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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2025 Retail

【特集】社会価値創造と事業成長を考える

誰も取り残さないブランド体験がイノベーションを生む。博報堂が掲げる「ブランド・アクセシビリティ」とは

言われてみると多くの人が気になる「潜在ペイン」を見つける

MZ:ブランド・アクセシビリティの高い製品・サービス開発のための具体的なポイントを教えて下さい。

奥村:まずは、障害者の「コアペイン」を聞き、どのような⼯夫をしているか観察します。次に、障害者のコアペインに潜む「潜在ペイン」、つまり、言われてみれば障へきがある、もしくは障害の有無を問わず多くの人が気になるペインを⾔語化します。その潜在ペインを起点にアイデアの種を着想していく、というステップで考えると良いと思います。

MZ:ブランド・アクセシビリティを向上させることで、障害のない消費者のブランド体験が高まるようなこともあるのでしょうか?

奥村:あると考えています。たとえば、ライターは片腕の方でも簡単に火をつけられるようにするために改良されて、今の形になったと言われています。障害のある方だけでなく、片手で何かを持って火をつけたい方にとっても、便利な体験になりますよね。「障害者のため」が先か、「より便利な暮らしのため」が先かは議論になる部分ですが、同時に考えている感じがするなというのが個人的な感覚です。

編集部ピックアップ:ブランド・アクセシビリティの高いプロダクトやサービスの具体例

1.NIKE ゴーフライイーズ

ナイキプレスリリースより

【コアペイン】身体障害のある人は、靴の着脱にペインを感じている(手で靴ひもを結べない、歩いている間に靴が脱げるなど)。

【潜在ペイン】同様に、両手で荷物がふさがっている人、あるいは、すぐにでも駆け出して遊びたい子どもにとっても「手を使わないと結べない靴」は不便さを生んでいた。

【それを解消するデザインや設計】「手を使わずに履ける」フライイーズなら、あらゆる人が靴の着脱でペインを感じにくく、子どもたちは靴を履いた後の楽しい瞬間をひとときも逃さない。

2.Google Nest Mini

【コアペイン】脳性麻痺の患者を中心に、手で検索行動がとりづらいユーザーは情報収集にペインを感じている。

【潜在ペイン】多忙な暮らしを送る生活者にとっても、天気を知る・音楽を聴く・通販で注文をするといった行動がスマホの前に縛られてしまうのは、実は不便な体験だった。

【それを解消するデザインや設計】「OK Google」と話しかけるだけで、いろいろなことを調べられる。また製品開発段階で多数の脳性麻痺患者に贈られ、そのフィードバックを受けて改良に活かしている。

3.LIXIL KINUAMI

【コアペイン】介護施設で介護される人は自分の体を洗われることに抵抗感があり、逆に介護する側は1人ひとり体を洗う工数が多くかかってしまう。

【潜在ペイン】体を洗うことに対して先進的な生活者は、「自分の手で洗うのがめんどくさい」といったペインや「たっぷりの泡で全身を満たされたい」といった欲求を持っている。

【それを解消するデザインや設計】泡消防車に使われている特殊な泡生成技術を応用し、少量のソープとお湯、たくさんの空気を混合することで、きめ細かい泡を大量生成する「泡シャワー」。人の手による泡立て作業が不要で、泡を放出して、流すだけの次世代の洗浄体験を実現している。

「ビジネスである」と言い切ることが第一歩

MZ:最後に、ブランド・アクセシビリティを推進していく上での今後の展望や、マーケターに対するメッセージをいただけますか?

奥村:今回、ミライロ・リサーチを実際に活用して、自分が担当するクライアントの商材を障害者の方々に触わっていただいたのですが、やはり自分には見えていなかったペインがありました。こうした直接の声を基にクライアントのみなさまとディスカッションして、世の中に「なんで今までなかったんだろうね」と言われるものを出していきたいです。

垣内:ブランド・アクセシビリティに関して、日本はまだ、世界に示せるようなプロダクトやサービスの事例を作れていません。ですが、間違いなく作れると思っています。

 日本人は特に、障害者に関する取り組みを「ビジネス」と言うことに抵抗があるかもしれません。ですが、「誰1人取り残さない」と言うのであれば、ビジネスとしてやっていくことに意義があると考え、そう言い切らなければならないと考えます。高齢化が一番進む日本だからこそできるビジネスもあると思うので、事業として成長させていくことを前向きに考えていただけると良いのではないかと思います。

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この記事の著者

落合 真彩(オチアイ マアヤ)

教育系企業を経て、2016年よりフリーランスのライターに。Webメディアから紙書籍まで媒体問わず、マーケティング、広報、テクノロジー、経営者インタビューなど、ビジネス領域を中心に幅広く執筆。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/09/15 09:30 https://markezine.jp/article/detail/43194

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