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LTV4倍の事例も。DE&Iがマーケに必要な訳【サニーサイドアップシーチャウ氏×ヘラルボニー松田氏】


 昨今多様性や公平性、包括性を指すDE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)がマーケティングを含めたあらゆる領域で重要視され始めています。その中で企業はどのようにDE&Iを推進していけば良いのでしょうか。本記事では、PRコミュニケーションサービスを展開するサニーサイドアップの代表取締役社長のリュウシーチャウ氏と福祉実験カンパニーのヘラルボニーの代表取締役社長を務める松田崇弥氏にDE&Iの現状と課題、DE&Iをマーケティングに組み込むために必要なことを聞きました。

DE&Iが備わった組織は強い

MarkeZine編集部(以下、MZ):お2人は国内のDE&Iの現状についてどのように考えていますか。

シーチャウ:海外企業に比べて国内企業のDE&Iに関する意識はまだ低いと感じています。

 これまで海外・国内含め様々な企業で働いてきましたが、ファーストキャリアで入社したP&Gでは、韓国、日本、インド、ジャマイカ、中国など様々な国の人材と一緒に働いていて、多様な人材と働くのが当たり前の環境でした。

 また、お互いのことを理解し合うための教育プログラムが充実していました。たとえば、英語教育も英語力そのものを上げるのではなく、インド訛りに慣れるなど様々な国の人の英語を理解する内容になっていました。そのため、考え方は人それぞれあって、それに合わせる必要があると早い段階で思っていたんです。

 一方、ダイバーシティのない環境では同じような意見しか出てこず、意思決定が偏るという課題が出てくるのではないかと思っています。

株式会社サニーサイドアップ 代表取締役社長 リュウ シーチャウ氏
株式会社サニーサイドアップ 代表取締役社長 リュウ シーチャウ氏

松田:いろんな人の意見が合わさるから素晴らしいプロダクトが生まれると思うんですよね。そのためには、様々な人が意見を出しやすい環境を整える必要があります。

 ヘラルボニーは、知的障害のある作家のアートを様々な形で展開して、障害のイメージを変えるビジネスを行っているので、知的障害に対する知見はある程度はあります。それでも、その他の障害に関しては日々勉強中です。最近では、耳の聞こえないろう者の社員とも共に働いているのですが、実際に一緒に働くことを通じて様々な課題が見えてきました。

 ろう者の方は手話が第一言語なので、意見をすぐ発しにくく、雑談などの会話の内容も聞き取れません。そのため、会話の内容が字幕表示される「シースルーキャプション」というツールをオフィス内に導入したり、手話通訳士の常勤雇用を進めたりしています。

 ヘラルボニーでは、才能のある方が障害の有無に関わらずフラットにリーダーとしても活躍できる環境を会社側が作るべき、と考えています。ろう者の社員もリーダーとして活躍しています。DE&Iの中には言語や性差、国籍、障害など様々な問題がありますが、それを乗り越えると多くの方に受け入れられるヒットプロダクト・サービスが生まれるのだと思います。一見DE&Iはビジネスの成長を考えると非効率に見えがちですが、事業成長や競合優位性にも寄与できるものだと考えています。

株式会社ヘラルボニー 代表取締役 松田 崇弥氏
株式会社ヘラルボニー 代表取締役 松田 崇弥氏

DE&Iは自分のためにも必要

MZ:DE&Iに取り組むことで誰もが活躍しやすい環境が生まれ、素晴らしいプロダクトやサービスが生まれる可能性があるというのは、とても大きなメリットですね。国内企業のDE&Iが進まないのには、どのような課題があるのでしょうか。

シーチャウ:DE&Iが自分ごと化できていないことが課題の一つだと感じます。DE&Iは特別なものではありません。どんな人でも、病気やケガで障害を持つことになるリスクはあります。以前、私はパラグライダーで骨折して、1ヵ月近く松葉杖状態で出社していたことがありました。そのとき、あらゆる面で不便な思いをしたと同時に「ケガ一つで色々なことができなくなるんだ」と実感しました。

 「DE&Iは人のために行うもの」と思っている方が多いのかもしれません。しかし、DE&Iは自分に何かあってもこれまでと変わらずに活躍できる環境を作ることにもつながるので、自分のためでもあるのです。

松田:DE&Iの課題となるのはハートの部分だと思っています。たとえば、障害に関する話だと4月から事業者による障害のある人への合理的提供が義務化されます。これにより、障害のある人から「社会的なバリアを取り除いてほしい」という意志が示された場合、事業者は過重でない範囲でバリアを取り除くために必要かつ合理的な対応をすることが義務となります。

 この施行でバリアフリーに対応したお店が増えるなど、ハード面でDE&Iは進んでいくでしょう。一方で、健常者からすると「障害のある人を特別扱いしている」という批判的な意見も出てくるなど、ハートの部分での課題は残っています。シーチャウさんがおっしゃっているように、DE&Iを自分ごとで捉えるのはもちろん、人の身になって考えることが当たり前になってくると、おもしろい社会になっていくと思っています。

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この記事の著者

道上 飛翔(編集部)(ミチカミ ツバサ)

1991年生まれ。法政大学社会学部を2014年に卒業後、インターネット専業広告代理店へ入社し営業業務を行う。アドテクノロジーへの知的好奇心から読んでいたMarkeZineをきっかけに、2015年4月に翔泳社へ入社。7月よりMarkeZine編集部にジョインし、下っ端編集者として日々修業した結果、2020年4月より副...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/03/28 17:59 https://markezine.jp/article/detail/45163

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