売上7倍超に貢献したプロダクト改善の仕組みと投資配分
──具体的にはどのようなことを実現したのでしょうか?
大きく分けて二つがあります。一つは、プロダクトの改善点としてユーザーに起きている負の体験を可視化することです。ユーザーの体験の不満や行動はインタビューでも尋ねることはできますが、実際に使っていた当時、具体的にどんな行動をしていたのかを具体的に見せていただくことはできません。これに関しては解決できるテクノロジーを新たに取り入れる必要があります。
当社の場合はツールとしてプレイドさんが提供する「KARTE Live」を導入し、若手マーケターを中心に業務に取り入れました。これはユーザーのWebやスマホでの行動を動画で録画して再生できるツールです。

これによってユーザーの体験をデータ化して、改善すべき点を見つけていき、エンジニアの手も借りながらPDCAを回していきました。2020年は約5億円だった売上を2022年に約38億円まで引き上げられたのは、このユーザー行動の可視化とそれに基づく改善があったからだと考えています。

もう一つは、マーケター自身がWebサイトの改修もできるように環境を整備したこと。こちらも外部サービスの「KARTE Blocks」を導入することで、ノーコードでプロダクトのLPやトップページを変えられるようになりました。
Cookieレスという観点に立ち戻って成果を考えると、今後影響が起こり得るターゲティング広告を軽減する取り組みにはあえて注力しなかった分、集客量は落ちるかもしれません。しかし、注力してきたプロダクト改善の成果によってプラスに転じると期待していますし、マーケティング力はむしろ上がったのだと考えています。使える予算もプロダクト改善に活かせる調査やテクノロジーに当てる金額が増えており、時間の使い方、働き方も変わっていると感じます。組織のメンバーにおいても広告だけではなく、プロダクト改善に関わることで、マーケターとしての能力が上がりました。また、メンバーから「ユーザーから直接プロダクトの評価を聞けて嬉しい」という声が多く、やりがいにつながっていると聞いています。
Cookieレスをいとわない強いブランドへ
──最後に、貴社が考えるポストCookie時代のマーケティングの展望をお聞かせください。
現在、注力していることの一つは、来たる将来を想定して今立てるべき問いを逆算する、いわゆる“バックキャスティング”の発想で行う調査です。たとえばZoomがここまで浸透する以前でもオンラインミーティングを行っていた人々はいますし、その少数派に気づいていればもっと早くそのメリットを知り、業務に取り入れられていたかもしれません。ユーザー調査でもこのような未来の兆しを見つけなければならないと考えています。
求人でいえば、各企業の考える将来像があり、そこから逆算された人材がある。だとするなら企業の未来から逆算して求人サービスに求めることを聞くことが必要です。このような観点から、求人掲載企業の担当者やそうした企業に向き合う自社の営業担当者、HR系の専門家・研究者の方、ユーザーでも自社サービスのユーザーだけでなく、他社のユーザーなど、インタビュー調査の切り口をあらゆる角度に広げています。
Cookieレスにおいて他にできることとすれば、ブランド力の強化があります。ブランドがとても強い企業は集客力を指名検索などが補完するため、Cookieレスを気にしないケースもあります。
当社ではプロダクト改善によって事業が伸びて使える広告宣伝費が増えたからこそ、指名検索数の向上や、サービスの認知・理解を目的とした投資にも注力していこうと考えています。以前は地上波テレビCMと主にスマホ向けの動画広告を実施していましたが、現在は視聴者が伸びているCTV/OTT広告への投資強化を行い、検証を行っています。

このように注力すべき領域が広がっていることからもわかる通り、事業成長には組織の成長が必要です。今後も事業成長のために、マーケティング戦略の具体的な見直しを行いながら組織の成長を目指していきます。