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長祐氏と考える顧客理解と顧客戦略

傘下にM-Forceが参画!最初に相談したいパートナーを目指し、マクロミルCEO佐々木氏が進めること

 デジタル時代への突入により、コミュニケーションが多様化する中、マーケティングの手法も乱立している。一体、何が変わったのか、また変わらない本質は何なのか。本連載では、P&Gジャパン執行役員を経て、現在M-Force代表を務める長氏が、経営者やCMOなど、マーケター業界の最前線で活躍する人物を訪ね、「施策(HOW)の効果を飛躍的に伸ばすWHO/WHATの設計方法」についてディスカッションを行い、「顧客戦略」の考え方や実践例などを探っていく。今回は国内オンラインリサーチ業界のリーディングカンパニー、株式会社マクロミル 代表執行役社長CEO 佐々木徹氏と対談。マクロミルの傘下に、M-forceがジョインした背景をはじめ、顧客理解に基づいて意思決定をすることの重要性についてうかがった。

マクロミルの傘下に、M-Forceがジョイン

長:今回のゲストは、マクロミルの佐々木徹さんです。まずは簡単に自己紹介をお願いできますか。

佐々木:2003年にマクロミルに入社し、2020年に代表執行役社長 CEOに就任、20年以上、マーケティング業界に携わっていることになります。現在は、顧客企業のリサーチ課題にとどまらず、上流からマーケティング課題全体の解決を支援すべくマクロミルグループの事業モデルの変革を推進しています。

長:マクロミルさんと弊社は、長年お付き合いがありましたが先日、マクロミルさんの傘下にM-Forceがジョインすることとなりました。マクロミルグループとしての背景を伺えますか。

佐々木:マクロミルグループでは、事業モデルの変革の一環として2020年から「マクロミル・コンソーシアム」を設立し、M-Forceをはじめデータやコンサルティング領域に強みを持つ企業と連携してきました。

 M-Forceの9segs®は、商品やサービスに最良の顧客(重要顧客)を見出すのに優れたフレームワークです。企業様が「今後伸ばすべき顧客」の可視化ができ、海外での展開も想定されています。今回、M-Forceがグループに参画してくださったことは、グループ全体の顧客提供価値向上につながり、今後がとても楽しみです。

長:マクロミルさんは、多くの企業様から調査の相談を受けていますよね。その中で、顧客理解にまつわる「よく聞く悩み」を教えてください。

佐々木:まず顧客について断片的な理解にとどまってしまうという悩みをよく聞きます。テクノロジーの進化により、企業様自身で取得できるデータは量・種類共に増えましたが、そのほとんどが断片的である状況です。

 たとえば、会員組織を構築して属性などが理解できたとしても、それ以上の情報を得るのは難しいです。会員組織外に存在する潜在顧客の消費活動や他のカテゴリーにおける利用状況、競合他社の情報などは取得しづらいです。ここに課題を感じている企業様が少なくありません。

株式会社マクロミル 代表執行役社長CEO 佐々木徹氏
株式会社マクロミル 代表執行役社長CEO 佐々木徹氏

佐々木:注意すべき点は、得られるデータは過去の実績に過ぎないことをよく理解しなければなりません。企業様が考えたいのは、未来のことです。だからこそ外部のデータを合わせることで、リアルタイムでユーザーにアプローチしたいという依頼を多くいただいています。

長:過去の延長線上でビジネスが成長するとは限らないですよね。そのため自社ユーザーのデータだけでなく、外部データも活用することで、まだ顧客になっていない方々をいかにしてユーザー化するかを分析する必要がありますね。

顧客調査を進める際、まずは課題の明確化を

長:顧客調査を進める際に、はじめにすべきことはありますか。

佐々木:課題を明確にすることですね。正直、ここが一番重要で大変な部分です。抽象的な課題は絶えず頭に浮かんでいるものの、それらをいざ言語化しようとすると難しく感じる方は少なくありません。私自身、経営者の立場としてそのことを実感しています。

 弊社で調査を進める際には「企業様が抱えている課題は何か。解決するためには何を理解し、どのようなデータやアプローチを使えばいいのか」という体系の強化に力を入れています。

長:確かに顧客調査が目的になってしまっているケースは少なくないです。その結果「何のために顧客調査を進めているのか。それがわからない」という状況に陥ってしまうこともあります。

 M-Force株式会社 代表取締役 ⻑ 祐氏
M-Force株式会社 代表取締役 ⻑ 祐氏

佐々木:顧客理解は課題ではないですよね。課題を明確にした結果、必要な取り組みが顧客理解だったということでしょう。その場合、新規顧客を獲得したいときと、既存顧客のロイヤル化を目指すときとでは、必要なデータやアプローチは異なってきます。

 「課題をしっかりと整理したうえで、それをクリアにしていく」という本来のリサーチのあり方をマーケティング業界全体に改めて啓発していきたいです。

長:課題の明確化が重要だという点は、同感です。私も企業様から様々な相談を受ける際、「課題を整理しましょう」と提案しても、そもそも課題が何かわからない、何から取りかかればいいかわからないと、課題整理をすること自体にハードルの高さを感じられる企業様が多いです。

 「どこを伸ばしていいかわからないから、お客様を理解したい」と課題がぼんやりとしている企業様には、「それは新規ですか、既存ですか」「問題なのは、選ばれていないことですか、知られていないことですか」と一つひとつ丁寧に質問を重ねてひも解いていくと、ようやく課題が見えてくるといったケースが多いなと。

佐々木:最近では様々なフレームワークや理論が存在しているため、課題設定が一層難しくなっているかもしれません。また、経験や勘をベースとしてしまい、仮説の根拠があいまいであることも多くあります。さらには、組織にフォーカスした場合、部門間のサイロ化が見られたり、組織を横断した責任者が不在だったりすることも影響を与えていそうです。

次のページ
N1と定量、両方の観点を持ったアプローチが必要

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この記事の著者

⻑ 祐(チョウ タスク)

 東京大学大学院卒業後、P&G入社。ジレット、ジョイ、SK-II、BRAUNなど多岐に渡るブランドマネジメントを行い、P&Gジャパン執行役員に就任。2019年にM-Force株式会社代表取締役に就任し、顧客起点マーケティング「9segs®」の運用ツール「9segs®analyzer」の開発・導入・運用支援を行う。https://mforce.jp/https://markezine.jp/article/detail/34425

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

和泉 ゆかり(イズミ ユカリ)

 IT企業にてWebマーケティング・人事業務に従事した後、独立。現在はビジネスパーソン向けの媒体で、ライティング・編集を手がける。得意領域は、テクノロジーや広告、働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/07/17 07:00 https://markezine.jp/article/detail/45467

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