プラスキリングが次につながる
──最後に、大村様が考えている電通デジタルの今後の展開をうかがえますか。
今後は知識的なスキルだけではなく、ヒューマンスキルも追求していきたいです。最近、当社グループでは「Integrity」というワードがよく出てきます。Integrityとは、日本語で「誠実さ」や「真摯」を意味する言葉ですが、私は育成基盤の根底にもこのIntegrityを置きたいと考えています。私たちは企業を支援する仕事をしています。つまり、お客様と向き合うことが仕事です。誠実に自信を持ってお客様と向き合うためには幅広く深い知識が求められますし、Integrityを意識していれば自分から自然に学びたくなるものだと考えています。
また、先ほど電通デジタルではリスキリングを意識することなく学べる環境が整っていると言いましたが、私は「プラスキリング」を意識できる文化が必要だと考えています。
日々目の前の業務に集中していると、今持っているスキルを活用することだけに一生懸命になってしまいがちです。自分が今持つスキルにプラスして、1つ違うスキルを自ら積極的に身に付け、アップデートし続けようとする視点。これが大切だと思います。
先を見て、新しいスキルの習得を検討するために必要なものがキャリアパスです。キャリアパスを描くことができれば、現時点で持っているスキルに加え、これからどのようなスキルを習得すれば最終的なキャリアの目標を達成できるかが見えてくるでしょう。しかし、いざ自分で描こうと思っても自分が経験していないことを描くのは難しいものです。そこで会社として、まずは領域ごとに複数のキャリアパス・モデルを社員に示していくことを考えています。モデルの構築は極めてチャレンジングな取り組みですが、社員のサステナブルな成長に貢献するためにも、ぜひ実現したいと思っています。
最後に、現在の課題を挙げるとすれば、自律的に学ぶための余裕(アローワンス)がまだまだ足りていないことと、自身の専門分野だけを学んでいる人もいるなど、学習の範囲にもばらつきがあることだと考えています。電通デジタルとして総合力を上げていくために、社員の労働時間を考慮しつつ、学習の時間を確保できるよう取り組んでいくことを中長期的な課題として掲げたいと思います。