蓄積認知ツールのテレビCM、顧客の声を聞くことが重要
――最初に、お二人の担当業務について教えてください。
和田:私たちFOOD & LIFE COMPANIESは外食産業において、3つの柱を持っています。1つは回転すしブランドの「スシロー」。もう1つは京樽グループで、ここでは回転寿司の「みさき」とお持ち帰り専用の「京樽」などを展開しています。そして傘下のFOOD & LIFE INNOVATIONでは「杉玉」という大衆寿司居酒屋ブランドを経営しています。
私が所属するマーケティングリサーチ部は市場予測のほか、自社データや外部データを活用したマーケティング戦略の立案や分析などを行っています。
若林:REVISIOは、一般視聴者様のご自宅にあるテレビの上に人体認識センサーを設置し、実際に視聴されたデータを収集・分析している企業です。従来の視聴率はテレビのオン・オフで見ているかいないのかを測っていましたが、REVISIOでは実際にセンサーを置くことで、地上波/MX/BSで流されたCMを視聴者が本当に見ていたかどうかという注視データを計測していることが特徴です。
私が所属するセールスチームでは広告主の企業様とコミュニケーションを取り、各企業さまの課題に沿ってデータの提供を行っています。FOOD & LIFE COMPANIES様とは、主にクリエイティブ素材の分析をご一緒しています。たとえば、1秒ごとの視聴データをご提供し、意図した部分を視聴者は本当に見ていたかどうか、ターゲットとしている層が視聴しているのかどうかを分析してご報告しています。
――FOOD & LIFE COMPANIESさんは主にスシローブランドでテレビCMを展開されています。御社のマーケティング戦略におけるテレビCMの位置付けと、テレビマーケティングに対する姿勢や方針をうかがえますか。
和田:テレビCMの位置付けは、認知と残存蓄積効果を期待して、広く私たちのキャンペーンを知っていただくためのものです。それにはもちろんスシローというブランドや回転寿司について知っていただいていることが前提になります。ありがたいことにスシローブランドは非常に高い認知をいただいているので、高い認知をベースにテレビCMを通してキャンペーンを知っていただけるよう取り組んでいます。
そしてテレビマーケティングについてですが、あえて言ってしまうと、テレビはコンバージョンの効果を数値として見ることはできません。一方、蓄積効果の役割として、継続的に幅広い世代にリーチできるタッチポイントとして活用しています。しかし当然、作りっぱなしで良いわけがありませんので、REVISIOさんのデータを見て「どこが消費者に認識、受容されたか」を把握し、お客さまの動向や需要を持続的に見ています。
また当社は外食産業です。美味しいものを提供し、ご満足いただくには、やはりお客さまの声に対して真摯に耳を傾けることが大事だと考えています。CM視聴の質やクリエイティブの捉えられ方について、コストをかけて調査するのもそのためです。
――FOOD & LIFE COMPANIESさんでは、REVISIOさんの「Telescope」を活用しているそうですが、これはどのようなソリューションですか?
若林:Telescopeは、テレビCMのメディアプランニングも、クリエイティブも、評価と改善をこれひとつで簡単に見られるWebツールです。
テレビCMの広告効果といえば、従来はアンケートベースの意識調査であったり、強制的に視聴していただいて調査を行ったりというやり方が一般的でしたが、Telescopeは実際に地上波で流れているCMを見ている瞬間のデータを取得するので、リアルな視聴結果がわかります。これにより、出稿時にしっかりターゲット層に届いていたのかが把握できるので、振り返りから次のプランニングまで一気通貫で戦略を立てることができます。
視聴データは最短2日後にユーザー企業様のお手元で確認できます。またFOOD & LIFE COMPANIESさまの場合は、当社のアナリストやデータサイエンティストが追加でレポートを提出しています。
客観的でリアルタイムなデータを求めて
――FOOD & LIFE COMPANIESさんがテレビCMの効果測定ツールを導入するに至った背景や課題をうかがえますか?
和田:外食産業の中でも、回転寿司がテレビCMに注力し始めたのは2000年代のことだと記憶しています。当時、私たちはデータで成果を見ることよりも、とにかくキャンペーンを打ってスシローのことを知ってもらうことと、回転寿司の品質は本当に素晴らしく美味しいものであることを訴求するほうを優先していました。
そのため当初はテレビCMに関するデータがほとんどなく、成果は店長さんに現場の肌感覚で共有してもらっていました。まだ店舗数も少なく、社内での情報共有だけで十分だった側面もあります。
しかし現在は店舗数も600店を超え、カバーするエリアも広くなり、ありがたいことにお客さまも大変多くなってきました。その中で、きちんとデータを確認して客観的にマーケティングを進めていきたいという課題が出てきたのです。
もちろん広告会社さんからいだたくレポートはあります。しかし広告会社さんのレポートは、自社が提供したサービスのパフォーマンスを確認するものなので、客観的な改善点や課題への言及はされにくく、実施からのタイムラグも発生します。そうではなく、お客さまの視点をリアルタイムで把握したいと考えていました。
――パートナーにREVISIOさんを選ばれたのは何故ですか?
和田:確かに、類似のサービスを展開している企業は他にもあります。ですがREVISIOさんは米国での実績があり、その上で日本市場を開拓してきたという信頼感もありますし、そんな時に当社とうまく出会いがあって、今日に至っています。
アナリストとともに、データの裏側にあるロジックを読み解く
――具体的にTelescopeをどのように活用しているのか教えてください。
若林:当社は各キャンペーンの1素材1素材の1秒ごと、たとえば15秒のCMであればその1秒ごとの注視度の推移データを提供しています。これにより、どのポイントで注視度が上がり、どこのポイントで下がっているかがデータで把握できます。また関東・関西というセグメントや、各種セグメント別で注視度を把握できる形で提供しています。
和田:十数年前であれば、お客さま視点を入れたテレビCMの視聴データのレポートが上がってくるのは1カ月後でした。そのころには別のキャンペーンのことで頭がいっぱいですし、振り返りをしてもすぐに反映できないのですが、Telescopeは2日後にデータが上がってきて、クリエイティブのどこにどの層が反応しているのかブレイクダウンして確認できます。また競合比較を行っており、自社のポジションもチェックしています。
手順としては、クリエイティブチーム側の「このポイントを確認してほしい」という要望をREVISIOさんにインプットし、それを踏まえてレポートしていただいて、結果を生かしています。具体的な内容は公開できないのですが、ニュートラルな消費者の声を確認できる大事な情報になっています。
報告会では実際にREVISIOさんのアナリストの方がデータを分析し、その裏側にあるロジックまで解説していただけるので、とても役立っています。データを確認するだけでなく、その先にあるフォーキャストが軸ですので、そのベースとなるデータの読み方やロジックを丁寧に教えていただけることは当社にとって非常にありがたいです。自社内のスタッフ、客観的な視点を持つパートナー企業の方々が自由にディスカッションし、ファクトドリブンなマーケティングができている状況に非常に満足しています。
――どのようなことをディスカッションされているのですか?
和田:宣伝している企業側としては、やはり自社の主張にハイライトを当てて見ていただきたいものですが、第三者の冷静な視線を通すと、お客さまはまったく違った目線でテレビCMを見ているとわかることがよくあります。この「誰目線で、何を届けているか」という点について、REVISIOさんがデータに基づいてご説明してくれるので、非常にありがたいです。
実はTelescope導入前は、リアルタイムに成果を可視化できる点に期待していて、アナリストさんとの報告会をそれほど重視していませんでした。しかし、アナリストさんから得られる知見やロジックが素晴らしくて、いい意味で期待外の成果を感じています。
お客さまのインサイトは、上辺だけの感覚やデータでは理解できません。テレビCMを作る側としては、消費者のインサイト(深層心理)を正しく読み取るのがまず大前提で、その上でクリエイティブを制作するにあたり、モーメントを切り取る時に何がトリガーなのか掴み、購買行動を起こさせる心の声にどうアプローチしていくかが重要ですし、面白みでもあります。そのヒントをREVISIOさんのアナリストの方にデータで示していただいています。
年代ではなくライフスタイルで変わる“刺さる”ポイント
――Telescopeを活用するなかで得られた知見や成果を教えてください。
和田:知見でいえば、セグメントが挙げられます。以前は機械的にM1やF1といったセグメントで反応を見ていたのですが、たとえば一口にM1(20〜34歳の男性)といっても多様なライフスタイルの方がいますよね。
独身の方もいれば、結婚して小さなお子さんがいる方、独身同士のカップルの方など暮らし方は様々です。それを年代で1つに括ってしまうのはおかしいのではないかということで、昨年からライフスタイルをベースに当社独自のセグメントを設定するようになりました。たとえば家族構成が「1人」「2人」というものや、「子どもが何歳以下で何人いる」といったように、年齢という軸を外したのです。
すると、従来のセグメントで見ていたときとはまったく違う結果が出て、とても驚きました。従来のM1〜M3層で見ていたら、お客さまの深層心理には絶対たどり着けません。それを実感しました。お客さま側から見ても、自分を年代でひとくくりにされるのは違うと思いますよね。
――「違う結果」とはどのようなものでしょう?
若林:視聴が上がるポイントや、訴求ポイントが届いているかどうかなど、いろいろな点で通常の属性とライフスタイルで分けた属性で違いがありました。
和田:一例を挙げると、価値の違いですね。スシローの企業理念は「うまいすしを、腹一杯。うまいすしで、心も一杯。」というもので、品質の良いお寿司を気軽に食べていただくことを目指しています。しかし、その「気軽」は人によって異なります。家族がワイワイ食事をできることかもしれないし、お寿司の価格が500円であることかもしれないし、1人で食べることが気軽と感じるかもしれません。
生活のバックグラウンドを踏まえてデータを見ると、ある人は「お得です」という部分に反応し、ある人は「産地」や「家族」に反応している。ポイントが異なるのです。こうしたことをデータドリブン、かつ競合と比較しながら見られるところがTelescopeのメリットです。
クリエイティブ制作チームが「このクリエイティブは絶対に反響がある」と思っていても、目論見が外れて、まったく異なる部分で反応があることもあります。それがデータで確認できるのです。
今後の課題はテレビCMとデジタル広告のハンドリング
――データを使ったクリエイティブ改善と聞くと、運用型デジタル広告のようなアウトプットのチューニングをイメージしがちですが、消費者インサイトの奥深くを捕まえるなど、Telescopeを大きな枠組みで活用なさっているのですね。
和田:デジタル広告はテレビCMと異なり、バイイングの期間も柔軟ですし、A/Bテストをしてすぐにクリエイティブを変更できますし、フレキシブルなコミュニケーションツールです。これに対し、テレビCMは放送する枠を購入するので段取りやある程度の予算が必要ですし、準備に時間がかかるため頻繁に変更できません。変えられないからこそ、調査設計がとても大事になってきます。誰に何を届けられるかを見誤ると、自己満足だけのクリエイティブが続いてお客さまに見放されてしまいます。自分たちが何を訴えたいブランドなのか、お客さまにとってなぜそのキャンペーンが必要なのか、企業はどのエモーショナルな心理に寄り添ったら購買意欲向上のきっかけになるのか、そしてその結果、WIN&WINの関係を双方得られるものになっているか、が大切です。
また、テレビCMとデジタルとの親和性も大切です。認知、蓄積残存効果を狙うテレビCMでは一貫したメッセージを担保しつつ、デジタルでは同じクリエイティブを使いながら、よりそのメッセージを深掘りするキャッチコピーに変えてみるなど、それぞれの媒体特性を生かして広告をハンドリングしていくことが必要だと考えています。
――では、MMM(マーケティングミックスモデリング)に関して、FOOD & LIFE COMPANIESさんはどのように取り組んでいらっしゃいますか。
和田:丁度REVISIOさんにも意見を伺いながら進めているところです。MMMも設計の仕方によって成果の出方が異なります。Webを良く見せたければそのように設計できるし、テレビも同じです。重要なのは企業側の色々な思惑がある中で、REVISIOさんのように他社経験も豊富でかつMMMモデルの組み立てに精通し、データの見方を知ってロジックを組み立てられるアナリストの方がいらっしゃると心強いです。
若林:そこは当社の強みですね。テレビだけでなく広告媒体が多様化するなか、予算配分をどうしていくか悩んでいるクライアントさんは多いです。当社はアナリストやデータサイエンティストが在籍しているので、各社の悩みを仮説として落とし込んでいくことができます。
異なる業界も参考に、今後もテレビマーケティングを推進
――REVISIOさんから見て、FOOD & LIFE COMPANIESさんの取り組みで他社にとっても役立つところや参考になる部分はどこにありますか?
若林:FOOD & LIFE COMPANIESさんは競合他社や他の事業分野の企業さんについてもウォッチしていることが特徴です。たとえば「成功しているテイクアウトの企業さんでは、ここをどんな表現にしているのですか」というテーマをいただくこともあります。自社にとどまらない知見をとても上手に活用していると思います。
和田:当社は外食産業なので、広義で言えば「食べたい気分」であったり、「食後の満足と共有」であったり、段階的に切り口を変えて消費者の反応をウォッチしています。先ほど言ったモーメントの奥にある深層心理という意味では、業界は違えどつながっていると考えていますし、異なる業界のインサイトを参考にすることはこれからの常識になると思います。
――なるほど。それでは最後に、御社は今後テレビマーケティングの取り組みをどのように進めていきたいか展望をうかがえますか。
和田:繰り返しになりますがテレビCMは、私たちのことを様々な角度で伝える蓄積認知のツールだと考えています。もちろんテレビCMだけがツールではありませんが、日本のマーケットではまだ大きな役割を果たしています。テレビマーケティングにおいて、私たちが常に市場の変化に対応しつつ、消費者の皆様に正しいメッセージを正しく伝えられるように、REVISIOさんの力をこれからも頼りにしたいと考えています。
若林:私たちもFOOD & LIFE COMPANIESさんが常にフレッシュに映るポイントをデータでお伝えしつつ、様々な媒体を活用して広告予算の最適化・効率化を図っていけるようにご支援したいと思います。
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