値上げ対応で重要な「適正価格」の探索
2022年は、急激な円安や原油高にともなう原材料価格の高騰により値上げラッシュが起こった。幅広い商品カテゴリーが値上げ対象となり、たとえばキャノーラ油は平均価格が値上げ前の150%に、小麦粉は109%、レギュラーコーヒーは116%に上昇するなど(インテージ調べ※1)、食品を中心に連日値上げに関するニュースが取り上げられた。この値上げにより、生活者の行動は変化し、代替品の購入や大容量買いによるコストカット、特売品やクーポンの利用などが増加した。
一方で、この値上げの背景には、企業が利益を確保するための試行錯誤の末、避けられない決断があった。原材料価格や運送コストの高騰は、収益を圧迫し、価格に転嫁せざるを得なかったのである。だが、一定の顧客離れは覚悟の上での値上げの実施ではあるものの、値上げの幅を誤れば生活者の購買意向は大幅に低下し、競争力の喪失や市場シェアを急減させる可能性があり、利益を確保するための値上げがかえって利益減を呼ぶ結果になりかねない。
そのため価格変更は、単に上昇したコストを積み上げるのではなく、競争力を維持し、収益改善を図ることができる「適正価格はどこか?」を探索することが必要と言える。最近では、一部生活者に“節約疲れ”の動きがみられており、さらなる購買行動の変化が見られている(インテージ調べ※2)。このタイミングでこそ、生活者の変化をとらえた適正価格の探索が求められている。
※1 値上がり拡大 店頭販売価格の高騰は食品中心に広がる(インテージ調べ)
※2 値上げは高止まり傾向も、一部生活者に節約疲れの動き(インテージ調べ)
データから「適正価格」を導く
価格変更の理想形は、値上げをしても販売量を減らさずに利益を高めることである。当然、値上げによる顧客離れをゼロにすることは難しいが、生活者の“価格受容性”を捉えた値上げを行えば、顧客離れを抑えることができる。
価格受容性とは、生活者が購入するときに受け入れることのできる価格帯である。生活者には価格を上げても購買数量に大きな影響を及ぼさない受容領域があり、逆に言えば受容領域を超えた値上げは一気に購買量を減少させるリスクがある。価格受容性を捉えた価格変更であれば、販売量の減少を食い止め、利益を担保することができる。
商品の販売価格は、必ずしも一律ではない。店舗によっては、定番価格で販売されることもあれば、日常的に特売価格で販売されていることもある。いつ(年月日)、どのくらいの人が(客数)、何を(商品名)、いくらで(売価)、何個(数量)売れたかの情報を含むPOSデータから分析を行えば、各商品の販売価格と販売量の関係を明らかにでき、生活者の価格受容性の特定、それを踏まえた適正価格の探索が可能である。