果を踏まえ、「い・ろ・は・す」を飲むだけで自然と環境に配慮でき、未来を変えていけるという思いを「ごくごく自然に未来を変える水」というテーマに込めました。
環境と生活者双方に価値を届ける
──リニューアルをする上で、どのようなことを意識していましたか。
最初は「い・ろ・は・す」誕生のルーツに立ち戻りました。発売当初から「い・ろ・は・す」は環境と生活者両方への価値を兼ね備えたブランドであることを大切にしており、双方に価値を提供することを重視してきました。
ブランドテーマのリニューアルに先駆け、2022年12月に行ったボトルの刷新においては、新たに「心地良さ」の要素を加え、両者にとって「心地良さ」のあるボトルデザインに刷新しています。
具体的には、新規石油由来のペットボトルと比べ1本当たり約60%のCO2排出削減につながる(※)100%リサイクルペットボトルを使用したまま、リニューアル前よりたたんだ後のボトル容積を2割削減し、リサイクル工程の効率化に貢献しながら、以前よりもボトルの形状をなだらかに設計し、よりおいしく心地良く飲んでいただけるようにしました。
※原料採掘からプリフォーム(PETボトルの原型となる中間製品)製造の工程における削減率。新規石油由来のPET素材から100%リサイクルPET素材に切り替えた場合。日本コカ・コーラ調べ。
サスティナブルな商品・ビジネスの多くは、環境や社会問題の解決にフォーカスが当たっていますが、そもそも人が価値を感じる必要があります。そのため、飲料体験として心地良くてサスティナブルなブランドであることを大切にしています。