曜日限定販売から24時間販売に変えた理由
飯高:規模をどんどん広げているMr. CHEESECAKEですが、ユーザーとの関わり方やアプローチとして大事にしていることはありますか?
田村:直接的にこんなアプローチをしていますというのは、僕の感覚としてはあまりないですね。
僕たちはケーキを作っているというよりは、美味しさの体験を作っていると思っています。美味しいケーキを作るのはもちろん、それをより楽しむためにはどうしたらいいか常に考えています。ですから、フレーバーにこだわり、コーヒーやお茶などとのペアリングを紹介しています。専用のスプーンやカッティングボードなどの周辺アイテムを提案しているのも、Mr. CHEESECAKEを通して豊かな体験を提供するためです。
そういう伝え方をしていきたい。
自分で言うのもなんですが、僕たちわりと実直というか、真面目にやってきているつもりなんです。週1・週2と曜日を限定して販売していた頃に「販売数を絞ってすぐ売り切れるようにしているのではないか」と言われたこともあります。でも、本当に単純に人手が足りていなかっただけ。それがなかなか伝わらなくて……。
ブランドとして何が正しい状態なのかを考えると、お客様にとっては週1より週2、それより毎日買える方が良いですよね。ECなら販売開始の時間が決まっているより、24時間買えるほうが食べたいと思ったときや、大切な人に贈りたいと思ったときに注文ができて嬉しいですよね。ですから、お客様と正しく向き合うために、いつでも買える状態をなるべく早く作ることを目指してきました。
たとえばキッチン12坪5人で始めたところから、1年後には120坪の物件に移転をしています。
希少性で売る気は最初からない
飯髙:とはいえ、Mr. CHEESECAKEは入手困難だった時期があって、希少性が価値でもあったと思います。その点はどう考えていますか?
田村:たしかに、その側面はありますし、恩恵も多大に受けたと思います。しかし、僕達は手に入りにくさで売るつもりはありませんでした。
もちろん、お客様との向き合い方は社内でも会話しながら進めてきました。特に週2販売から毎日販売へシフトするか決める際は、議論を重ねました。でも、欲しい人の手にきちんと届く状態が正しいと思ったので、毎日販売を選びました。
僕たちは純粋に美味しさをお届けしたいと思っています。入手困難な幻のチーズケーキとうたったほうがキャッチーかもしれません。商品にしても、動画に映えるようなビジュアルの方がお客様の興味は引けるかもしれません。でも、僕たちが考えるブランドの世界観からすると、その必要はないように感じます。
飯髙:シンプルに本質的な美味しさを追求して、それを欲しい人に届ける姿勢は田村さんが1人で作っていた頃から変わらないんですね。