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実践企業に聞く!経済価値と社会的価値の両立

なぜパタゴニアの発信と行動にはブレがないのか?レスポンシブル・カンパニーの哲学と仕組み

的を射ること自体を目的にしない

菅原:他に私が印象を受けた取り組みとして「パタゴニア プロビジョンズ」が挙げられます。パタゴニア プロビジョンズは、オーガニックで環境負荷の少ない、持続可能な農業や調達方法を支援する食品コレクションとのことで、昨年末は「パタゴニアから日本酒が…!」と驚きました。

 なぜパタゴニアさんが食品事業を展開するのか。その経緯は創業者のイヴォン・シュイナード氏の著書を読めばわかるでしょうが、読んでいない方々には改めて丁寧な説明が必要になると思います。先ほどストーリーテリングのところでも触れましたが、パタゴニアさんらしいと感じつつ、短いフレーズで即時の反応を期待するトレンドのマーケティング手法と比べて、時間と手間がかかり大変そうだと思います。

篠:私自身の言葉ではなかなか説明しにくいですが、創業者のシュイナードは「正しいことをやれば利益がついてくる」と話しています。以前は日本の弓道を例に説明していました。的を見た後はプロセスに集中すること。そうすれば最終的に的を射ることができる。つまり売上につながるのだと。

菅原:なるほど。的を射ること自体を目的化するのではなく、1個1個のプロセスを大事にしていくことで収益につながるということですね。

篠:実践する中では時にパーフェクトな形で取り組めないこともあります。その時には一度立ち止まって、また改善していくといったことを繰り返します。登山やクライミングと一緒ですね。きちんと下調べして挑んだとしても天候はいつどう変わるかわからないものです。私たちもこのような不確実性の中でビジネスをしているため、起きていることを理解しながら正しい選択ができるようにしているものの失敗することはあります。その際は立ち止まって改めて考え直そうと。

 約50年前、イヴォン・シュイナードたちは、岩に損傷を与えないようクリーンクライミングを提唱し、当時売上の半分以上を占めていたピトンの製造事業から撤退しました。私たちはパーフェクトではない、まだ改善の余地があるといつも考えています。

パタゴニア創業者のイヴォン・シュイナード氏
パタゴニア創業者のイヴォン・シュイナード氏。自身もクライマーで、首には”クリーンクライミング”で提唱した回収可能なギア、ナッツ等が掛けられている。Tom Frost © 2023 Patagonia, Inc.

同じ方向を向く仲間とコレクティブに取り組んでいく

菅原:中長期で取り組む必要性は感じていても、実際は短期的な利益を出すことに集中してしまい、なかなかうまく進められない読者もいると思います。そのような方に篠さんからメッセージをお願いします。

篠:具体的に何を解決したいのかを根本から考え、そしてそれを成し遂げるためにはどうすれば良いかを知るために現状確認をすることが大切だと思います。

 私たちも、製品に使用している素材や加工処理方法などについてそれぞれの現状と目指す場所をはっきりさせ、そこに行くために解決しなければならない課題をずっとホームページ上で発信し続けています。するとそれを見た方たちが「私たちはこんなソリューションを持っているよ」とアプローチしてくださることがあるんです。

菅原:想いが伝播し、仲間が増えていきますね。

篠:おっしゃる通りです。気候変動の加速など、パタゴニア単体では解決することが難しい問題が多々あります。同じ方向を向いている方々と、一緒にコレクティブに取り組んでいく必要性がますます高くなっていくでしょう。

菅原:本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。

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この記事の著者

和泉 ゆかり(イズミ ユカリ)

 IT企業にてWebマーケティング・人事業務に従事した後、独立。現在はビジネスパーソン向けの媒体で、ライティング・編集を手がける。得意領域は、テクノロジーや広告、働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/04/24 15:00 https://markezine.jp/article/detail/43661

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