ステマが規制対象に。インフルエンサーマーケティングの温度感は?
MZ:少し話題を変えます。2023年10月より、ステルスマーケティング(以下、ステマ)が規制対象となりました。これを受けて、インフルエンサーマーケティングに対する企業の温度感はどうなっていますか?
平賀:みなさん戦々恐々としています。法的な観点はもとより、倫理的な観点を踏まえた判断が難しく、「今のキャンペーンをストップしたほうがいいでしょうか?」「この先、インフルエンサーマーケティングどうしていけばよいでしょうか?」など、想定以上に多くのご相談が寄せられています。
これにともなって、マーケティング予算の組み方にも変化がありそうです。リスクを鑑みて、インフルエンサーマーケティングの予算を減らす企業も少なからず出ています。とはいえ、インフルエンサーマーケティング市場の規模は右肩上がりを続けており、事業主側からの注目度やニーズは大きく変わらないだろうと見ています。
MZ:変わらないところと変えざるを得ないところと、ひとつの転換点という感じですね。
平賀:そうですね、この問題には色々な観点があると思っています。たとえば、インフルエンサー関連の施策でお咎めを受けてしまったとしたら。その案件を担当している1人のマーケターとしては社内での進退に不安が生じてしまうでしょうし、会社としては「来年からこの施策は止めましょう」という判断になるかもしれません。
ただ、ステマ規制のリスクがあるから訴求を弱めるというのは本末転倒で、それでは事業成長は望めません。そんな塩梅の難しさを感じつつ、今一度立ち止まり、倫理的な観点も含めて自社の取り組みを考え直すタイミングなのだと思っています。
より健全で、広告価値のあるインフルエンサーマーケティングの推進を目指して
MZ:1億総クリエイター時代とも言われる現代、インフルエンサーマーケティングはこれからどうなっていくと思われますか?
平賀:1億総クリエイター時代とは、つまり一般人がクリエイターとしての権利を得たことを意味しており、これは素晴らしいことだと思います。ただ、クリエイターと一緒に仕事をする企業側の視点に立つと、やはり数が増える分、リスクが高まっていることも間違いありません。
マーケティングに関する情報が解禁前にSNSで漏れてしまったり、オリエンの段階で良かれと思ってプロモーション企画について発信されてしまったり、こうしたリスクは今後さらに高まっていくでしょう。マーケティングの前段の部分とも言えますが、こうしたコミュニケーションや契約に関する部分がより重要になってくるのではと考えています。
MZ:たしかに、個々のインフルエンサー(クリエイター)とのコミュニケーションコストは高まっていきそうですね。
平賀:そうですね、ただ、インフルエンサーの情報でモノが売れる時代でもあるので、3割の予算はSNSにかけていく「&Social理論」を推奨していければと思います。
MZ:最後に今後の展望をお聞かせください。
平賀:インフルエンサーマーケティングに限った話ではありませんが、我々1社でできることは非常に限られていると考えています。ソーシャルマーケティングやインフルエンサーマーケティングをより健全なものにしていくためには、芸能事務所やイベント会社、広告主企業、我々と同じく支援側にいる企業と皆さんで取り組んでいかなければなりません。

こうした考えのもと、CARTA MARKETING FIRMでは、現在ソーシャルマーケティングのコンソーシアム計画を立ち上げており、ここを起点に情報や知見を共有させていきたいと考えています。未来のクリエイターを発掘しながら、広告主様の事業にもしっかり価値を還元していける循環を作ってまいります。
