料理人・田村を知ってもらうための情報発信
田村:少し話は変わりますが、僕自身が情報発信をしていたこともMr. CHEESECAKEのスタートとして大きいと思っています。
飯髙:たしかに、6~7年前はSNSで情報発信するシェフは珍しかったですよね。どうして情報発信をされていたんですか?

田村:僕のことを知ってもらいたかったのが大きいです。レストランに来てくれる方に僕はどんな人間で、どんな思いで料理を作っているかを伝えたい反面、お店で自分の話をする機会はあまり多くありません。だから、ずっとブログを書いていたんです。
すると、面白いシェフがいるぞと僕を知ってくださって、お店に来てくださる方が増えてきました。IT系のスタートアップをされている方も多くて、そこでスマートな仕事ぶりや考え方に影響されました。
また、せっかくブログをやってるならSNSもやったら?と知人にアドバイスをもらって、X(当時Twitter)とInstagramでも発信を始めたんです。チーズケーキを作り始めたタイミングと、彼等と交流を持ったり、SNSを始めたりしたタイミングがちょうど重なっていたんです。
そのおかげでチーズケーキがSNSで知られていき、手応えを感じられたので、2018年12月に会社を設立し、Mr. CHEESECAKEを本格的に事業化することに決めました。
SNSでリアルな反応がキャッチアップできる楽しさ
飯髙:手応えを感じたきっかけはどんなものですか?
田村:わかりやすく言うと、僕1人ではさばききれないほど要望があったことですね。
最初は1日16本くらいしか作れなかったんです。朝6時から8時くらいまでケーキを作って、その後23時くらいまでシェフの仕事をして、帰って寝る生活でした。1週間のうち1日はさすがに休んでいたので、6日間で作れて100本ほど。全然足りませんでした。
最初はそれでいいと思っていましたが、Xから様々な声が届きます。買えないとか、もっと作ってほしいとか。それに触発されて、じゃあもっと作ろう!と、朝4時起きで今までの倍の数を作るようになりました。睡眠時間が2時間の生活を3ヶ月ほど続けていましたね。ありがたいことに、チーズケーキを作り始めて2ヶ月目からそんな状況でした。
飯髙:すごい……よくそれだけできましたね。
田村:本当にそう思います。今振り返ると、自分の作ったケーキを食べてくれて、美味しいと言ってくれるシンプルなリアクションが嬉しかったんでしょうね。特に、Xでは建前がありません。美味しかったら美味しいと言ってくれるし、価格と見合わないと思ったら高いと直線的なリアクションが来る。自分の作っているものをお客様がどう受け入れているのかを、リアルタイムでキャッチアップできていたことがモチベーションになっていました。