DE&Iに必要なのは協働・応援
MZ:企業のコミュニケーションやPRにDE&Iを取り入れるケースが少しずつ増えている印象があるのですが、その際に気を付けるべきことはありますか。
シーチャウ:DE&Iを取り入れたコミュニケーションやPRに重要なのはインクルージョン(包括・受容)の部分で、ターゲットの方を特別視せず同じ目線で自然に伝えることが大切です。DE&Iのコミュニケーションで炎上するケースがありますが、その多くが「私はあなたたちとは違うけど、認めてあげる」と上から目線のコミュニケーションになっています。
炎上しないためにもDE&Iを正しく理解し、絶対にベネフィットがあると思えるようになってからはじめて取り組むことをお勧めします。

松田:私たちが企業様とコラボレーションする際も、「企業に支援されているのではなく、共創している」ことが伝わるようにしています。福祉業界では一般的に障害のある方を支える人を支援者と呼びますが、私たちは伴走者だと思っていて、ヘラルボニーと契約している作家さんは大事なパートナーです。作家さんの魅力を最大限に発露できるように担当社員が伴走しています。
SNSの時代、クリエイター自ら発信する方が増えていますが、重度の知的障害のある方は本人が自らSNSを活用することはなかなか難しいです。そこをヘラルボニーが介することで社会との接続を果たしていけたらと思っています。
しかし、DE&Iを取り入れたメッセージの多くは、社会的弱者を支援する文脈が想起されやすく、結果として炎上することもあります。支援ではなく、共創やフラットな視点で向き合うことがDE&Iを取り入れたメッセージには必要だと思います。
LTV4倍の事例も。DE&Iを取り入れるメリット
MZ:企業がDE&Iを取り入れるメリットはなんだと思いますか。
シーチャウ:DE&Iはメリットしかないと思っています。DE&Iに配慮していないメッセージを出すことはリスクしかありません。健全な意思決定をするためには、様々な意見が必要で、そのためにも多様な人材が必要です。似たような人が集まった組織は意思決定も偏るので、DE&Iに取り組むほうがリスクを分散できるメリットがあります。
松田:企業様とのコラボレーションの中でも特に上手くいっている「ヘラルボニーカード」の事例を通じてDE&Iを取り入れるメリットを紹介します。
ヘラルボニーカードは、丸井グループのエポスカードとの提携クレジットカードで、通常のエポスカードとの違いは、お買い物をした金額の0.5%のポイント還元のうち、5分の1となる0.1%分のポイントが福祉を支える活動に還元される点です。0.1%分のポイントは、ヘラルボニーが契約する作家や福祉施設、ヘラルボニーギャラリーの運営に活用されます。
他のカードに比べ30代以下の会員比率が高く、若年層からの人気を集めています。また、LTVも通常のエポスカード会員に比べると約4倍になっており、ヘラルボニーカードの利用を通じてソーシャルグッドな行動につながることが若年層にとってステータスになっているんです。
この事例のように、自分の消費が社会の還元につながることに喜びを感じる人は若年層を中心に増えていくと思いますし、DE&Iを取り入れるメリットにもつながると思います。
