OMO推進で、顧客満足度を向上&店舗の業務負担を軽減!
長:ここまでECや店舗における様々な取り組みをうかがってきましたが、OMO推進で他に取り組んでいることがありましたらお聞かせください。
岩井:現在、特に力を入れている取り組みのひとつが、店舗からECへの誘導をより具体的に進めていくことです。
2024年前期のデータを見ると、店舗のみ、またはECのみを利用しているお客様の年間平均購入額と、店舗とECの両方を利用するクロスユーザーの年間平均購入額では、店舗のみやECのみの利用者と比べて約3倍以上の金額になっています。
長:すごく差がありますね。LTVを考えるとクロスユースのポテンシャルは大きい。
岩井:そこで私たちはクロスユースを促進するべく、お客様にECの利便性を実感していただけるような取り組みを始めています。サイズ感がわかりにくいなど、ECの利便性に課題を感じる方が多いためです。
たとえば従来だと、お客様が求める商品が店舗にない場合、他の店舗から在庫を取り寄せることになると、お客様に「1週間かかります」とご案内していました。しかし、この1週間のタイムラグが、購買意欲に影響を与える可能性があったのです。そこで、EC在庫を活用し、翌日配送が可能であることを店舗スタッフがお客様にご案内できる体制を整えることで、お客様へ素早く提供できると考えています。同時に店舗の業務負担軽減にもつながるでしょう。
長:ECを別のチャネルとして扱い、店舗とは異なるアプローチを取っている企業もありますが、ユナイテッドアローズは、お客様が店舗とECのどちらを使っても価値を感じられる仕組み作りを目指されていると感じました。店舗での経験がEC体験を向上させ、逆にEC体験が店舗での経験を高める状況とも言えるでしょうか。お客様にとって、最適なチャネル体験を提供されていらっしゃいますね。
東京大学大学院卒業後、P&G入社。ジレット、ジョイ、SK-II、BRAUN、Oral-Bなど多岐にわたるカテゴリーのブランドマネジメントを行い、P&Gジャパン執行役員に就任。2019年より、M-Force株式会社代表取締役に就任し、持続的な事業成長をもたらす顧客起点マーケティング「9segs®」の運用ツール「9segs Analyzer」の開発・導入・運用支援を行っている。
顧客に提供できる価値は何か––答えは現場に
長:岩井さんのお話から、ユナイテッドアローズがお客様を大切にされていることがよくわかります。顧客理解はどう進められているのですか?
岩井:主に2つの手法があります。まず購入者に対して自動配信されるアクションメールの中にアンケートを含めること。回答いただくことで、購入直後の体験をどのように評価していただけるか、ご意見を収集できます。このご意見をデータ化する取り組みを進め、さらにアクションにつなげられるようにしていきたいです。
もうひとつの取り組みは、店舗でのお客様アンケートです。店舗はお客様理解の宝庫です。ユナイテッドアローズの店舗はそれぞれが大きな権限を持っており、お客様のニーズに応える取り組みを行えば、それがしっかりと評価される仕組みになっています。お客様の管理も店舗がしっかりと行っているため、いかにしてそれをデータ化して可視化できるかが大きな課題でした。
そこで、2024年の前期から取り組んでいるのが、店舗側とブランド側が持っている課題を突き合わせることです。お客様理解の核は店舗にあり、その核をしっかりと見える状態にしておくことが重要だと考えています。そして、私たちマーケティング部が持っているデータと突き合わせ、一致していない場合には何が課題なのかを明らかにした上で、インタビューを通じて「こういう理由なのではないか」という仮説を立てアクションに移します。
もちろんデータは大切ですが、答えは現場にあるものです。答えを導き出すには時間がかかりますが、その分お客様にとって価値のあるものを提供できるようになると思っています。
