動画で日本赤十字社のパーパスを具現化
――YouTube Works Awards Japan 2023の「Force for Good」部門は、YouTube広告を活用して生活者との対話を深める・コアファンへブランドメッセージを届けるなど、収益やビジネスインパクトを超えてブランドパーパスを表現し、社会的に意義のあるコミュニケーションを展開した企業に贈られます。受賞された日本赤十字社のパーパス、目指すところを伺えますか。
日本赤十字社(以下、日赤)では、使命として「人間のいのちと健康、尊厳を守る」ことを掲げて活動しています。
日赤には病院の運営や献血、福祉事業、ボランティア、講習など大きく9つの事業があります。そのすべてが自分や周りの人、大切な人を含めたすべての人の命や健康、尊厳を守ることにつながっています。その中でも、今回のYouTube Works Awards Japan 2023で受賞した「おうちの中のモンスター」は「防災」をテーマとした作品です。
「知っているけどできていない」を行動に移すには
――今回も絵本アニメーションでのアプローチですが、なぜ子どもに向けたアプローチをしようと思われたのですか。
当初、いろいろなアプローチの提案があり、中には強烈に記憶に残るようなおもしろい提案も含まれていました。その中から子どもたちにもわかりやすい絵本アニメーションというアプローチで、かつインパクトがあるものになるよう、絞り込んでいきました。
テーマとする「防災」は、大事だとわかっていてもなかなか能動的になれないことの1つです。店舗などで防災コーナーを見ても、なかなか購入には至らないですよね。たとえば、水の貯蓄があったほうがいいとわかっていても「重たい水を持って帰るのは無理だから、今日はやめておこう」となりやすい。
行動を促すためには、面倒・今度にしようという気持ちを乗り越えられるくらい「はっと気づかせるアイデア」をコンテンツに含めなければならないと考えました。それを踏まえると、強烈に記憶に残るようなおもしろい提案でも、それだけでは気づきや行動につながりづらいのではないでしょうか。
子どもは気に入ったテレビのセリフなどを口にすることが多いです。「おうちの中のモンスター」の中のフレーズを子どもが家族に伝えることではっとする、あるいは、恋人など大切な誰かに言われることで気づきを重ねるアプローチを意識しました。結果として、多くの人に見ていただきやすい入口になったのかなと思います。
――今回の取り組みと前回の取り組みと共通している部分と、今回さらにブラッシュアップした点やチャレンジした点があれば教えてください。
前回の「不安が見えなくなるメガネ」が受賞したときに審査員の方が「こういうアプローチがあったのか」という驚きをもってお話されていたことが印象的でした。「バイアス」という一見わかりづらく、理解が難しい言葉を、こういう表現でコンテンツとして仕上げたことを評価していただいて、方向性は間違っていなかったのだろうなと感じました。
それを受けて、次のテーマを考えるときにも、「みんなが知りたくて、拡散したくなって、多くの人が救えるようなテーマとは何だろう」と思考を進めました。
今回の「おうちの中のモンスター」で大きく訴求している「家の中の危険」自体は、頭ではわかっていることだと思います。家具を固定したほうがいいことも、窓ガラスが割れたときのために靴を用意しておいたほうがいいことも知っている。でも、実際に行動できていない。そのため、家具類の転倒・落下・移動が地震時の怪我の原因の3~5割を占めるとも言われています。
人は当事者意識を感じると、最後のスイッチが入ります。今回は地震が来る前に「家の中の危険」に気づき対策してもらうことで、一人でも多くの命を救うことを目的としたチャレンジになっています。