クラウドファンディングとは?
そもそもクラウドファンディングとは、どのような取組みを指すのか理解を深めましょう。
クラウドファンディングの仕組み
クラウドファンディングとは「Crowd=群衆」「Funding=資金調達」という言葉から成り立っています。
具体的には、インターネット上で商品・サービスのアイデアやイベントのプログジェクトなどの情報を発信し、不特定多数の支援者から資金調達を行う仕組みです。アイデアやプロジェクトに対し、より多くの支援者に「応援したい」「この商品(サービス)を世に出してほしい」といった応援や共感を促すことで、多くの資金を集められます。
資金調達の方法は多岐にわたりますが、主な方法は寄付型や購入型です。
寄付型は、支援者が資金を出資しても、一般的にはリターン(お返し)が発生しません。一方の購入型は、資金を出資したリターンとして商品やサービスを受け取れます。
このような特徴があるため、寄付型は社会的貢献度の高いプロジェクトで用いられることが多い傾向にあるでしょう。また、購入型は支援者に「使ってみたい」「ほしい」と思わせる商品・サービスでなければなりません。
このほかにも「融資型」や「ふるさと納税型」などがあり、クラウドファンディング運営企業やクラウドファンディングサイトによって異なります。
クラウドファンディングの市場規模
資金調達の主な手段は銀行からの融資ですが、審査が厳しいため中小企業やスタートアップなどは融資を受けにくい傾向です。そのため、銀行以外からの資金調達の方法としてクラウドファンディングが注目を集めており、実際に日本国内では着実に市場規模を拡大させています。
2021年度の矢野経済研究所の調査によると、過去の市場規模(年間の新規プロジェクト支援金額ベース)は以下のような推移です。
- 2017年度:1,748億6,800万円
- 2018年度:1,834億4,500万円
- 2019年度:1,567億7,900万円
- 2020年度:1,846億7,900万円
- 2021年度:1,642億2,100万円
増減はあるものの、市場規模は高い数値で推移していることがわかります。また、2022年度は1,909億8,200万円とさらなる上昇を見込んだ予測でした。
(出典:国内クラウドファンディング市場の調査を実施(2022年)|株式会社矢野経済研究所)
クラウドファンディングをマーケティングに活用する方法
資金調達方法としてイメージが強いクラウドファンディングですが、マーケティングではどのように活用できるのでしょうか。マーケティングへの活用方法を紹介します。
なお、ここで紹介するのは購入型のクラウドファンディングとなります。
新商品・新サービスのテストマーケティング
新商品や新サービスをリリースする際、市場でどのくらい受け入れられるのか事前に予測しておくことが重要です。理由として、市場にマッチしない商品・サービスを大規模にリリースすると、大量の在庫を抱えたり膨大な広告費が無駄になったりするなどのリスクがあります。逆に、予想以上に売れ行きが良い場合、生産が間に合わなかったり対応できる人手が足りなかったりするといった事態も起こるでしょう。
こうしたときに役立つのが、テストマーケティングです。事前に消費者の反応を確かめることができるため、事業の規模や商品・サービスの質などの見直しができます。
しかしテストマーケティングには、広告費やテストしてくれる消費者を集めるといったことが必要です。
そこで、テストマーケティングにクラウドファンディングを活用することで、こうした課題を解決できる可能性があります。資金が集まればニーズがあると言えます。反対に、資金が十分に集まらない場合は、ニーズに合っていないと仮説を立てられるでしょう。
クラウドファンディングサイトを活用すると、無料で掲載できるうえに、著名なサイトであれば集客力も期待できます。また、クラウドファンディングは支援してくれた人に対してリターンを提供できるため、予約販売のように余剰在庫を抱えるリスクの削減も可能です。
リターンを利用してくれた人にアンケートやインタビューを実施することで、商品・サービスに関する感想を集めることができるため、さらなる商品・サービスのブラッシュアップにもつながるでしょう。
日本未発売の海外製商品・サービスのテストマーケティング
テストマーケティングを活用できるのは、自社の商品・サービスをリリースするときだけではありません。日本未発売の海外製の商品・サービスの販売を開始したいときにも、クラウドファンディングを活用したテストマーケティングが有効です。
海外製の商品・サービスの中にも、質が高く日本人が好むものは多々あります。しかし日本でまだ認知されていないため、需要があるかどうか判断できず、どのくらい仕入れたら良いのかわからないということも珍しくありません。
そこで、クラウドファンディングを活用してテストマーケティングを実施することで、事前にどのくらいの需要が見込まれるか予測できます。
また、クラウドファンディングの支援者たちはより有意義なプロジェクトを支援したいと考えているため、流行や最新情報に敏感な層が多い傾向にあります。そうした層の生の意見を聞けるため、日本で受け入れられるか、より受け入れられるためには何をしたら良いか、といった方向性が定まるでしょう。
新規顧客・ファンの獲得
新しい商品・サービスをリリースした際、新規顧客を獲得するために、まずは最初の購入につなげなければなりません。しかし、まだ認知されていない商品・サービスの場合、なかなかスムーズに購入まで進まず、新規顧客の獲得に苦戦することもあるでしょう。
さらに、自社の商品・サービスに価値を見出してもらってファンへと育成するためには、より多くの時間がかかります。
しかし、クラウドファンディングでは自分の想いや商品・サービスの魅力を存分に伝えられるため、最初の購入へとつなげやすいと言えます。また、購入型のクラウドファンディングの場合、リターンとして商品・サービスを提供するため、支援者に気に入ってもらえればリピート購入やアップセル・クロスセルにつながり、ファンへと育成できるでしょう。
データ分析によるターゲティング
クラウドファンディングを行うと、どのような人が支援してくれたかというデータの入手が可能です。支援者の年代や居住地などを分析することで、商品・サービスがどのような層に求められているのか把握できます。
また、アンケートやインタビューを行うことで「なぜ支援したのか」「商品・サービスを使用してどうだったか」などの感想などからニーズを分析できるでしょう。
こうしたデータは、ターゲティングへの活用が可能です。たとえば、Web広告を出稿する際にターゲットとなる属性を指定して広告を配信することで、接点を持ちたい層にピンポイントでアプローチできるため広告費を効率的に投入できます。
PR効果
クラウドファンディングを活用することで、商品やサービス、イベントなどのPRにつながります。
通常のPR活動は、各メディアへのプレスリリース配信、各メディアでの取材対応、自社サイトやメルマガなどによる情報発信など、さまざまな業務が発生するため時間もリソースも必要です。さらにテレビCMやWeb広告などの出稿も併用すると、膨大なコストもかかります。
しかし、クラウドファンディングの場合は、無料でプロジェクトを掲載できるサイトが大半です。集まった支援金に対して手数料が発生しますが、掲載自体は無料の場合が多いため、広告費をかけることなく商品やサービスをアピールできます。
集客力の高いサイトであれば、掲載してすぐに多くの人の目に留まるため、時間をかけることなくPRできる点も魅力です。
クラウドファンディングのマーケティング事例3選
ここでは、実際にクラウドファンディングをマーケティングに活用した事例を3つ紹介します。
日本茶セレクトショップの事例
日本茶のセレクトショップの企画・運営を行うThird Bayは、クラウドファンディングサイト「CAMPFIRE」を活用し、PRやテストマーケティングを行いました。
単にプロジェクトを掲載するだけではなく、知り合いからのSNSでのシェアやメディアの掲載などを活用して拡散することで、最終的には5,000人以上の支援者を集めることに成功しました。
さらに、支援した際のリターンとして、おしゃれなお茶の缶やタンブラーなどのアイテムや、ワンドリンクチケットやフリーパスなど来店につながる仕掛けなどを用意しました。そして支援者の反応を分析してテストマーケティングを行ったことで、今では缶だけを求めて来店する人もいるそうです。
家電製品の事例
小泉成器は、自社ブランドの家電製品の企画・開発と、国内外のメーカーの代理店業務を行っています。しかし、家電は同じジャンルにも複数製品が存在し、差別化が難しい状況で課題を抱えていました。
そこでクラウドファンディングサイト「Makuake」を、製品のコンセプトを丁寧に伝えるPRツールとして、さらに一般発売前に消費者の反応を知ることができるテストマーケティングツールとして活用しました。
「カルスイ」というスティッククリーナーと、「かんまかせ」という熱燗を飲む際に使う酒燗機の2つのプロジェクトを掲載したところ、想定の5倍以上の支援につながったとのことです。
キャンプ用品の事例
寝袋やダウンジャケットなどキャンプで活用できるアイテムを開発するナンガ(NANGA)は、「Makuake」で寝袋とマットのセット販売のプロジェクトを掲載し、これまでNANGAを知らなかった層にもリーチできました。その結果、想定以上の支援を得られただけでなく、40店舗以上から商品を取り扱いたいという反応もあったそうです。
支援者のデータや広告に反応した人の属性などのデータを分析し、本格的にリリースしても成功できるという判断に至り、新商品としての正式販売につながりました。
クラウドファンディングサイト3選
最後に、マーケティングに活用できるクラウドファンディングサイトを3つ紹介します。
Makuake(マクアケ)
「Makuake」は、アクセスユーザー数1,200万人以上を誇る、集客力の高いクラウドファンディングサイトです。
すべてのプロジェクトに担当キュレーターが配置され、ページ設計やプロモーションプラン策定などをサポートしてくれるため、初めてのクラウドファンディングでも安心して利用できます。
サイト掲載料は無料で、手数料20%が発生します。
CAMPFIRE (キャンプファイヤー)
「CAMPFIRE」は、プロジェクトのジャンルや規模を問わず掲載でき、法人や団体、個人でも利用できます。
専任スタッフがプロジェクトページの作成をサポートし、達成に向けて伴走してくれるため心強いです。
サイト掲載料は無料で、手数料17%が発生します。
READYFOR(レディーフォー)
「READYFOR」は、日本初のクラウドファンディングとしてサービスを開始して以降、累計200億円を超える支援が行われてきました。
充実のサポート体制や、公式SNSアカウントやメールマガジンでのプロジェクト紹介などのサービスが充実しているため、初心者にもおすすめのクラウドファンディングサイトです。サイト掲載料は無料で、手数料12%が発生します。
まとめ
クラウドファンディングは資金調達だけでなく、マーケティングとしても活用できる手法です。「新商品をリリースする前に、消費者の反応を見たい」「自社のビジネスの規模が小さいため、PRにかけるリソースがない」という場合は、クラウドファンディングを活用するのも一案でしょう。
クラウドファンディングを行う際には、サイトを利用すると効率的です。特に、集客力の高いクラウドファンディングサイトを活用すると、多くの消費者に自社の商品・サービスを知ってもらうことができます。
まずはクラウドファンディングを活用してどのようなマーケティングを実行したいか検討し、戦略を練ってみましょう。