家族との経営会議のすえ見つけたビジネスの形
廣澤:農業ビジネスと言っても様々な選択肢があったと思います。どのような経緯で今の事業内容に落ち着いたのでしょうか。
小林:おっしゃる通り農園を運営するのか、アグリテックと呼ばれるような農業課題をドローンやAI、IoTなどで解決するサービスを提供するのかなど、農業ビジネスには様々な選択肢がありました。
特にアグリテックには興味があったので、ドローンの展示会を視察したり、家族に免許を取ってもらったりして、農業にテクノロジーをどう取り入れるか議論していました。

廣澤:ご家族の中でそういった議論を日常的にされていること自体が珍しいケースのように感じます。事業内容を決める部分でもご家族の影響は大きかったのでしょうか。
小林:家族とは常に経営会議を開いている状態でしたね。リビングで食事をするときも、食卓のそばにはホワイトボードがあります(笑)。父は農業だけでなく土木や建築にも詳しく、アクアポニックスを作る際の技術的な部分や、ファームの地域コミュニティ作りなどあらゆるところでアドバイスをもらいました。
また、AGRIKO FARMではスタッフとして主婦の方を雇用しているのですが、主婦の方が働きやすい環境を作る上で必要なことなどを母にアドバイスしてもらっていました。
家族以外にも事業計画を練る中で生じた課題については、専門的な知識を持つ知り合いに自分から連絡をとって様々な意見やアドバイスをもらいました。中には、AGRIKOをきっかけに数年ぶりにお話しできた知人もいましたね。
ミッション・ビジョン・バリューを迷わず決められた理由
廣澤:家族のご支援もあって、事業内容は明確になっていったわけですが、AGRIKOのミッション・ビジョン・バリューは、どのように決まっていったのでしょうか。初めての起業でミッション・ビジョン・バリューを決めるのはとても難しい作業だと思うので、ぜひお聞きしたいなと。

小林:CDO(最高デザイン責任者)を迎え、具体的なコピーに落とし込んでいきました。関わってくださる方々と議論を重ねつつ、周りで起業している先輩方にもフィードバックをもらいながら決めていきました。
ただ、元々起業するときから実現したいことは明確に決まっていたので、ミッション・ビジョン・バリューに関する迷いはあまりなかったです。
廣澤:自分が起業して何をしたいかが明確になっていることがすごく幸せなことだと思いますね。何をしたいかに悩んでしまう人もいますので。
小林:確かにそうですね。私は、やりたいことを達成するための手段として、起業が一番良いと思い結果的には起業しましたが、まずは時間をかけてやりたいことを見つけることから始めてもいいと思います。私の場合農業に9年間趣味で携わった結果、課題意識が芽生えて起業につながったので。
もし農業を始めた時点で何か仕事につなげなきゃと思っていたなら、今のようなかたちではなかったはずです。すぐに答えが出なくても焦る必要はないんだなと、起業してみて思いました。